2006年5月11日 総務委員会
〜ブロードバンド環境整備に伴う諸問題について vs竹中平蔵大臣〜
○鈴木寛君
民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
私も、まずこの放送と通信の在り方に関する懇談会、私自身もこの十年来最大の関心事項といいますか、非常に日本の国にとって重要なテーマだと思いましたので、この懇談会が設置をされるということを聞いたときは、ついにというか、やっとこの問題がこの永田町でも議論が始まったな、霞が関でも議論が本格化するなと非常に喜んだわけなんですけれども、この懇談会がだんだん進むにつれて、これは私も今日初めて午前中に松原座長から直接にお話を伺いましたのであれなんですけど、それまでは報道による間接的なと、こういうことではありますけれども、少し、まず盛りだくさん過ぎてるんじゃないかと、そのテーマがですね。それから、もちろん大事な課題だし、物すごくポテンシャルがあるし、これはしっかりやっぱりビジョンを持ってやっていかなきゃいけない、これはもう全く大臣と私は同じ見解だと思いますけれども、何をしたいのかと。
大臣は、いろいろな記者会見で、今日もiPodの話をされました。もちろん、ああいうことができることはうれしいことなんですけれども、しかしそれは政策の話なんだろうかと。たまたまアップル社が彼らの総意と工夫によってああいうものを作ってきて、まあそれはそれですばらしいことだと思いますけれども、いつもあの例が出るわけで。
一方、例えば通信サービスについて申し上げると、今も森元委員からお話ありましたけど、我々、ついにですよ、やっと世界で最も速くて品質が高くて最も廉価なこのブロードバンド環境を、この苦節十年、手にしたわけですね。私は、したがって、この十年間、総務省のいろいろな政策は、結果として、政策評価をすれば、この成果を達成したということで合格点を差し上げていいんじゃないかと思います。やっとこれ合格点になったところで、何かこれ、わざと壊れちゃうんじゃないかというような何か方向に議論が行っていて大変心配をしています。
それで、今御議論されているその改革案が仮に実施をされますと、今の何が更に良く、ユーザーの観点からですよ、ユーザーの観点から、私も大臣も完全にユーザーオリエンテッドでいろいろな議論も今までさせていただきましたし、私もそのつもりでありますし。だから、この世界一速くて安くて品質のいい光ファイバーあるいはブロードバンド環境というものを、だからまあおおむね満足しているわけですね。だから、これによって何が良くなるんでしょうかということであります。
政策というのは常に作用があれば副作用があるわけで、正にその比較考量をしながらやっぱり慎重に進めていかなきゃいかぬというふうに思いますので、改めまして、現在の特にその通信環境が抱えている問題点、あるいはその改善をしたい、それのネックになっている政策制度論、これは何でしょうか。
○国務大臣(竹中平蔵君)
非常に基本的なことでございますので、ちょっと私の思いを是非述べさせていただきたいと思います。
委員御指摘のように、ようやくブロードバンドのインフラを我々は手にしたと、もう全く同じ思いでおります。これ、議論を始めたのは二〇〇〇年の森内閣のときでございました。当時、鈴木委員とは大学で同僚でございましたけれども、そのときのもう一人の同僚で村井純さんという日本にインターネットを持ち込んだ仲間が、実は五年後には本当に大変な時代が来ると、それに合わせて今のブロードバンド化をしなきゃいけない、実はそういう話に私も感化されまして参加したときに、やはり実は今の何が問題なのかという御指摘に直面をいたしました。
インターネットは使いたい人は使おうと思ったら使っていると。いやいや、そうじゃなくて、正にIPバージョン6の時代が来て、家庭電化製品そのものが実はパソコンと同じような役割を果たしてそのIP網の中に組み入れられるんだというふうに村井さんが言ったとき、分かったような分からないような思いがあったわけですけれども、実はそういうことがやはり六年前に一つの、こう何といいますか、ビジョンに基づいて走り出したことが今日正に満足できる状況をつくり出しているのだと思うんです。今のシステムは今のシステムで、だからちゃんと評価はやっぱり私は是非しなければいけないと思います。
