2006年5月9日 文教科学委員会
〜科学技術交流のあり方について〜
○委員長(中島啓雄君)
研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
○鈴木寛君
おはようございます。民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
今日は研究交流促進法の審議をさせていただきますが、まずその大前提として、科学技術の振興、これは極めて重要な国としての政策課題だと思いますけれども、これを実質的に我が国の科学技術振興を行うに当たって何が重要になるというふうに考えておられるか、文部科学大臣の御所見をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(小坂憲次君)
おはようございます。
今、鈴木委員が御質問いただいたことが本当に根幹的な問題でございますけれども、我が国が激動する世界情勢の中で、また社会環境、経済環境の変化に対応してそれぞれの課題を克服していくためには、科学技術創造立国の実現をしていくという一つの目標を持って、そして科学技術振興を図り、資源のない我が国として人材を育成をする中で、先端的なまた基礎的な各分野における科学技術に力を入れていくことが非常に重要なことだと思いますし、また不可欠な要請だと思っております。
三月末に第三期科学技術基本計画を策定をいたしまして、平成十八年から二十二年度までの計画について閣議決定をしていただきました。文部科学省としては、この基本計画を踏まえまして、若手研究者や女性研究者の活躍促進など優れた人材の養成そして確保を図っていくこと、また基礎研究の充実と産学官連携を通じたイノベーションの創出に努力をすること、また次世代スーパーコンピューターや宇宙輸送システム等の国家基幹技術、当然、高速増殖炉サイクル技術や海洋地球観測探査システム等、更に言うならばエックス線自由電子レーザー等、予算面で苦労したこれらの事柄も全部含んでのことでございますけれども、これらに取り組むことが大変重要だと認識をいたしております。
このためにも、最先端の大型共用研究施設であります、あるいはそういった設備を整備するとともに、これを広く共用に供して研究交流を促進することが世界最高水準の成果の創出につながるものであることから、今回この法案を提出し御審議をいただくようにしたところでございまして、鈴木委員の御理解を是非ともお願いを申し上げたいと思っております。
○鈴木寛君
実は、昨日は行政改革推進委員会で大臣と議論させていただいたわけでありますけれども、昨日もお話を少し申し上げましたが、今日は科学技術の話ですが、これからの二十一世紀というのはもうすべてのものが人なんですね。
今日のテーマのこの科学技術の振興も、正に今おっしゃったようにやっぱり研究者、この正に能力と、そしてその方が、能力ある方でもやっぱりモチベートされるか、それとも、何といいますか、それを抑え付けられるかと。正に意欲をかき立てて、そして意欲をかき立てられるような中で更にその研究者の研究環境、環境ですね、そしてそういう方がどれだけいらっしゃるかという、正にその能力と意欲と環境と数、これの掛け算、これをどういうふうに最大化していくかと、こういうことだと私は思うんですが、少なくとも昨日の議論では中馬大臣とは全くそこの点がシェアできませんが、小坂大臣とはそこはシェアさせていただけるんではないかというふうに期待をいたしておるわけでございますけれども、この科学技術のことについても全くそのことが当てはまると思います。私は、日本の科学技術に従事する研究者の方々の能力というのは、これは極めて高い水準にあると自負していいのではないかというふうに思っております。
そこで、結局、その方々がいかに意欲を持って、そしてその意欲をかき立てられるような環境で、かつまたそういう方をこれからどんどん増やしていく、確保していくと、ここのところが正に政策だと思いますけれども、そういう観点で見たときに研究者、技術者というのは、もちろんいわゆる報酬といいますか人件費といいますか、そのことももちろん意欲をかき立てることの一つではありますけれども、私も友人にそういう研究者一杯おりますけれども、必ずしも報酬をもらうよりも、もっとより良い研究環境を提供してもらうことの方がより意欲がかき立てられるんですね。そこがちょっとビジネスパーソンとは違う志向を持っていると。これは、例えばアメリカなんかでも、やっぱりシリコンバレーなんかでも、いわゆる研究者、給料とすばらしい研究環境とどっちが欲しいかというと、後者を選ぶ人が多いというのが私は実態だと思います。
そういう意味で、研究環境というのは非常に重要なわけでありますけれども、文部科学省が平成十七年の十月に日本における研究を阻害をしている要因などについて調査を、アンケート調査をやっておられます。これは非常にいい調査だというふうに思っておりまして、さすが研究者の方は率直だなと、この率直な意見を引き出す、ちゃんと調査をされた文部科学省には敬意を表したいと思いますけれども。
それによりますと、やはり日本の研究を阻害している要因として、研究人材の数の問題、そして研究人材の能力の問題、研究費の額の問題、そして研究支援者の充実度、そして研究機器・備品の充実度と、今言った順番で阻害要因だと。正に数が足らない、そして能力、これはお互いの切磋琢磨しようということだと思います、そしてお金の問題と研究支援者充実と、こういうことになっています。
そして、五年前と比較して改善が見られる項目は何かという問いが別にありまして、研究機器・備品の充実、あるいは研究交流の頻度、知的基盤の充実、これはこの五年間で改善をしたというふうに言っておられます。
これは、科学技術基本法もできて、そして厳しい予算状況の中、そうした資金の確保に努められ、確かに私も毎週のように大学のキャンパスに行っておりますけれども、例えば東京大学なんかでも相当新しい建物ができております。そういう意味で、正に研究機器・備品というのはこの五年で、実態としてそれまでが余りにもひどかったということもありますが、まあ改善はしているんだろうなと。それから、私も中国の清華大学とは常時交流がございますけれども、そういう意味の国際的なことも含めて、あるいは国内の大学間の連携も含めて、研究交流の頻度あるいは充実度というのも、これも上がっているということも非常に実感として分かります。
一方で、この五年間での充実度ということでワースト、ワーストからいうと、研究人材の数、これはワーストワンなんですね。要するに、数の問題は全く改善されていない。それから、研究スペース、それから人材の能力、それから研究支援の充実度、このやっぱり四つはこの五年間も問題が放置されたままだと、こういうことをおっしゃっております。正に答えはもうここに如実に表れているなというふうに思いまして、正に我々取り組むべきは、この研究者の皆さんがおっしゃっている人材の数の問題、そして能力を更に引き上げる、そして研究の支援者、ここをやはりもっともっと目を向けていかなければならないのではないかなと、こういうふうに思うわけであります。
