すずかんの医療改革の「今」を知る(2006年4月号)
第6回「求めるは、医師同士の疾患別診療ネットワーク。」
高齢化に伴う老人医療費の増大が財政を圧迫している昨今。現政権は診療報酬費引下げと患者負担増を決定しました。しかし私は、「臨床現場のマンパワー増こそ急務」と反論しています。
そんな中、長野県は平均寿命や健康寿命が日本一長く、1人あたり老人医療費は日本一低いという「健康長寿王国」。ワースト県との差額は年30万円にもなります。その大きな要因が、予防と短い入院期間です。
これは故・今井澄諏訪中央病院元院長とその遺志を継ぐ鎌田實同院管理者らの、30年以上にわたる知恵と情熱、努力の賜物。
カギは「コミュニティ医療」です。地元住民の自主組織による教育や広報活動を通じ、住民のメディカル・リテラシーが向上。同時に行政・医師・保健師等の連携による「地域医療推進協議会」の主導で、保健師や看護師、ケースワーカーが地域住民を日頃からサポートしています。その結果、在宅医療への安心が生まれ、早期退院につながってきたのです。
こうしたコミュニティ医療は患者・家族の安心と満足だけでなく、医療費適正化にも貢献。この成功を全国が「長野モデル」として注目しています。
一方、在院日数の減少には、「パートナーシップ」、即ち、地域の医療連携も不可欠です。
ただし、現在多くの地域で行われているのは、医療機関同士の連携まで。在宅医療の推進を考えるとき、このままでは患者の多様な疾患や症状には対応しきれません。
必要なのは、「疾患別の“人的”診療ネットワーク」。そこで医師同士の連携を築き、全人的医療を実現する臨床専門医養成プログラムの整備が急務となります。
これからの医療を指南する今井澄著『理想の医療を語れますか』も、是非ご一読下さい。