と同時に、先ほど申し上げましたように、これから五年後の二〇一一年にはテレビ放送がデジタル化されます。そして、二〇一〇年、同じころに新しいICT戦略で、IT戦略で、御承知のようにブロードバンドゼロ地域というのがなくなるわけですね。正に完全にいわゆるブロードバンドアクセスというのが国民にとってだれでも利用可能なユニバーサルなサービスになってくると。そういう中で見越しますと、例えばテレビに関しても、最近はもうワンセグは利用可能になったし、トリプルプレーが可能だし、ギャオのような、若い方はこれ通信か放送かって考えて見てないと思います。そういうものが、我々もまだ分からないけれども、どんどん出てくると。しかし、そのときに、著作権一つに代表されるように、やっぱり今のままではなかなか対応できないのではないだろうか、そのための準備を始めたいというのが私の非常に素直な思いでございます。そのための議論をしていただいてます。
これ、先ほど森元委員からも御議論いただきましたように、新しいドミナンス性とは、ボトルネック性とは何なのかとしっかり議論しなければいけないと思いますし、その法律一つにとっても一体何が重要なのかということの吟味は、これはもうきっちりとやらなければいけない。しかし、その方向に向かって走り出して、必要な制度設計にはちゃんと時間を掛ける、そのような取組のスタートをさせたいと、それが私自身の思いでございます。
○鈴木寛君
今のお話は分かるんですよ。これから正にICTを基に新しいサービス、新しい産業をつくっていくと、そのためにきちっと見直して、大丈夫かということを見ていきましょうと。まあそういうことで、私が思いますに、ICTのサービスの創意工夫を発揮するレーヤーというのは、これだんだん上に上がってきてますよね。正にいわゆる通信レーヤーからアプリケーションレーヤー、コンテンツレーヤーと、こういうところになってくると、私もそういう方向だと思います。
ですから、今大臣がおっしゃった、特にコンテンツレーヤーのビジネスモデルをつくるときに、私も文部科学委員会にずっとおりまして、この間、毎年著作権の審議は私が当たらさしていただきましたので、デジタル著作権の在り方についてきちっと見直さなきゃいけないというのは、総務委員会と文教科学委員会が一緒になってこれはやっていく、それはよく分かります。
そのときに、これから、今ギャオのお話が出ました。私の最大の関心も、ナローバンドからブロードバンドになって何が変わるんだろうと。端的にユーザーの観点から申し上げれば、やっぱりこれは映像、動画というものを本当に安く、そして極めてコンビニエントに見れる、あるいはそれをつくれると、こういう時代が来ましたと。これは本当すばらしい時代だと思います。そうなったときに、今ギャオのお話がありました。今、私が思いますに、インターネットテレビといいますか、私も実はやってますけれども、インターネットテレビ局を個人で、そこに参入していきたいとは思ってますけれども。
大きく申し上げると、ギャオのグループがあると。それから、いわゆるテレビバンク、ソフトバンクグループがテレビバンクに進出をしていく。それから民放連と電通が新しい会社をつくっていく。このどこがどういうふうになるんだろうかというのは私も大変に関心、わくわくしながら関心を持って、もちろんいろいろ山と谷はあるかもしれませんけれども、関心を持っていると。そういうところで創意工夫にあふれたビジネスがどんどんどんどんでき上がると、そのためのインフラをチェックしようと、これはよく、大変よく分かります。
そのときに、私是非申し上げたいのは、この世界は、釈迦に説法ですけれども、正に競争政策とそれから正に知的財産戦略とのトレードオフをどういうふうにしていくのかと。こういう問題と、それからやっぱり情報サービス財に特有の、先ほどネットワーク経済効果のお話がありました。正にネットワーク外部経済効果、結局ウイナー・テークス・オールになるわけですね。結局今までこの十年間、我々日本チームは何に苦しんできたかというと、結局はウイナー・テークス・オールだと。シリコンバレー発信の企業がウイナー・テークス・オールでネットワーク経済効果でどんどんデファクトスタンダードを取っていくと。こういうことの中で、もちろん我々ユーザーとしてはサービスも享受したけれども、しかしそこに日本発のものも、別に日本だけがということじゃありませんけれども、グローバルな新しいビジネスの創意工夫の中に我々の持っている技術とかあるいは人材とかコンテンツとか、そういうものも参画をして、そこに貢献をしていきたい、こういう発想だと思います。
その中の一つが、正に村井先生が進められてきたIPv6なんかもそういうことになるんだと思いますし、それから、今回日本がやっと世界の頂点に久しぶりに上り詰めたこの光技術といいますか光パラダイムといいますかね、これもその一つだというふうに思うわけです。
そのときに、私は、違和感がありますのはというか、要するにこの議論できちっと整理をしておかなければいけないのは、公正有効競争政策の考え方というのをやっぱりコンシステントにしておかなきゃいけないんじゃないかなと、こういうふうに思うわけです。