それで、私も改めて科学技術基本法を読み直しました。あるいは、この間の政府のお出しになっている方針を見ましたけれども、研究環境の中でハードウエアの環境ということはかなり意識がされて、そして現に改善もされたと。しかし、正にサポートしてくれる人ですね、このサポートしてくれる人には大きく言うと二種類ありまして、研究のオペレーション、作業を補助してくれる、あるいは準備を手伝ってくれる、こういう人と、それからもう一つは、いわゆるプロジェクトマネジメント、あるいはその事務管理といいますか、こういう二つあると思うんです。
この五年間を見ますと、国立大学法人化ということもあったということもあると思いますけれども、この五年間、とりわけ日本の国立大学の研究者はほとんど研究活動ができていません。これはもう皆さん口々におっしゃいます。で、そうした本来、研究に生涯ささげたくて研究者になった方が、役所へのドキュメントワークといいますか、必ずしも得意でない、あるいは好きでない書類作成、書類作り、あるいはそうしたことの説明あるいは折衝、もちろん自然科学と向き合っている分には二十四時間、三百六十五日、寝食を惜しまずと、こういう方なわけでありますけれども、やはりなかなかそういう意味での事務的な、これももちろん大事なことであるわけでありますけれども、そのことに相当の時間と、そして必ずしもお好きでないことでありますから相当なエネルギーが掛かって、そのことが研究者の方々のパフォーマンスに、あるいは意欲に大きなマイナス要因となっていると。これが、率直なところ、私、この五年間の日本の研究環境の現状だというふうに思います。
正に、研究者のおっしゃっておられる人員の数の問題、そして人材の問題、そして人的な支援体制も含めた研究環境の問題、この点を我々早急に改善をすべきだというふうに思いますが、文部科学省の御所見を伺いたいと思います。
○政府参考人(小田公彦君)
ただいまの議員御指摘の調査は、これは論文発表をしている研究者に対しますアンケート調査で、この研究者というのは民間の企業が半分、それから大学等が三〇%、それで公的研究機関などが二〇%という、研究者の研究活動の実態調査ということで、特にその研究者の意識の実態把握を目的として昨年一月に実施したものでありますが、これをまとめまして昨年の十月に発表させていただいたものでございまして、この目的は、科学技術基本法が制定されて十年たったと、第三期科学技術基本計画を策定するに当たっての研究所を取り巻く環境の変化とか、科学技術が社会で果たすべき役割をテーマとして調査を行ったものでございまして、本調査におきましては、議員御指摘のとおり、第一線の研究者から見て、研究人材の数あるいはその能力といったものや研究スペースに関して改善が進んでいないという結果でございます。
我々としましては、こうした調査あるいは科学技術・学術審議会における議論などを踏まえて策定されましたこの第三期の科学技術基本計画におきましては、人材の質と量の確保、それから科学技術振興のための施設設備の整備といったものに極めて大きく時間を割いて議論をしてまいりまして、特に人材の質と量につきましては、若手研究者の自立性の確保とか、女性研究者あるいは外国人研究者の十分な活用といったもの、あるいは高齢研究者の活用といったようなものについて非常に重点を置いて記述しておりまして、文部科学省といたしましても、こういった計画に基づいて、この施策を着実に第三期基本計画において実施してまいりたいと思っている次第でございます。
○鈴木寛君
それで、今日は研究は人だということで議論を進めたいと思いますが、研究者の数はこの五年間で、平成十三年のときは七十五万人だったのが平成十七年では七十九・一万人になっておりますので四万人ほど増えていると、こういうことであります。しかし、そうした研究者を正にそばで支える研究支援者は、平成十三年が二十四・九万人だったものが平成十七年で二十一・九万人ということで三万人減っているわけですね。
これ、研究というのはチームでやりますから、この比率というのはやっぱりベストバランスというか、政府も研究者の数は増やさなきゃいけないということで様々な御努力をされている中で四万人の増ということになっているんですけれども、結局その総額の予算を絞っていきますからひずみがこういうところへどんどんどんどん出ていって、チームとしては、研究チームとしてはこのバランスがどんどんどんどん悪くなっている、こういうふうに言わざるを得ないと、こういうふうに思います。
そこで、私は、やはりこの研究支援者の重要性というものを科学技術基本法あるいは科学技術の基本政策の骨格の中にきちっと位置付けるべきではないかと。正に研究支援の充実というのもこの研究環境の整備の重要な要素だと、こういうふうに思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(清水潔君)
先生御指摘のように、全体として研究活動を推進していく上で研究支援体制の必要性、重要性というのは正に御指摘のとおりでございます。
科学技術基本法との関連でのお尋ねもあったかと思いますが、科学技術基本法第十一条第三項におきましては、研究開発に係る支援のための人材の確保について、研究者及び技術者の確保等に関する施策に準じて施策を講ずる、こういうふうなことになっておりまして、研究開発の円滑な推進にとっての重要性というのは基本法においても示されている、このように私どもとしては理解しておるわけでございます。
私ども、そういう中で、研究支援者につきまして私どもが講じている施策といたしまして、競争的資金での研究支援者の雇用を可能にする、例えば科研費で申し上げますと平成十三年度からそういう措置を明確にし、併せて競争的資金を大幅に拡充する等により対応してきている、このような状況でございます。
○鈴木寛君
今、十一条の三項で書いてあるんだと。私もそう思います。そうなると、正に平成十三年二十四・九万人だった研究支援者が平成十七年で三万人も減ってしまっていると。これは科学技術基本法違反だと、こういうことになってしまうわけでありますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小田公彦君)
この基本調査によりますと、研究支援者は、確かにデータとしましては平成十三年が約二十四・九万人が平成十七年には二十一・九万人ということで三万人減っておりますが、実はこの内訳を見ますと、大学、公的研究機関等は平成十三年八・九万人で、平成十七年が八・七万人ということで二千人の、少し、若干の減少をしておりますが、やっぱりその大きな減少の幅は、実は民間企業においてでございます。民間企業におきましては、平成十三年は十六万人が平成十七年には十三万二千人と、特に昨年は十二万人ちょっとということで、民間におきまして大きく、研究従事者について、景気、多分景気動向といったようなものに影響されて大きく変化しているということが実態かと思っております。
○鈴木寛君
余りそういう細かい議論に入るつもりはなかったんですけど、その数字を出されると私も申し上げざるを得ません。
