2006年4月20日 文教科学委員会
〜特別支援教育のあり方について〜
○鈴木寛君
四名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。
時間もございませんので早速質問させていただきたいと思いますが、嶺井参考人にお伺いをいたします。
先ほどのプレゼンテーションの中で、障害のある人の権利に関する国際条約のことについてお話をいただきました。時間の関係でさっと飛ばされましたが、私が漏れ聞いておるところによりますと、この議長案に対して日本の対応といいますか反応というものが少し残念な対応で、そして、と同時に、この会議あるいはこの作業グループに参加しておられる他の国からも、正に障害のある人の権利、とりわけ教育の充実を国際的にリードしていこうと、そういう観点からはいかがかという声もあったやに聞いておりますが、この問題、ずっとフォローされておられる嶺井参考人に少し詳しい状況と、そして参考人の御意見、日本はこの問題にどう取り組むべきか、お答えをいただきたいと思います。
○参考人(嶺井正也君)
今回の問題につきまして、直接私がその場で確かめたわけではございませんので、私もまた聞いた限りでございますので、その観点からお話をさせていただきます。
ただ、この間、国際的な動きに対しましてはやはり少し消極的な対応があるかなと思っておりますのは、一九九三年に障害者の機会均等化に関する国連決議の中で教育の条項が議論をされたときにも、統合教育を原則とするということに対して日本の方からそれでは困るといったようなクレームが付いたという経緯がございました。それは文書等で確かめることができます。
同じようなことが今回の権利条約に関しましても言えるかなと思っております。特に、障害のある人たちの教育を一般教育に含めるということについてクレームが付いたと、外してほしいというのが日本側の代表だったという、代表だったか関係者だったかはちょっとはっきりしませんが、そういうことを漏れ聞いております。それはやはり大きな流れとしましてのインクルージョンについての非常に大きな無理解があるというふうに考えております。
○鈴木寛君
ありがとうございました。
嶺井参考人に更にお伺いしますが、その無理解というのを、これ、どのように日本全体のコンセンサスにしていくか。とりわけ、私はやっぱり、政府内でのコンセンサスづくりというものにどのような問題があり、そしてそれをどうしていったらいいのかというのも私自身も考えているわけでありますが、その点について参考人から、何かお考えがあればお聞きしたいと思います。
○参考人(嶺井正也君)
子どもの権利条約が批准をされまして、子どもの権利委員会から日本政府に対しまして勧告等がなされております。そのときにも、できるだけインクルーシブな社会にしていくようにという勧告がございました。しかし、それがなかなか実現をしない、今回の改正案にも反映されないということを見ますと、やはり国際的な権利保障の流れについて政府として積極的にどうかかわっていくのかという基本的な姿勢が問われているのではないかと思います。
改めて、国連等でどういう議論がされているのかということを正確に外務省等でも伝えていただき、日本側の意見を大きな流れの中に持っていくようなまとめにしていただきたいというふうに考えております。
○鈴木寛君
今の点は、むしろ我々にボールをいただいたというふうに受け止めまして、これからの質疑等々で更に頑張ってまいりたいというふうに思いますので、また御指導をお願い申し上げたいと思います。
続きまして、山岡参考人にお伺いをしたいと思います。
実は私も、議員になる以前は大学で教鞭を執っておりまして、まあ今でも執っておりますが、私が以前担当しておりましたゼミナールに実はLDの学生さんがおりました。大変に苦労もいたしましたけれども、私自身も大変に勉強になりましたし、あるいはゼミのほかの学生も非常に成長をして、そこで特に頑張ったといいますか、そのゼミをまとめていこうとして頑張ったリーダー的な学生は大変に今、社会的にNPO活動あるいは社会活動で大きく貢献をし、例えば万博の試みなどにも重要な位置を占めるようなことに成長しておりますので、そういう意味で、今回の学教法は主として初中等段階の話ではありますけれども、さらに、その高等教育段階、あるいはその以前である就学前教育、そこも含めて、インクルージョンといいますか、インクルーシブ教育というのは私は非常に重要な課題だということを肌身で痛感をしたわけであります。
そういうことを本当に実り多きものにしていくためにも、私も当時、正に学生を指導する中で気を付けたといいますか心したことは、やはりそのLDないし、まあ私の場合はLDの学生でありましたが、に対して、やっぱり本当に人を張り付けて、まあ私自身ももちろん目配りをさせていただきましたけれども、完全に一対一で、マンツーマンで、もちろんゼミは一緒にやっているわけでありますが、マンツーマンでケアをするといいますか、サポートをするということが正に私はかぎだというふうに感じたわけであります。
山岡参考人にお伺いをしたいのは、特別支援教育、正に通級でやっていくといったときに、しかもそれが六から七%いるといったときに、通級の中でもう一人きちっとマンツーマンで対応する体制とかが不可欠だというふうに思いますが、正に親の立場から見て、そのことがどういう意義があり、またどういう必要性があるのかということについて、私どもに補足的に教えていただけることがあれば、先ほども御説明いただきましたが、補足していただければというふうに思います。
○参考人(山岡修君)