で、先ほども森元委員との御議論の中で、ドミナントだから規制するわけではないということをおっしゃった、だから必ず、という理由だけで規制するわけではないと、そのところを懇談会に投げているんだと、こういうお話がありましたが、この点は極めて重要な話で、これにはいろいろな考え方がありました。そもそもドミナントだからこれは分割をするという考え方もかつてアメリカに、九五、六年のときに、マイクロソフトの、バーサス司法省の中で、マイクロソフトを分割をするということによって、これは伝統的にアメリカの司法省がやってきた独禁政策ですけれども、分割をして競争をさせてという、こういう考え方ありました。しかし、ITについては、ICTについては、それは結局はそういう方策を取らずにやってきたと、こういう話がありますね。
では次に、今局長も、必ずしもドミナントであるからというわけではないということの御答弁があったと思います。じゃ、次に考え得る考え方として垂直統合というセオリーがありますね。結局、局長の御答弁はそれに近いのかなというふうに聞かせていただきましたけれども、要するに、メタルの加入ではやっぱりシェアが大変多かったと。その多いシェアに基づいてそこにバーティカルに乗っけていくから、この部分はやっぱりドミナント規制を引き続きやる必要があるんだと言うのか言わないのかという、これも一つの論点としてそういう論点はあり得ると思っています。
確かに、アメリカでも、結局、マイクロソフトのOSの上にオフィスを乗っけて、その上にインターネットエクスプローラーを乗っけてと。で、それが要するにネットスケープとのシェア争いにおいて逆転したのは、正にバーティカル統合、垂直統合戦略の結果だったと。
その都度いろんな議論があって、しかしながら、そのパウエルさんはですよ、まあいろいろな規制の考え方あるかもしれないけれども、これだけ技術革新が激しくて、かつパラダイムチェンジが激しい中で、かつマーケットがグローバル化している中で、恐らく彼らの一番の問題意識は、ブリティッシュ・テレコムとアメリカ勢とのいわゆるアジア市場とかにおける国際競争というその現実に直面をし、そして必ずICTは正にそのパテントとのパッケージでもって議論をしなければいけないと、こういう議論の中で、アメリカは今までのオープン規制を、アンバンドルをやめて、そして競争力強化政策に来ているんだと、こういうふうに私は認識しているわけです。
そして、そういうふうなことを踏まえて、今、もちろんいろいろな手を打たなきゃいけないと思います。しかし、順番を間違えてはいけないし、あんばいを間違えてはいけないということと、それから、IP化するということはですよ、結局、正に午前中も交差弾力性の理論の話を松原さんとさせていただいたんですけれども、正に業態間競争で光だけに注目、まあこれ技術ニュートラル性の話がございましたけれども、正にIPが進むということは、要するにそこに着目しているということは、IPプロトコルのところによるその大量なデジタル情報送信のサービスということでいえば、その伝送路は関係なくと、こういう話を展開しようとおっしゃっているわけですから、そうすると、光の話にこだわるというのはその話とは矛盾すると。
したがって、一本筋を通して、なるほどなと、そういう世界観で、こういう行政をやろうとしているんだなというところのこの統一的な、だから、個別個別に見ると、答弁を聞いているといろんな理屈を持ってきて、それぞれはまあコンシステントだけど、全体としてじゃどういうふうなコンシステントでかつ整合的で論理的な情報通信政策というかICT政策をやろうとしているのかということをやっぱりきちっと整理しておかないといけないんではないかなと。
また、現に、やっぱり私はNTTの最大の問題は国際化の後れだと思います、はっきり申し上げて。私は、NTTに今課すべき課題は、きちっと中国とかインドとかのマーケットに出ていくと。
たまたま昨日でしたか、トヨタが売上げ二十兆円を超えたというニュースがありました。我々ユーザーは、トヨタが世界的にグローバルに活躍していただいているおかげで物すごく恩恵を被っているわけですよね。であれば、NTTだって、中国、インドとかで頑張っていただいて、かつ光であれば、これはAT&Tにもブリティッシュ・テレコムにも負けないし、それがNTTがサービスを始めれば、当然、日本のICT機器メーカーだってサービスメーカーだってSIヤーだってそこにくっ付いて相当なビジネスチャンスを取れる。しかも、この九月に小泉さんが替わられるということで、対中ビジネスはもう大チャンスなわけですね。