非営利団体、公的機関の研究支援者は、平成十三年のとき四万人だったのが三・三万人に、七千人減っております。もちろん、民間の減少というところはあろうかと思いますけれども、是非やっぱり政府としてもこの点重要なんだという意識でもって政策に取り組んでいただきたいし、もう少し申し上げると、やはり文部科学省さんは是非、省内ではよく御議論されていると思います、もっとほかの役所に、財務省とか、そこへの、まあ我々もともに頑張りたいと思いますけれども、どうもこの小泉内閣の中で、人というものがいかに大事なのかと、特にやっぱりそういうチームで大事な現場、今回は教育環境の現場ですけど、そこの人たちをモチベートして、やる気にさせて、そしていい成果を上げていくということがどういうことなのかということのイメージがどうも小泉内閣というのはシェアされていないと、こういうふうに思います。
この話は非常に重要でありまして、例えば国際比較をしますと、研究者一人当たりの研究支援者の数というのは、日本は、さっき大体分かったように七十九万人に対して二十二万人ですから、大体〇・三ぐらいなんです。同じその比較でいうと、ドイツは〇・八三ですよね。フランスも〇・八八。ですから、大体やっぱり一対一。まあそうだと思います。同じ研究をやっていて、やっぱりその研究者と研究支援者が一つのテーマを本当にタッグを組んでやるということになれば、大体やっぱり一対一ですよ。〇・三ということは、結局、研究支援者が三人の研究者の面倒を見ている、こういうことになるわけであります。しかも、二〇〇四年の数字で申し上げると、日本の大学の場合、これは〇・一八です。ですから、大学の場合は研究者が一に対してそれを支援してくれる人は〇・一八、逆に言えば、そういう支援者は五人の研究者の面倒を見なきゃいけないと。最近は役所も頭でっかちで、その下の係長さんとか係員さんとか大変御苦労されておりますが、そのような状況を思い浮かべていただければ、いかにチームとして不健全、不自然な、不均衡なことが知的パフォーマンスに大きく影響するかということがお分かりだと思います。
例えば、一九八六年は国立大学、同じ数字が〇・二九だったんです。それがどんどんどんどん国立大学及び大学に対するこの結果、悪化しているんですよね、この比率は。もちろん、それは研究者の方の定員を増やしていこうという資源配分をしてきた結果だというのはよく分かりますけれども、ここでもう一回やっぱりこのことを一から見直して、その適切なバランスに対して、今回の法律改正を機にやっぱり一歩改めてスタートをすべきだと、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(河本三郎君)
鈴木先生、研究支援者のことについて大変御熱心に研究をされておられまして、ありがとうございます。
私も大学で機械工学を学んでまいりました。その成果を発表するに当たって、高いハードルがたくさんあります。とにかく研究支援業務というのは研究開発にとって極めて重要な役割を果たす分野でありますので、先生は一対一と言われましたけど、それはなかなか難しいところもあると思いますけど、それに近づけないと科学技術の振興、科学技術創造立国を目指せないと、こういう思いでありますので、この研究支援業務、支援者の業務の充実に力一杯取り組んでいきたいと思っております。
○鈴木寛君
是非、今の点、頑張っていただきたいと思いますし、我々も応援をさせていただきたいと思います。まずそのことが、やっぱり一対一が大事なんだ、日本はその点非常にいびつになっているんだということを、まず情報共有をより多くの方と是非していただきたいと思います。
さらに、日本とアメリカとでRアンドDのマネジメントを比較しますと、御承知のように、アメリカにおいても研究者の方は要するにどんどんどんどん転職をしていくというか、むしろそれはプロモーションも含めてしていくという形になっているんですけれども、テクニシャンとか研究補助者はむしろ正規雇用率は高いんですよね。ということが一点。なるほどなと。
ですから、逆に言うと、その研究者が移るときも、ああ、そういう人たちがちゃんとその現場を支えてくれているんだ、だったら行こうかと、こういう話になるわけでありまして、こういうむしろ研究支援者、テクニシャンを正規雇用にしていてそこの安定雇用をしているということは、やっぱりさすがアメリカの高いパフォーマンスを支えているなと、こういうふうに私は思います。
それから、さっき申し上げたドキュメンテーションの問題、マネジメントの問題でありますけれども、アメリカの場合は研究開発部署に必ずそういう事務管理スタッフがいるんですね。当然、アメリカもグラウンド一杯あります。アメリカだって、私立大学だって当然エネルギー省とか国防省のお金をもらわなきゃいけない。それは当然税金を使う話ですからドキュメンテーションがある。ここは私は別に日本のドキュメンテーションだけが課題だということを申し上げるつもりはありません。しかし、日米の大きな差は、それをPhDの人が書いている日本と、例えばビジネススクールを出た、あるいはマネジメントスクールを出た、そういうことが得意な人がきちっと研究開発の部署にいて、そういうふうなちゃんとディレクターをやっているアメリカとで相当な違いが出てきていますと、こういうふうに思うわけであります。
この辺はやっぱり、いいものはいいとしてきちっと学ぶべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(清水潔君)
御指摘のありましたように、アメリカの場合は全体として、正規雇用の実態について私ども必ずしも承知していないわけでございますが、いわゆる研究活動を支える様々な意味での言わば支援体制あるいはマネジメントスタッフが非常に充実しておるというふうなことについては私どもも承知しているところでございます。
実際上、この問題についてはなかなか比較が難しい面もございますけれども、私どもとしてそういうことはなかなか言っておられませんので、基本的には、先ほど御答弁申し上げましたように、特に企業等、それぞれの企業の正に研究開発戦略に基づいてやられるものは別といたしまして、大学あるいは公的機関等のセクターにおきましてはそれなりの努力をしてきたわけでございます。
例えば、先ほど申し上げましたように、研究支援ということで競争的資金をというのは、つまり一律にそういう目標を掲げるということではなくて、それぞれの分野などにより必要とされる具体的な支援業務体制は多様であるというようなことを念頭に置き、また、環境の整備というものもより競争的に行っていくと、こういうふうな考え方の下に競争的資金での言わば研究支援体制の整備充実というようなことの意を用いてきたつもりでございます。
いずれにいたしましても、正に先生御指摘のように、いろんな意味で、マネジメントの問題も含めまして、研究支援業務というものは研究開発にとって極めて重要な役割を果たすものというふうに認識しておりますし、御指摘のような事例というものを十分参考にさせていただきながら今後努力してまいりたいと、このように思っております。
