すずかんの医療改革の「今」を知る(2005年12月号)
第2回「負担アップだけが医療費抑制の道ではない。」
10月19日、厚生労働省より「医療制度構造改革試案」が発表されました。現行制度のままだと20年後に56兆円になる医療給付費(窓口負担を除いた額)を、「適正化」と銘打って49兆円に抑えるというものです。
現在1割の窓口負担で済んでいる70歳から74歳の高齢者について08年度から負担を2割に上げるとか、長期入院の食費や居住費の負担を引き上げるといったように高齢者の自己負担を増やす案が盛り込まれました。
現行の高齢者医療には確かに無駄もあるでしょう。いくつも病院を渡り歩く人がいて財政を圧迫しているとは聞いています。
しかし、患者さんからすれば、3時間待ちの3分診療だったり、最適の医療を最適の医療者から受ける方法が分からなかったりする不安・不満の方がはるかに重大のはず。不安・不満があるから病院の渡り歩きも起きるのです。この連鎖を断ち切る必要があります。それこそが「適正化」です。
断ち切るには、医療の原点である医師と患者との密接なコミュニケーションによって、患者さんの自律を導く必要があると考えます。が、現状の診療報酬体系では、患者さんとのコミュニケーションには、微々たる点数しかついていません。結果として多くの医療者が、時間外に自己犠牲を払って無報酬で患者さんと向き合っています。そして労働条件がどんどん過酷になっていきます。
徳島県の上勝町では、高齢者が山で集めてくる美しい木の葉を都会の料亭に販売する取り組みを始めたところ、何と医療費が減ったそうです。高齢者が張り合いを持って山歩きをしたため、健康的になり病院に来なくなったと推察されます。
負担アップだけが能でないことが分かります。どんどん知恵を出していきましょう。