だから、こういうような中で、やっぱりきちっとさっきのセオリー、せっかく竹中大臣が大臣やっておられるわけで、ここの経済性、産業政策を整理していただきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(竹中平蔵君)
大変難しい御質問をいただいていると思いますが、ちょっと済みません、松原先生とのやり取り、午前中ちょっと別の委員会に私おりましたんで、詳細には承知をしていないので、申し訳ございませんのですが。
鈴木委員の直接のお尋ねである競争政策そのものの体系、そのコンシステントな体系をやっぱり示す必要があるのではないかという点に関しましては、実は同じ問題意識を私自身全く持っておりまして、日本の競争政策の大家と、大家というか第一人者と言われる方お二人にそのことをぶつけてみたことがございます。そのうちの一人は委員もよく御存じの人なんですけれども。
コンシステントに競争政策を説明できるのか、特にこのネットワークの経済性があるような場合に、アメリカもシカゴとかポスト・シカゴとかいろんな議論がなされてきて非常に紆余曲折しているように見えるけれども、どういうふうな説明ができるのかというふうに直接求めましたら、それが説明できないんだと、実はそういう答えでございました。
その理由は、正に委員幾つか御指摘ありましたように、非常に単純に言えば、ドミナントだから規制するないしは分割すると。しかし、それを超えたネットワークの経済性とか標準化とかそういう問題が新たな現実の問題として入ってきていますから、そこをかなりパッチワーク的に、いろいろその時々のベストの判断をして積み重ねているというのがどうも今の世界の競争政策であろうと、そのようなお話でございました。それはそれでなるほどという思いがいたします。
先ほど局長から答弁がございましたように、アメリカの場合はまた日本とは全く違って、既にケーブル事業者という非常に特殊なドミナントな人たちがいて、その中でどのようにやっていくかという問題でありますから、ある種ちょっと、法律でいうと、成文法では説明できなくて判例法でその都度その都度やっていくしかないのではないだろうかというのがその先生の御説明だった。今、私は日本はそういう状況に置かれているのだと思うんです。
ただ、あえて言えば、やはり先ほど言いましたように、私は規制をできるだけ緩和して大変多くの自由を持っていただくと。自由を持っていただくコインの両面として、公正競争が必要であると。自由を持つ主体は、やはり非常に多くの人に自由なものを持っていただかなきゃいけない。ネットワークの経済性があってアクセス網がある場合に、入っていく人たちにとっての自由、アクセス網を引いた人たちの自由、それをどのように調和させるのか、利便者の最大利益になるかということを考えなければいけないのだと思います。
実は先ほどからNTTの話がいろいろ出ておりますが、私は、NTTというのはこの分野で日本で最も重要なプレーヤーであるというふうに認識をしております。そのNTTにしっかりと事業を自由にやっていただけるような基盤をつくっていくことが私の役割だというふうにも思っています。しかし、これだけ強い基盤を持っているからこそ、より大きな自由を持っていただくためには公正競争を担保する方法も考えていかなければいけない。正に懇談会で議論をしているのは、個別のことはともかくとして、方向は私は正にそういうことだと思うんです。
委員のお話の中で、ウイナー・テークス・オールの話がありました。ある種、NTTは日本国内ではウイナー・テークス・オールに近いというふうに見られるわけですが、残念ながら、世界の中ではウイナー・テークス・オールにはなっていない。それこそが実は問題なわけでありまして、そのために、やはりより大きな自由を持って、国際的に競争して勝っていただくようなプレーヤーに私はもう是非なっていただきたい。そのための自由。しかし、その自由を持っていただくために必要な公正競争のシステム、それをつくっていくことが私たちの今の役割であるというふうに思っております。
○鈴木寛君
いや、今の限りでは大臣と私で全く同じ思いでございます。
それで、確かにパッチワークなんですよね。このことは昔よく議論をさせていただきましたけれども、パッチワークのときはどうしたらいいかというと、いい意味でのやっぱり対症療法だと思うんです。問題が顕在化している、そして問題のマグニチュードが重いものからやっぱりその対応をしていくと。そして、要するに答えが分からない、正に標準化の問題も大変な問題です。その中では、冒頭私が申し上げた、せっかくうまくいっているものを、もちろんここも問題なしとはしませんし、先行投資的にいろいろな制度改革あるいはいろんなことをやるべきだと思いますけれども、そういう意味でのプライオリティーがどうなっているんでしょうかと。だから、著作権の話は是非やりたいと私は思います。しかし、このインフラのところでどういう問題。