○鈴木寛君
この点は、本当に日本の国の研究パフォーマンスに物すごくかかわる話なんですね。それはどういうことかといいますと、PhDつくるのには十年掛かるんですよ、少なくとも。MBAつくるのは五年で何とかなるんですね、五年、六年で。ということになると、正にPhDをこれから一挙に増やしていくというのは、これはなかなかやっぱり難しいと思います。しかし、その人たちのパフォーマンスを最大限上げるという意味でいうと、正にこうしたマネジメント、あるいはそうしたテクニシャンという、この人材育成のスピードあるいは手間、そのコストということの全体を見たときに、ベストチームというのは、正にそのテクニシャンとそうしたマネジャーと、そして正にリサーチャーだと。このことを是非考えていただきたい。
そのことは、私は、本当にこのPhDを育てるというのは、これはもう一子相伝に近い形で大変でありますけれども、そういう大変な中で日本が国際競争に勝っていく極めて重要なことだと思いますので、しつこく申し上げているわけであります。
ただ、私は、この国会が、先ほど、研究者についてはこの五年間改善が見られました、そして、もちろんマネジメントあるいは人的支援の体制で改善すべきことがありますと、こういう議論をさせていただいたわけでありますが、今回の、昨日も議論させていただきましたけれども、行政改革推進法、これはもう本当に日本の科学技術にとって冷や水を浴びせ掛けるとんでもない、知的立国日本のために、法律だと私は思っております。
すなわち、国立大学法人あるいは独立行政法人の中にも立派な研究所一杯あります。日本の科学技術を支えています。そういうところに対して五%削減をすると、こういうことを言っているわけですね。そうすると、これを素直に読めば、せっかく増えてきた研究者が五%減る、それからこれから充実をさせていかなければいけない研究支援者はもっと減ると、こういうことになってしまいまして、これは日本の教育あるいは研究というものにもう甚大な影響を与えるというふうに思いますが、この点はどういう議論の結果こんな悪法が出ているのかをもう一度我々に御説明をいただきたいと思います。
○委員長(中島啓雄君)
答弁は。どなたが答弁されますか。答弁。小田局長。
○政府参考人(小田公彦君)
御指摘の行政改革法の出てきた経緯ということでございますが、それにつきましては、我々も国立大学の法人、それから独立行政法人等につきまして、今回の人件費の削減につきましては、国の大きな方針の下に人員の削減又は人件費の削減ということで、国立大学法人、独立行政法人につきましては、基本的には人件費、費用の削減ということで、平成二十二年度までに人件費の五%を削減するというそういう方針の下に、基本的にはそれに協力するということで、具体的な人件費の削減の実施方法につきましては、役職員数の削減、それから給与水準の調整等様々な方法が考えられるということから、我々も検討してきた結果、具体的な人数の削減については、これは我々適当ではないということでしておりませんが、研究者の減少が懸念されるという、これは大変我々にとっても、科学技術創造立国を目指す我が国にとっても科学技術の関係人材の養成確保といったことはとても重要でありまして、その人件費の削減に当たりましては、もちろん既存経費の見直しといったこと、効率化といったものはするわけでございますが、基本的には、競争的資金の活用といったようなものによりまして支障が出ないように適正に対処をするという基本的な考え方でございます。
具体的には、第三期の科学技術基本計画におきましては競争的な環境の整備に資すると、こういうことから、この競争的資金というものは政策的に拡充を目指すという基本的に非常に大事な施策でございまして、これによりまして雇用される研究者、研究支援者につきましては、この競争的資金におきましてあらかじめ雇用される任期付職員の人件費はあらかじめ見込むということはできないということなどから、こういったものにつきましては人件費削減の対象からは除くというようなことになっておりますので、こういった競争的資金を活用いたしまして研究者、研究支援者等の充実を図っていきたいと我々は考えております。
○鈴木寛君
いや、ちょっとよく分からないんですけれども。
これ一々申し上げませんけれども、アメリカもドイツもフランスもイギリスも相当な勢いで政府の研究費の負担が増えていますよね。アメリカなんかは、これ十年間で見ると倍増ですよ。イギリスも倍増です。もちろん、日本も予算を充実をしていただいているのは分かります。ここまではしたがって研究者も増えてきました。ここまでは本当によく頑張ってこられた。その中には、シーリングの中で科学技術研究費を外すという御努力もされて、ここまで、大事なことだから、一番大事なことだからシーリングで外れているわけですね、科学技術。そこは私は大変評価しているわけです。
その御議論があったにもかかわらず、今回行政改革推進法のふたを開けてみれば、何らそうした今までの、あるいは国際的なこの動向、あるいはこの問題についての今までの積み上げというものが顧みられない形で一律に、国立大学法人と明記してありますよね、あるいは独法の中で科学技術は除くというのはどこ見ても出ていないですよね、法律上。
今後あれですか、逆に言うと、今日でもいいんですけれども、あの法律はあるけれども、科学技術部門については、あるいは研究教育部門については、あれは総枠だから、きちっと文部科学省ないし中央省庁の中で研究については別枠で扱うという、そういう議論があるんですか。であれば、ここで今日確認答弁をしていただければ私は安心して引き下がるわけでありますけれども、改めて。
○政府参考人(清水潔君)
いわゆる行革推進法に関してでございますけれども、全体として総人件費改革ということで、やはり全体として簡素で効率的な政府を実現するために公的部門全体のスリム化をどう図っていくかという趣旨でこのような形の整理がなされ、私どもとしても公的部門の一員としてしかるべく対応せざるを得ないのかなと、こういうことで必要であろうということでございます。
ただ、先ほど小田局長の方から申し上げましたように、あくまでこれらについては、それを基本としてそれぞれ人件費の総額を、五%の削減を取り組むというふうなことでございまして、それぞれの法人ごとに様々な工夫というものが、あるいは効率化への努力というのも必要になるのかなと、このように考えております。
○鈴木寛君
これ行革法の、行政改革法の五十三条で人件費の総額抑制となっていますね。私たちも行政改革は必要だと、そして税金をより有効に使ってほしいと。それは当然国立大学法人に対するもの、あるいは独立行政法人の研究部門に対するものとて、税金を有効に活用するということの精神は、ここは共有します。しかし、問題は人件費の五%抑制となっているんですよ。私はここが特に問題だと言っているわけです。
