国立大学法人法案の件ですが、5月29日から参議院文教科学委員会において論戦が始まりました。予想通り、与党側は、元東大総長・元文部大臣の有馬議員が登場され、野党側のトップバッターとして、私スズカンが質疑に立ちました。私と遠山文部科学大臣との間で80分間の真剣勝負をさせていただきました。全くのシナリオなしで、徹底したディベートをやりました。
3月に民主党が修正案を記者発表し、国立大学法人法案に関する文部科学省の過剰関与を問題にした際には、わずかに朝日新聞が報ずるだけで、この法案の問題点を社会に伝えていくことの難しさを痛感いたしましたが、私としては、国会議員の本務に立ち返り、国会での論戦をきちんとやることによって活路が開けるだろうと信じて質疑に臨みました。傍聴席は満員。櫻井よしこさんも傍聴に来られていて、その模様を週刊新潮の「日本ルネッサンス」というコラムで取り上げていただいたこともあって、ようやくマスコミの関心も高まり、先日の朝日新聞の社説に続いて、日本経済新聞も社説で「大学改革に水を差す官僚支配」と題して取り上げ、いずれも文部科学省の過剰介入を懸念する、私の主張と民主党の修正案を全面的に支持していただきました。こうした報道を受けて、全国各地の国立大学関係者の認識も高まり、多数の激励のメイルやファックスをいただきました。この法案の問題点がより多くの方々に認識され、論戦が緊迫化したことはよかったと思っていますが、我々が問題提起した段階で、もう少し早く、大学人・マスコミの方々が、この問題を認識していただき、世論に火がついてくれていれば議論の流れは変わったのにとの悔いは、率直に残っています。
ここ数年スイス経営開発研究所の国際評価でも、調査国中最低レベルにランクされていることも含め、日本の大学は、いろんな意味で低迷しています。こうした状況を一刻も早く改善しなければならない大事な時期に、諸外国に全く例をみない、百害あって一利なしの文部科学官僚の過剰介入法案が、堂々と提出されること自体に大いなる危機感を抱きます。法案の是非もさることながら、こんな時代錯誤で頑迷固陋な人たちに、これ以上、知的立国日本の戦略構築は任せてはいられないとの思いを強くしています。官僚万能時代はとうに終わったはずです。
大学問題は、今国会で終わる話ではありません。20世紀前半までは武の時代、20世紀の後半は富の時代、そして、21世紀は知の時代になります。大学こそ知の時代の主役であるべきです。そうした時代認識や志や気概を持った人々が、もっと大学政策づくりに関わらなければなりません。こんな大事な問題を今まで官僚任せにしてきた政治家はもとより、大学人、経済人、マスコミなど、すべての知識人にも責任があると思います。
私も、6月6日には、新しくできた六本木アカデミーヒルズで行われた、大学問題を考えるパネルディスカッションに、学術会議議長で前東大総長の吉川先生、三重県前知事で早稲田大学に移られた北川教授、一ツ橋大学の米倉教授らとともに、パネラーとして参加してきましたが、かつて、政策づくりの現場に身を置き、かつ、自ら大学の教壇に立ち学生たちを指導してきた経験を有する唯一の国会議員として、この問題についての責任の重大さを改めて痛感しています。大学問題・教育問題は、私のライフワークとして引き続き取り組んで参ります。
2003年06月16日
すずかんMAGAZINE NO.26
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