今大臣おっしゃったように、国際競争力を強めるためにも公正競争力、これも私大賛成です。じゃ、お伺いしますけれども、改めなければいけない、あるいは正さなければいけない、要するに必ずしも公正でないという競争分野というのはどこだというふうに御認識されていますか。
○国務大臣(竹中平蔵君)
まず一点だけ、現状うまくいっているではないかと。私も、今のシステム、この五年間のIT戦略の下での制度設計とその中でNTTを中心とするプレーヤーの皆さんの貢献、それぞれ大変大きかったというふうに思います。
ただ、同時に、例えばNTT一つに取りましても、今で全く問題がないのかというふうに考えますと、これはNTTの皆さんにもいろんな思いがあると思いますが、例えば昔ながらの電話回線の時代の形で距離で会社を分けているわけですよね。東西とコムで分けていると。これ、本当にこれでベストですかというふうに恐らく聞かれたら、皆さんは、いや、やっぱりそうではないだろうねと必ずおっしゃると思うんですね。距離で分ける、IP時代に必要はないではないかと。
それと、モバイルを別の会社にしているわけですが、これも正にフィックス・モバイル・コンバージェンスと言われている中で、これを別の会社にしているのが、今がベストですかというふうに聞かれると、いや、やっぱりこれから変えていかなきゃいけない面はたくさんあるねというふうに、これは恐らく皆さん、どのぐらいのタイムスパンを取るかはあるとして、それは合意していただけるのではないかと思うんですね。だからこそ、その準備を、議論をし始める必要が私はあるのだというふうに思っております。
今の競争上何が問題かということに関しては、これは、実はNTTは御自社でいろんな努力をされて、自社でリストラもしながら資金調達も御努力をされて施設を引いたと。それに対して、一方でコンペティターと称する人たちは、そこがコンペティターから見るとやっぱりドミナントであるというのは、これは恐らく間違いなく皆さんおっしゃるんだと思います。
先ほど言いましたけれども、これ、どちらの言い分にコンシステントな正義があるかという問題では私はないと思います。ただ、現実問題としてそこに競争メカニズムがしっかりと働いて国民の利益になるような形になっているかどうかをしっかりとチェックする、それがやはり今の我々の非対称規制の中での競争政策の促進ということだと思っております。そういう観点から議論していくことが重要だということを懇談会では議論していると承知をしております。
○鈴木寛君
私も九六年のNTT再編のときは正にその担当をしておりましたから、その矛盾点、正に、午前中にも言ったんですけど、やっぱりIP時代がここまでなるということを前提にしていなかったということでNTT法制というのはやっぱり問題だ、問題だというか前提が変わっているということで、きちっと検討をしなきゃいけないという立場です。
加えて、先ほどもちょっと申し上げたんですけど、そもそも電気通信事業法といいますか、電気通信事業者にどういう規制を掛けなきゃいけないかというと、最小限の届出とか、あるいはいろいろな、不正アクセスの問題とか、あるいは安全性の問題、リスクマネジメントの問題がありますから、全く規制要らないかというとそうではありませんけれども、かつ、現行の電気通信事業法はかなりそれに近いイメージになってきていると、こういうふうに思っています。
したがって、NTT法はそういう形できちっと見直して、より規制緩和の方向で見直して、そして、NTTの皆様方の創意と工夫とリソースをもって正に新しいビジネスを合従連衡で様々な事業者とともにやっていくと、こういうパラダイムは私も望ましいのではないか。
そして、先ほど冒頭申し上げました、例えばインターネットテレビのギャオがいくのかテレビ番組がいくのかというところにも、NTTは直接参画しないにしても、そこでやっぱりNTTが他のプレーヤーと同じように自由に新しいビジネスを連携してやる交渉ができたり、そうしてその経営判断に、今は様々なNTT法があることによってジャッジが遅れている。そうすると、ビジネスパートナーからすると非常にやりにくいということもそのアプリケーションとかコンテンツのビジネスのところでは出てきているわけであります。