研究というのは人だという議論をずっとしてきました。ほかにもへずれるところ一杯あるわけですよね。例えば、国立大学でいろいろな設備あるいは施設ができています。昨日も正に入札の改善という話をさせていただきました。きちっと指名競争入札を一般入札にして、しかも電子入札にすると入札率が八五%になる。私も大学のいろいろな入札の状況、あるいは施設整備の状況知っていますけど、相当、かなりカットできますよ、まだ。だから、本当にきちっと、例えば大学の学長さんに、経営努力はしてくれ、税金を有効に使ってくれと、これは求めていいと思います。
しかしそれは、どこをへずってどこを厚くするのかというのは、本来、学校長あるいは法人の長に任せるというのが国立大学法人法の趣旨であり、独立行政の趣旨であったはずです。そういうことでお任せをすれば、ほとんどの大学の学長さんは、人が大事だ、これは研究においても教育においても人が大事だ、ここは守ると。そして、例えば施設の分とか、いろいろな無駄を五%捻出をしてきますからと、あるいは自分で民間から寄附なりなんなりを集めてきますからと、こういう経営努力になる。これが私はこの五年、十年進めてきた議論の行き着くところだと思うんですよ。にもかかわらず、今回の行政改革推進法は人件費と明記して、それを五%削れと言っているところはおかしいんじゃないかと。
それを、今の御答弁で、しかるべき対応をせざるを得ないという御答弁は、これは大変残念であります。少なくともそこに座っておられる方々からは、残念、今回の行政改革推進法は極めて遺憾だとか、少なくとも、結論はまあそれはしようがないかもしれませんよ、小泉さんがむちゃくちゃだということは私も分かっていますから。しかし、そこに座っておられる方はやっぱり今回の行政改革推進法の、特に人件費という形でねらい撃ちをしてきたそこの五%、今日は教員の話はしませんけれども、要するに明らかに文部科学省ねらい撃ちされているわけですよ。というのは、文部科学省が一番人にかかわることをやっておられる、知恵にかかわるところをやっておられるからというところもあるんですけれども、ここをどう思われるかと、こういうことを伺っているわけであります。
要するに、反転の攻勢ののろしを上げないと、今の局長の御答弁で、しかるべき対応をするんで、これでずるずるずるずる押し込まれたら、これ何のために我々は今日のこの研究交流促進法、要するに大型施設を造って、これからもう一回アメリカやヨーロッパに追い付いていくぞと、追い越していくぞ、こういうことをやろうと言っているその根っこの問題が、施設造ったって、使う優秀な技術者あるいはそのサポートをする人あるいは国際的な学術連携する人、それいなかったら宝の持ち腐れになっちゃうじゃないですか。
もう一度御答弁をお願い申し上げます。
○国務大臣(小坂憲次君)
私から答弁させていただかないと御納得いただけないようなところなんですが、今局長が答弁申し上げたように、やはり政府の一員としては一度切り詰めるという大原則の下にすべてを見直すという姿勢も必要だと、こういうことを代弁してもらったと思っているんですね。
すなわち、外部委託等に回せるものがないかどうかもう一度精査してみるという意味からも、まずこの行革法の精神にのっとって真っ正面からそれに取り組んでみる。しかしながら、徹底的に見直した中で、その結果としてやはりこれ以上は難しいということになれば、これはまた財政当局又は行革担当の皆さんとの話合いというのはあると思うんですね。
単に人数を切れと言われているわけではないわけですから、人件費ということで費用の効率的な活用をしろということでございますので、そういった面で見直しながら、先ほどの正規雇用云々の話もございました、そういった部分で必要な支援、人員の確保をするとともに、同じような支援の体制であっても、外部委託によって経費化ができるような部分についてはそういった形を取るということも踏まえながら努力するということが必要だということを私どもは考えているわけでございまして、鈴木委員の御指摘は非常によく分かります。現場の実態を踏まえての御質問でございますからそれは非常に大切にしたいと思いますが、そういう中で、政府の一員としての在り方として、まずもって各大学に対して徹底的な見直しを行っていただくという意味でこういった目標を掲げて、それに努力をしてもらう。
そういう中で、当然のことでございますが、人件費と言っているわけでございますけれども、同時に設備その他の合理化ということを独立行政法人として、大学法人としてやっていただくという中でまたそういった話も出てくればまたそれも検討をしていかなきゃいけないことにはなると思いますが、まずもって人件費というものが非常に大きなウエートを占めている今日の財政状況の中で経費を削減していく上では、やはり人件費というのは恒常的に掛かってまいりますので、この部分について見直しをするという意味で、この目標に従って我々として最善の努力をするということが今求められている、このように認識をしているところでございます。
○鈴木寛君
そのやっぱり認識が違うと思うんですね。だって、今、科学技術は最も重要で、それは人で、それをやっぱり増やしていかなきゃいけない。今まで増やしてこられたわけでしょう。いや、ここは本当頑張られたと思いますよ、平成十七年から四万人増やすというのは大変なことですよ、それは、世の中全体として。それをプラス五パーとマイナス五パーじゃ、これ一〇%違いますから。
今現に、例えばオーバードクターの問題もあるわけです。要するに、PhD取って卒業しても、結局PhDに見合った職業に就けない人が四割いるわけですよ。結局、一〇パー、一〇パーでその差が開いていけば、それがその上の一〇パーに行くのか下の一〇パーに行くのかで、PhD取ったけれども、博士取ったけれどもという人がちゃんと博士にふさわしい仕事に就けるのか。それが毎年累積していくわけですから、人件費というのは続くものだと、おっしゃるとおりですよ。だからこそです。彼らは一回卒業して、しかし研究環境の場から、あるいはその知的環境の場から離れたら、これだけ日進月歩で進んでいる科学技術にもう一回リターンするということは無理ですよ、これ。
したがって、そういうふうなポストといいますか、環境というものをつくり続けていかなきゃいけないんじゃないでしょうかと、こういうことを議論していて、もちろん大臣のお苦しい立場は私も分かりますけれども、やはり文教科学委員会でこういう議論をしておかないと。
そして、是非今日、与野党を超えたすべての委員の皆さんとしたいのは、もう小泉さんのいる間はしようがないと思います。しかし、幸い九月に替わるわけですから、今から準備をして、次のポスト小泉では、もちろん大臣自らがポスト小泉に名のりを上げていただければ私は選対事務局長をやりますんで、是非頑張っていただきたい。そのことも含めて、やっぱりこれからは知的立国なんだ、科学技術立国なんだ、やっぱりそのためには人なんだと。ここの部分は、せっかくシーリングでやったように、人の部分についても総枠をやっぱり増やしていくと、こういう新しいビジョン、マニフェストを是非、今年はいずれにしても国のトップが替わるという時期でありますから、これ是非今日から文部科学省から発信をし続けていただきたいと、そのことだけはですね。
