すずかんの医療改革の「今」を知る(2006年3月号)
第5回「未承認薬問題の本質に迫る!」
近頃、「アメリカでは使える薬が日本では未承認だから使えない」という話をよく耳にします。
しかし、そこにはいくつか難しい問題が絡んでいます。
1つは安全確認、すなわち新薬の治験・審査の体制の差。例えば治験相談・承認審査に携わっているのは、日本では(独)医薬品医療機器総合機構の審査官178名。一方、アメリカのCDER(医薬品評価・研究センター)では2237人と、12倍以上の開きがあります。日本でも審査機関は短縮されてきてはいるものの、これでは限界が。
さらに無保険者の治験参加が多いアメリカと違い、日本では参加者募集にもコストと時間がかかります。
コストについては日米それぞれに問題を抱えています。アメリカでも高額の薬を買えるのは高額の民間保険でに加入している富裕層に限られますが、日本では新薬に対する公的保険適用が鍵となります。しかし医療財政の逼迫で保険の適用が遅れる傾向にあるのです。
また、そもそも一般にアメリカの企業はアメリカでの申請を日本に先行させる、というのも事実としてあります。
「欧米で使える薬はそのまま日本でも認めたらどうか」という声もあり、それを受けて厚労省は昨年、未承認薬使用問題検討会議を組織。「日本人患者を含まない欧米の治験データを用いた」承認申請や「日本での治験を必須とはしない」医薬品も出てきています。
しかし、薬効や副作用は人種ごとに異なるため、日本独自の治験・審査は必要。アジア諸国との連携促進も大切でしょう。
新薬は次々に開発されていますが、「よく効く薬=副作用リスクも高い」のが事実。患者、医療者、製薬企業が共に問題に取り組む医療コミュニティづくりがより大切になっているのです。