したがって、そこは私はオーケーなんですけれども、大臣の答弁を聞いている限りはまあいいんですけれども、先ほど座長からお伺いをすると、NTTの在り方についてもう選択肢は四つですというお話がありました。この話を聞くと、あれっというふうに思わざるを得ないんですね。一つは現状維持、これはもうありませんと。ない理由は、それはいろいろお話がありました。次はアクセス部門の機能分離だと。次は組織分離だと。そして、NTT法廃止で資本分離だとおっしゃるんです。
私は、第五の方式、第六の方式というのがあるんじゃないでしょうかと。今申し上げたように、NTT法の中の特に経営戦略についてもっともっと自由にやっていくという方法。だけれども、それは資本分離だとおっしゃると、アメリカでは全然違う方向になっていますねと。そうすると、これだけですか選択肢はというところで私は心配になってしまうわけで、もう少しやっぱりいろんな可能性があって、先ほどから大臣がおっしゃっているような観点からやっぱり選択肢は詰めていく必要があるんじゃないでしょうかと、こういうことが心配なので、是非そこは、もちろん懇談会になって、その後審議会があって、そして引き続きまた国会でこういう議論をやって、そこには国民的議論を醸成していただけるんだと思いますけれども、そういう懸念を持っているということは御理解をいただきたいと思います。
それからもう一つ、私やっぱり気になりますのは、技術開発の話なんです。
これもう大臣よく御存じだと思いますけれども、ICTの分野は、基礎研究と応用研究というのは、何が基礎研究で何が応用研究かというのは非常に難しいですよね。例えば、じゃ実用化までのリードタイムで見るといっても、これ、ある、何といいますか、基礎的な基盤的な発明、発見が出ればこれはもう直ちに製品化になるケースもあります。あるいは、それは特許を取るのか取らないのかみたいな話でも、恐らくこのICTの分野は、基礎研究といっても何かしら特許に必ずつながるケースが多いと。
一方で、先ほども申し上げたんですけれども、ソフトウエアというのは基本的にアルゴリズムですから、かなり数学に近いわけですよね。そうすると、村井先生も数理工学ですから、数学というのは一見基礎的な分野とも思えるけれども、しかしそれが一挙に実装すると。それから逆に、さっきも申し上げたんですけれども、ショックレーは応用研究所の所長ですよね、ノーベル賞を取った。だから、そういう意味で応用研究者と基礎研究者というのはないんですよね。かつ、ネットワークサービスというのは、ソフトウエアとハードウエアとそれからヒューマンウエアと、これが正にインテグレートして、テストベッドで実装してみると、いろいろな研究段階では分からなかった正に複雑系なシステムであり、統合的なシステムでありと。そこが正に研究要素であり、そこが面白いところであり、難しいところであると。
そうすると、私は、これ光がうまくいった理由の一つに、やっぱりハードとソフトとヒューマンがかなり密接連携を取りながら、まずハードとソフトがうまくやれて、そしてそれの実装がかなりクイックにできて、それがフィードバックが早くなってというパターンが今回はうまく当てはまったと。しかし、このパターンが今後もいいかどうかは分かりません。分かりませんけれども、結局、DSLのときで、要するにソフトウエアドリブンでブロードバンドパラダイムをリードしていたときから、光になると、かなりハード、WDMとか光技術のところの開発の要素とソフトウエアの技術の開発の要素のインテグレーションのところが極めて重要なポイントになっていきますから、今回それはうまくいったと。
したがって、報告書の中で、基礎研究の機能が分散しているのは問題ではないかという論点整理があるんですけど、特に基礎研究とかあるいはICTの分野というのは、どういう研究パターンとかあるいは研究チームの、何というんですかね、ありようというのがいいのかというのは分からないですよね。
これも御承知のように、西海岸は自立分散協調型です。シリコンバレーでいろいろなベンチャー的な人たちがRアンドDをやって、しかし、物すごくコラボレーションをうまくやれている。一方、東海岸は、かなり集中的、クローズなRアンドDマネジメントをやっていて、それがシリコンバレーに負けたという理由で、今や東海岸のRアンドDのマネジメントもオープン経営型に、オープンネットワーク型に変わってきています。
そうなると、私は、放送と通信の研究テーマをあるいは研究者を研究室単位とか研究所単位でコラボレーションをすることは大いに結構だと思いますけれども、巨大なものをつくって、そしてそのテーマ選定も中央集権化してというのは、今のICTの研究開発を本当に促進するのか、それともそこに停滞させるのかというのは、これ分からないというか、ここも相当慎重にやらなきゃいけないんじゃないかというふうに私は思っていまして、ここも心配の点なんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(竹中平蔵君)