この行政改革推進法も、しかるべき必要があればこれはもう見直していく、あるいはそういう議論を提起していく、あるいはそういう材料ぐらいは少なくとも提供していくということを是非お願いを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小坂憲次君)
鈴木委員御指摘の気持ちはよく分かっておりますし、またそうすべきだということも、私どももそのとおりだと思っております。
しかしながら、人件費ということでありまして、国立大学法人の役員給与、そういったものを見直す中で、リサーチャーとしての待遇というものはしっかりと維持をし、また人数的にはしっかり確保していく、あるいは増強をしていくということを考えつつも、同時に、全体の人件費を見直す中で役員給与というものがこれで適切なのかどうか、そういう基本給の在り方も全体的に見直すやはりいいチャンスだと思って、前向きにとらえてそこに切り込んでいくということがやはり今の行政改革全体の流れとして私は必要だと思っております。
その中で対応していくということを先ほど申し上げているわけでして、決してリサーチャーの待遇を悪化させるというようなことでこの方針を実施しようとしているわけではないということも併せて御理解をいただいて、まあ立場の発言だということをおっしゃっていただきましたが、立場というのはそういう意味の立場として私は努力をするということを申し上げているわけでございます。
よろしくお願いします。
○鈴木寛君
是非頑張っていただきたいと思いますし、本当により質の高い人を数多く、きちっとその研究に従事し続けられる環境というのをつくっていただきたいと思います。
それと、もう一点確認したいんですけれども、やはり科学技術というのは、公的セクターの役割というのは非常に重要だと思うんですね。その点についてきちっと認識して、かつ、これも総理始め閣内の皆様方にどうも御理解いただいていない方が多いようですので、この点やはり、こういう世界というのはなかなか、研究というのは不確実性が伴います。市場メカニズムというのは、情報が、完全情報下では、そして常に新規参入、十分に多いプレーヤーの中では最大の神の見えざる手によって社会的な効用を実現をするわけでありますけれども、研究というのはそもそも情報が非対称な世界でありますし、それから、先ほど申し上げましたように、研究者、一人前の研究者、先ほど副大臣もお話し、御経験からいただきましたけれども、やっぱり十年掛かるんですよ。初中等教育からいえば、文部科学省さんもスーパーサイエンススクールとかで高校、あるいは小学校、中学校、そういう意味では三十年掛かってやっているわけでありますから、そういうことも含めて言うと、単なる民でと、こういう話ではない。
もちろん、競争は重要です。競争ということとマーケットメカニズムということはこれは違うわけでありまして、そういう意味で競争はどんどんやらなきゃいけないけれども、単に経済的に、あるいは価格というものでもって成立する世界ではないということは是非きちっと御理解をいただいて、かつ発信、発言をしていただきたいと思いますが、この点ちょっと確認したいと思います。
○国務大臣(小坂憲次君)
御指摘の公的な役割、公がやるべき科学技術分野において役割はどういうものなんだと、こういうことからまず申し上げたいと思いますが、私としては、公的研究機関としては、研究者の自由な発想に基づく独創的な基礎研究、それも特にハイリスクな研究等については、やはりこれは国としてあるいは公的な研究機関としてやっていく必要があるだろうと思いますし、また国家の安全保障の向上やあるいは世界最高の研究機能、そういったものを実現するための国家基幹技術と言われるようなもの、こういったものはやはり国としてまた公的研究機関として取り組まなければ、これの波及効果またそのタイミングとしてもこれが実現困難になってしまいますので、しっかり取り組んでいくことが必要だと。
そんな意味で、先ほど例示したような国家基幹技術はやはり公的研究機関として推進すべきだと思っておりますし、また基盤となるような優れた人材の育成、養成というものは、これはやはり国として取り組んでいかなきゃいけないんだろうと思っております。
こういったものを踏まえて三月末に閣議決定をした第三期科学技術基本計画に盛り込んでおるわけでございまして、総人件費改革などの行政改革の流れではございますけれども、事業の効率化を図りつつも、これらの事業の推進に、今申し上げた科学技術基本計画にあるようなこういった事業の推進に支障が出ないように適切な対処が必要だと、このように認識をいたしているところでございます。
○鈴木寛君
是非その方向で頑張っていただきたいと思います。
今回のちょっと法律に絡んででありますけれども、先ほど来、研究支援体制、オペレーショナルな点あるいは事務管理の両方の補強の観点から議論を申し上げておりますけれども、とりわけ国立大学がそこは大変なんですね。いろいろ個別に見ますと、一方で独立行政法人といいますか非営利団体、ここは少し事務管理の方が若干多いかなと、相対的にですね、いうふうに思います。
そうすると、いわゆる公的な研究機関と大学が連携をして、そして、それでその事務管理能力とか事務管理スタッフとかを共用していくといいますか共有していくというか、現に例えば筑波なんかはかなりいわゆる国研系と大学系がジョイントプログラムをやって、そういう中にはいい意味で事務ワークにたけた方が国研系にいらっしゃって、そういう方が予算のドキュメンテーションとかそういうことをやっていただくんでうまく回っているというようなことも私も見てまいりましたので、そういう意味で、これは文部科学省の枠もちょっと超えますけれども、いわゆる公的な研究機関と大学というものが、そういう単に施設だけじゃなくて、そういう人的体制も共有をするということが、あるいは連携をするということがもうちょっとうまくいったらいいんではないかなと。そういう工夫、まあ厳しい中ですから、いろんな工夫、知恵を出していかなきゃいかぬと、こういうことだと思いますので、私はそういう御提案を申し上げたいんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(清水潔君)
先生御指摘のように、公的機関もさることながら、例えば大学、同じ国立大学法人間の中あるいは公私立の大学と、様々な形で様々な分野で共同、連携の試みは既になされつつあると、こういう状況であると思います。
それで、御指摘の大学等が他の大学や公的研究機関と連携共同することということで、例えば研究支援体制が強化された形で開発が推進できるのではないかというのは、ある意味では研究基盤を強化するという観点から重要な御指摘ではないかというふうに思っております。
