すずかんの医療改革の「今」を知る(2006年1月号)
第3回「臨床医の権限と責任と負担、このままでよいのか。」
わが国の医療現場における最大の問題は、患者さんと医師との対話が決定的に不足していることです。突然大きな心配や不安を抱えた患者さんに、医療スタッフが十分な知恵と情報と思いやりと時間を持って接しているとは言えません。
日本の医師数全体は、他の先進国に見劣りしません。しかし、重篤な患者さん向けの急性期・高度医療を担う基幹病院に関しては、臨床医の数が極めて少なく、患者さんとの対話に割く時間的・精神的余裕がないのが実態です。ベッドサイドの患者さんとの対話には、診療報酬は払われず、臨床医たちのボランティアに頼りきっています。
そうでなくても数が少ない医師が、本来の医療以外のことで、疲弊・消耗しています。こうした悪循環の背景には、医療現場における、あらゆる責任と権限を医師が独占してきたことと、患者さんも、医師に相談しすぎてきたことがあります。
例えば米国では、患者の生活や心のケアは、ソーシャルワーカー、サイコ・セラピスト、宗教家などが担っています。
日本においても医師以外の専門スタッフが、医療現場における責任を一部分担してもよいのでないでしょうか。負担を軽減された医師が余裕と元気を取り戻し、権限・責任を新たに与えられた医療スタッフは士気が上がります。こうした好循環の起きる可能性を具体的に検討すべきです。
今年7月、「臨床心理士」「医療心理師」などを国家資格にし、教育・医療現場で活躍していただこうと、超党派の国会議員連盟で法案を取りまとめましたが、国会提出できませんでした。医師の権益を侵すなとの強硬な反対があったからだそうです。
果たして、これが本当に現場の臨床医たちの声なのでしょうか。