今御指摘いただいた前半の心配な点、実はNTTの在り方に関してもいろんな議論がありまして、あえて座長はそれを、いろんな意見があるからあえて類型化をしたということだと私は承知をしておりますが、委員御指摘のように、実は非常に多様な選択肢の中で実際の政策は考えていかなければいけないというふうに私も認識をしております。
お尋ねの研究開発、これはもう大変難しい、しかし重要な問題であると思っております。今、東海岸と西海岸の例を御説明くださいましたけれども、実は私も全く同じ認識を持っております。かつて、MITの何とかラボラトリーというのがすべてを支配していた時代がありました。しかし、どうもそうではない形で、それに代わった言葉として創発という言葉がよく一時使われたんだと思います。ネットワークの末端で、ガレージでジーパンをはいた二人の青年が何かやったことがまさしく世界の標準を瞬く間につくってしまう、それこそが新しいタイプの研究開発であるということが言われた。
一般には、確かに基礎研究というのは重複投資を避けるために集約する方がいい、応用研究の方はむしろ分散して競争する方がいいというのは一般的な話でありますけれども、この分野においては何が基礎か応用か分からないという委員の御指摘にも私は賛同したいと思います。
一方で、今おっしゃったような議論、実は懇談会の中でいろんな議論がなされています。一つの意見として集約のような議論は出ていることは事実でありますが、それが本質的な問題ではないのではないかという指摘もあります。むしろ、そうではなくて、標準化をどうするかということこそが今のその技術開発の問題なのではないかと。それが行われていることこそが重要なのではないかという指摘はなるほどと思わせるところがございます。
そういうことも含めて非常に建設的な議論をしていただいておりますので、委員今御指摘のような、一方的な議論にはならないように私も注意したいと思いますが、実際きちっとした議論をしていただけるものというふうに考えております。
○鈴木寛君
いや、是非、本当にこの標準化の問題というのは日本がずっと泣かされていたテーマですから、せっかくこの光で国際標準を取れるというこのチャンスを逃さないようにという視点も重視しながら議論を進めていただきたいなと、こういうふうに思います。
そして次に、ちょっと放送の議論をしたいわけでありますけれども、結局、IPということでそこの融合化ということは進むわけでありますけれども、それの物理層のところですね。結局、私は放送の方はそれなりにいろいろな問題、課題を抱えているとは思っておりまして、と申しますのも、地デジ、地上波デジタルの設備投資というのはこれは巨大な投資になる。これは本当にこの何年かに一回大騒動をしながら、国がどこまで手当てをするのか、あるいは民間に任せるのか、あるいはそれこそその地域の問題、それから難視聴といいますか、そこの設備整備が遅れるところの問題があります。
しかし、これももうその議論が始まって、かつそれへの投資が始まって、私は幾つかの大事なチャンスというか、それをもう何回か乗り越えてしまったというか、やり過ごしてしまったという感じがいたしまして、まあなし崩し的にかなりのお金と資源が投下をされてしまっていますと、こういうことだと私は思います。
一方で、これは別にその政策が悪いということは全く言うつもりはありません。むしろこれは技術開発のテンポの速さなものですからしようがないんですけれども、当初地デジをやらなきゃいけないと言い始めたころに比べると、圧倒的にそれ以外の物理層、伝送路によるIP、ブロードバンドIPがサービスとして出てきつつ、あるいは可能性として出てきていると。そうすると、これ投資計画を立てる方からすると、あるいは既に参加コストを払っている方からすると大変な話だし、現にいろいろ地方放送局の経営等々を見ていますと、やっぱりそこのところに相当なエネルギーが、金銭的な意味でも、あるいは経営的に人材的な意味でも取られてしまっている。
本来放送局のコアコンピタンスというのは、正にいいコンテンツを作れる人材であったり、いいコンテンツを作るためのそのいろんなソースを持っているでありますとか、そういうところとの信頼関係を持っているとか、あるいはそういう人材をOJTなどでつくっていくそういうシステムとか、そういうところだと思うんですけれども、そこがどんどんどんどん失われていくのは私は非常に残念だなというふうに思います。