システム的には、先生御案内のように、大学共同利用機関でございますとかあるいは附置研究所における全国共同利用体制というのは正にそういう意味での一つの試みでありますけれども、例えば分野で見ますと、私どもで例えばナノテクノロジー総合支援プロジェクトというようなものをやっております。最先端のナノテクノロジーに関連するような施設設備の外部研究者の利用の機会を拡大するというようなことで、例えばいろんな観測、評価等の高度な技術支援を行えるようにということで具体的に予算化いたしまして、大学あるいはいわゆる研究独立法人にもそれぞれ、それぞれの特色を生かしながらナノテクノロジーの研究者を、言わば省庁の枠、大学、公的研究機関の枠を超えて支援するように、そんな仕組みもスタートさせているところでございます。
また、ちょっと今般の法改正でございますが、当然のことながら、特定先端大型研究施設を共用に資するということであれば、正に登録機関に期待されるのは、研究者に対する支援、相談という機能が非常に重要な役割を果たすわけでございまして、その意味では、正に研究支援体制の整備というのにもつながっていく、このように考えておりまして、これと合わせながら施設の共用の促進するための必要な情報の提供など、そういうことも進め、そして研究支援体制の充実にもひいてはつながっていくような、こんなことを考えたいというふうに思っております。
○鈴木寛君
それは結構なことなんですけれども、私の御提案は、今回は要するに施設依存型といいますか、大型あるいは特殊な研究施設を伴う研究プロジェクトについての研究交流促進ということについては大きな一歩を、それはマネジメントの点でも今おっしゃったように一歩踏み出していると、これは評価しますと。しかし、研究には必ずしも大型施設あるいは施設は共有する必要はないと、各研究室が持っている施設でできると。しかし、先ほど申し上げたように、正に例えば国際シンポジウムをやる、そのマネジメントをやる、あるいは人的交流をやる、あるいはそういうふうないろいろな研究室が正にコラボレーションしながらやると。そうしたときのいろいろなマネジメント業務があります。施設がなくても、やっぱり今回のフレームワークが活用できて、そしてマネジメントがきちっとワークすることによって複数の研究機関が正にうまくコラボレーションできるようなことにも、その次の研究交流促進政策というのは意識して踏み出してくださいと、こういうことを御提案申し上げたかったわけでありますので、是非この点は御検討を、違うタイプの研究にもこの思想とこの方法を導入をしていただきたいんです。こういうことでございますので、よろしくお願いしたいと思います。大分時間もなくなってきましたので、今の点はもう御答弁は要りません。
次に行きたいと思いますが、今回、先端の大型研究施設に特定高速電子計算機、正に次世代スパコンが追加をされる、こういうことになります。これは私、いいことだと思っています、まず。
コンピューターについては、私もその昔担当しておりましたけれども、ずっと戦後ナショプロで、そうした新しい世代の、次世代のそうした大型計算機をナショプロで国が取り組んでいくという、こういう時代がずっと続いたわけであります。しかし、この十年ぐらい、九五年、特にこの十年ぐらいは、ややそのナショプロというものに対するどこからともないヘジテーションがあって、そして民間に任せると、こういうことで来ました。経済産業省なんかが少ない予算でちまちまはやっていたかもしれませんが、やはりなかなかそこは額が足らないという中で、私は、久しぶりに国が主導して、官主導ではなくて、正にナショナルという意味で計算機開発を行うということはいいことだと思っておりますが、やっぱりこういう判断に至った背景、あるいは、今回の改めてナショプロ、ナショプロという言い方をするのかどうか分かりませんけれども、また名前もちょっと考えた方がいいと思うんですけれども、今までのナショプロとは様相が違いますから、私も新しいネーミング考えたいと思いますけれども、その背景、ねらいについて御説明をいただきたいと思います。
○副大臣(河本三郎君)
鈴木先生、次世代のスーパーコンピューターは、もう御案内のとおり、第三期基本計画の国家基幹技術、国家プロジェクトの一つに入っております。自国でスーパーコンピューターを開発できるのは日本とアメリカだけでありまして、これまでスーパーコンピューターの国家プロジェクトとしては、平成九年から十三年度にかけて地球シミュレーターを始め、筑波や航空宇宙研究所等で開発が行われてきました。
地球シミュレーターは、平成十四年三月の稼働以来二年余にわたって計算速度ランキングで世界一を保ってきた、その成果は高く評価されておりました。ただ、その後アメリカに抜かれて、今は随分ランクが下がったということも聞いておりますが、地球シミュレーターの後継計画によって、関連する技術及び人材の育成、継承、発展を図って、この分野で世界的な地位を確保していこう、取り戻そうというのが一つのねらいでもありまして、次世代スーパーコンピューターの開発を開始することにいたしました。
○鈴木寛君
我々の委員会も筑波のスパコンは見させていただきまして、正に今お話あったものは見てきたわけでありますが、是非今回のスパコン開発も頑張っていただきたいなと、こういうふうに思います。
それで、私は、こういう民間主導ではなかなか取り組めないナショナルプロジェクトというのはやはりある、そういう分野はあると、こういうものはきちんとやっていくべきだと思っておりますけれども、スパコン以外にどういうものがあるんでしょうか。
○政府参考人(清水潔君)
御指摘のナショナルプロジェクトでございますが、例えば、今回の法案で御審議をお願いしておりますように、先端的な科学技術の分野において多様な研究等に共用させるということで最大限の活用を図っていこうというものとしては、お願いしている次世代スーパーコンピューターに加えてエックス線自由電子レーザーというようなものが当然考えられる、考えておるところでございます。
また、これに限らず国家的な大規模プロジェクトとして、安全保障の観点などから集中的に投資すべき技術として位置付けられた国家基幹技術の例としては、海洋地球観測探査システムでございますとか高速増殖炉サイクル技術であるとか宇宙輸送技術とかがあるわけでございます。
○鈴木寛君
いずれも今までは欧米との競争でありましたけれども、これからはアジア諸国、あるいは宇宙なんかはロシアなんかが以前から強いですけれども、あるいは中国などもですね。そういう分野は正に本当に国際競争になってきているわけでありまして、我が国も是非こうした分野は頑張っていかなきゃいかぬというふうに思っておりますが。
次の質問は、これ、民に任せた方がうまくいくもの、それからやっぱりナショナルな単位でやった方がいいもの、今はその議論をさせていただいている。それからもちろん、と同時に、アジア諸国との連携、例えば環境、地球シミュレーターの話などありましたけれども、これだけ黄砂の問題とかいうことになってくると、これは日中間で本当に協力して、そうした気候あるいはそうしたものについての環境とかいったことは、これ、恐らくアジア諸国の協力でやった方がいいんだと思います。それから、この前、この前といいますか先国会、先々国会で議論してきたITERみたいな、これは正にグローバルで国際協力をしていくと。