アメリカで特別な教育の支援を受けている人たちは一一%いまして、一一%のうちの約半分、五・五%がLDというカテゴリーであります。じゃ、その子たちがすべて通級のようなところに行っているのかというとそうではなくて、通常の学級にずっといながら、個別の指導計画のような計画の下で支援を受けているケースもあります。
ですから、六・三%の子たちがすべてが通級に行くわけではないと思うんですけれども、ずっと一〇〇%通常の学級にいながら、今、鈴木先生がおっしゃったようないろんな支援を受けていくわけでありまして、場合によっては、例えばTTのような形で、先生が教室に入り込んで御指導いただくのが効果的なお子さんもいます。
それから、あるお子さんにとっては、やっぱり一対一の指導で抜き出しをしないと効果が上がらないお子さんもいますし、あるいは小集団のような形、やはり社会性を身に付ける上では、大集団では無理で小集団の中で身に付けるようなこと。ですから、そのお子さんに合った方法、教科によってはお一人だとか小集団がよかったり、あるいは一斉の授業をやっている中に一人補助の先生が付いてたまに支援をするというような、いろんな方法が考えられるということであります。
○鈴木寛君
ありがとうございました。
できれば全員の参考人にお答えいただきたいんですが、大南参考人、三浦参考人、嶺井参考人、山岡参考人の順番でお答えをいただきたいと思うんですが、あと五分ということでございますので、もうお二人に限らざるを得ないんですが。
今日、四人の参考人の皆様方から共通して出たお話は、要するに、その特別支援教育に一歩踏み込むけれども、要するにそのための体制が全く不十分であると。皆さん理想は同じ、恐らくここにいるメンバー全員同じだと思うんですね。しかし、そこの理想にどれだけ早く近づいていくかと。先ほど三浦参考人からも段階的にというお話がございました。これは、すべての方がやっぱり段階的にせざるを得ないと、現状と理想のギャップを見たときに。
そこで、最も重要になるのは、正にその教職員を含めた体制、人的体制の問題だというふうに思いますが、今回、先ほどもお話がございましたように八次定数改善が見送られました。そして、一年間の手当てということでも、私は本当の必要な人的体制に比べるともう全然焼け石に水に近い状況ではないかというふうに思います。
特に、大南参考人、三浦参考人は学校現場の責任者として長年の経験をお持ちでございますが、どういう考え方で定数というのは算定をしていったらいいかと。今まではどうしても財務省の圧力がありますので、そういう数字が表に出ないまま何か結論がぽっと出てくるわけですね。今日は財務省も文部科学省もおりませんので、本来はやっぱりこれぐらい必要なんだということの考え方について御指導いただければと思います。
では、大南参考人と三浦参考人の順番で。
○参考人(大南英明君)
まず一つは、先ほど特別支援学校の役割のところで二つ大きく申し上げたわけですが、それぞれの学校にいる重度・重複障害の子供を含めたすべての子供にこたえられる教員を配置をする。私は、人数だけではなくて、やはり専門性の高い人、ある意味でいえば免許状をきちっと持っている人を確保できるようにしていただきたいと。
それからもう一つは、新たに法令が改正されることによって、小学校、中学校あるいは幼稚園、高等学校への支援が必要になってきますので、その支援ができるより高度の専門性を持った教員の養成とそれから配置ですね。ですから、今いる人数で全部やりなさいというのではなくて、小中学校への支援については、そこに必ずプラスされる人数が必要だなというふうに思っております。
○参考人(三浦和君)
先ほどもお話しいたしましたけれども、段階の問題もさることながら、結局、こんなお話を聞いたことがあるんですね。
三十人学級の中に一人ないし二人の障害があって、要するに特別なニーズを必要とする子供がいた場合の配慮の点はどうかという問題。例えば、その特別なニーズを持った人たちが五、六人から十人集めちゃうというのは特殊教育ですよね。そういう子供たちの場に教員の定数はどうかと。例えばそういう問題の比べ方。
だから、どうしたって、特殊教育、特別支援教育の場合の教員定員は、今足した分だけでも五倍、例えば四倍ぐらい掛かるんだよと、こういうことですから、そういう推し測り方を。そこへ、例えば今もいろいろ、段階的と私が言っているのは、必ずそこには医療的ケアの子供がどんどん入ってくるんですから、だから、一つの学級、学級そのものも医療の方にどう考えるかという問題にまで入るんだと僕は思うんです。
だから、今の条件に近いようなことで小中学校も変わらずに、大体、ほとんど変わらずに皆やっていったらやっぱりどこかで無理が生じるだろうと。抜本的に、やっぱり教育の問題というのはもう一度子供一人一人のニーズに本当に対応するときにはどうだかということで考えて大人を配置しないといかぬという、私はもう固い信念ぐらいまでになっております。
以上でございます。
○鈴木寛君
まだ時間ありますから、一分ずつで。
○参考人(嶺井正也君)
根本的な教育制度の組替えをすることによって、条件整備の仕方はいかようにも工夫できると私は思っています。今の枠組みだとやはり追加を取るしかない、もっと違う根本的な議論が必要じゃないかと考えています。
○参考人(山岡修君)
ただ人数を増やせばいいということではなくて、恐らく、私民間企業に勤めているんですが、ここ十年ぐらい、人数は増えない、予算は減らされる、でも売上げ上げろという世界で生きておりますので、工夫ができるんじゃないかというふうに思っております。
○鈴木寛君
どうもありがとうございました。