そういう意味で、正に今、いわゆる地デジでカバーできないところの話がありますけれども、それももちろん重要な話ですけれども、地方局のそうした投資イメージというものをだれがこれきちっと、それこそガバナンスを働かせてやっていったらいいのかというのは私は大問題だと思うんですけれども、その点について御所見をいただきたいと思います。
○国務大臣(竹中平蔵君)
ちょっと御質問を正確にとらえているかどうかあれなんですが、地方局において、この地上デジタルを目指してかなりの投資が必要だということはもう御指摘のとおりでございます。一局平均四十億というふうに言われているそうでございます。そうした点も踏まえまして今ロードマップをいろいろ作成しているわけでございますが、私も実は総務省に来るはるか前にこの地デジを見ていまして、本当にできるのかなという思いがございました。しかし、改めて各般のいろんな取組を併せて、今九五%までロードマップ来たわけでございます。これは大変な私は成果であるというふうに思います。
一方で、その中身については今、鈴木委員御指摘のように、実は当初は地上波デジタルというふうに言ったと。今は地上デジタルというふうに言う。正にそこはIP網に代表される電波以外の伝送路の役割が重要になっているという事実、そして、そうした伝送路が着実に利用可能になっているという事実、それを反映しているわけでございます。
最後の五%のところをどうするかということについては、先ほども御答弁させていただきましたけれども、まあとにかく事業者にしっかりやっていただくということ、それに加えて、今申し上げたような別の手段がどのぐらいあるかということ、このやはりロードマップを作っていくということこそが、実は正に一つのガバナンス、コントロールになっているというふうに私は理解をしております。したがって、これを更に一〇〇に近づけていくという努力を引き続き行いたいと思っております。
○鈴木寛君
最後に、先ほどちょっと触れましたけれども、日本のITの、ICTの産業の、これは論点整理でもインドと中国にコンテンツ制作力の情報発信を充実するという問題意識は書いてあるんですけど、それを進めるためにも、コンテンツもさることながら、それこそ下位レーヤーと上位レーヤーと一緒に出ていくということは、やっぱりいろんな意味でのこのビジネスチャンスを掘り起こすことにつながると思います。
そういう意味で、光を始め、あるいはまだモバイルもどんどんどんどん新しいサービスを日本は発信をできるわけでありまして、そこへの戦略をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(竹中平蔵君)
基本的には先ほど言いましたように公正な競争、規制緩和、自由にやっていただく、自由にやっていただくチャンスを提供するということと、そして公正な競争をするということ、これがやはり王道であろうと思います。特に、今委員も言葉としてお使いになられたように、各レーヤーの競争を高めていただかなければいけないということなんだと思います。
特に、実はコンテンツの話はこれはもう委員が大変熱心にこれまでも議論してくださったことを私も承知をしておりますが、日本の規模はアメリカの五分の一しかありません。これはすごいことだと思います。これだけ、何といいますか、アニメ等々日本のコンテンツはいいと言われながら、実は市場規模はアメリカの五分の一しかないということ、それだけの余地があるということだと思いますが、同時に、いろんなコンテンツを作る、作りたいと思っている人たちがいるにもかかわらず、そういう人たちが活躍する場が現実にはないということを意味しているんだと思います。テレビ局、民放も実はかなりの部分、外注しているはずであると。にもかかわらず、先ほどもちょっと厳しい御批判がありましたけれども、いい番組が作られていないではないかというような思いを国民の皆さん、やはり持っておられるんだと思います。
そこは、広くやはりレーヤーの競争をしていくということ、それは各レーヤーにおいて必要であると。コンテンツだけではない、各レーヤーにおいて必要であるというふうに認識をしております。
○鈴木寛君
中国、インドにおいて、欧米の動向を見ていますと、更に踏み込んで、やっぱり首脳が、相当首脳同士であるいは政治家がそうしたビジネスアライアンスができるための手だてをしていることは事実だと思います。やっぱり日本は足らない。
そういうことに是非大臣も更に目を向けていただいて、そして、繰り返しになりますけれども、本当にこれ大事な懇談会だと思いますので、本当に多角的な観点から、是非もう少し議論のプロセスをオープンにしていただくとその杞憂というものもなくなるかもしれませんし、そういうことも是非お願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。