こういう幾つかの類型があると思いますけれども、これ、それぞれどういうポリシーで、いずれも大事だというふうに思っておりますけれども、どういう、それこそ仕分をしていくその基本理念、それからそういうデザイン、ストラテジーというのをやっぱりきちっとだれかが見据えて、これは民間で頑張ってもらおうとか、これはアジアと協力をしようとか、これは国際協力だとか、これは先ほどおっしゃったようにアメリカと日本しかないから、もうスパコンは、ここはコアコンピタンスで頑張るんだとか、そういうことをやっぱりきちっとやっていくということが重要だと思いますが、その責任をだれが実行するのか、また、これからどういう具体プロジェクトを我々注目をしていかなければいけないのか、あるいはそれを支援をしていかなければいけないのか、そういうことについてお話をいただきたいと思います。
○国務大臣(小坂憲次君)
大分議論をしていただいておるわけでございますが、今お話をいただきましたスーパーコンピューターの開発等においては、コンピューター開発というのはハードウエアの開発だけでなくソフトウエアの開発が非常に重要でありますし、また、スパコンだけではなくて、先ほど説明のありましたように、エックス線自由電子レーザー等の知見とデータを高速でこのスパコンを使って計算することによって複合的な、こういった基幹技術を複合的に使うことによってより大きな競争力を持つことができる、創薬分野やいろんな分野に応用できると、こう考えるわけでございます。
そういったそれぞれの分野についてどのような戦略を持って臨むかということは、今御指摘をいただきましたとおり、じゃ、その対象となる分野が今我が国は国際動向の中でどのような位置付けにあるのかということをまず把握することが一つ大切でございます。それに対する正しい評価を持つこと、そしてそれに対する長期的な展望を持つ上で、その上で、それでは競争と協調、あるいは国際の協力あるいは支援といった、どのようなアプローチ、どのカテゴリーのアプローチを相手国との関係に応じて使い分けるかということが今御指摘の部分なんでございますね。
それにつきまして、私どもの科学技術・学術審査会という私どもの審査会の方が、審議会が国際化推進委員会というものを持っておりまして、こちらが平成十七年一月に報告を出していただいております。
そこにおきまして、それでは競争と協調はどのようなときに使うかといいますと、まず、競争関係を前提として、国際活動で行うアプローチとしてこれを使っていくわけですが、最先端の科学技術・学術活動等の場合に、産業上の国際競争が激化している場合、あるいは将来我が国が優位を拡大したいと思っているような場合、この場合には競争のアプローチが求められるわけでありますけれども、一方、競争関係にあっても、関係国が協調により人材や資源を投入して、相互に利益を高める視点というものを持っていくことがやはり必要でありまして、そういった意味で競争と協調のバランスを取った国際活動というものを意識していかなきゃいけない。
実施段階のスピードとフレキシビリティーを重視して果敢に取り組んでいくことも重要でありまして、そういった意味で、競争と協調というのは優位を拡大したいという場合であって、しかしながら同時に、そこで得られた知見を国際協調によって広く拡散させると、科学技術・学術活動全体に拡散させるという意味合いも常にバランスの意識を持って取り組まなきゃいかぬと、このようにアドバイスを受けております。
また、協力という場合にどのようにするかということについては、これは競争関係を前提としないで、相手国と相互補完的な提携をする場合のアプローチとして考えておるわけでございますが、この当該科学技術・学術について、相手国と我が国との間の産業上の競合関係にない場合、あるいは相互に共通した課題を持っている場合、例えば感染症対策としてのSARSだとか鳥インフルエンザの対策等のそういった場合ですが、世界共通の中長期的な課題について、科学技術・学術の能力資源等を相互補完的な関係にして協力することによって取り組んでいく、イコールパートナーシップによる互恵的な関係ということであります。
また、支援というのは、我が国が優位性を持っている分野において、主として開発途上国が対象となりますけれども、今御指摘がありましたような中国の黄砂の研究等こういったものも、環境分野等においてはこれはむしろ支援をしてでも世界的な利益を享受するということが必要な場合、そういったアプローチをしていくということであろうと思っております。
いずれにしても、これらのいろいろな取組について、各省との間で調整をしていくわけでございますが、司令塔としては、国の科学技術の総合戦略の策定ということに対しては総合科学技術会議が担っておるわけでありまして、個々の研究プロジェクトなどこういった分野について、総合戦略を踏まえて文部科学省としても取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
○政府参考人(小田公彦君)
もう一つの御質問の、具体的な研究プロジェクトをどうそれぞれ構想されているのかという御質問でございますので、補足的に説明させていただきます。
まず、競争と協調ということにつきましては、例えば地球シミュレーター計画など、スパコンそのものは国際的に激しい競争を行っている分野がございますが、この利用の段階におきましては、特定の共同研究課題に対して海外研究機関の利用も認めて、むしろ協調を図りながらやっておるといったような例もあります。
また、協力につきましては、これは多数の例がありまして、国際宇宙ステーション計画あるいは新興・再興感染症拠点形成プログラムなどでは中国、タイ、ベトナムといったようなところから去年から開始いたしておりますし、全地球観測システム、統合国際深海掘削計画といったものは正にこれから活発にやられるものでございます。
また、支援につきましては、ODAなどを通じまして、各国の大学に対する支援、つまり人材養成支援といったものについてやっているものでございます。
○鈴木寛君
是非頑張っていただきたいと思うんですけれども、科学技術政策というのは難しいですよね。まあ、これ評価も非常に難しいと思います。単に何か国際競争で、例えばスパコンでいえば抜いたとか抜かれたとかということが報道とかは、我々もそういうことに関心が行きがちなんですけれども、例えば、仮にそういう意味での研究成果で負けたとしても、私は、こういうプロジェクトの最大の成果は、優秀で有為な人材が育った、あるいはそういう人たちのネットワークができたと、やっぱりこれだと思うんですね。これがあれば、じゃ次のステージになったときにまた今度は抜き返すと。
要するに、そういう世界のリーグの中にやっぱり居続けるということがこれ非常に重要で、余りその一回ごとの勝った負けたということに行かない方がいいと、こういうことも思ったりもします。
ですから、かつ、科学技術というのは、それが本当にどういう意味があるのかという、しかも短期的意味、中期的意味、長期的意味、それからそれが知的財産につながるつながらない、あるいは人材育成につながる、非常に複合的で複雑なものであります。それを御担当されるというのは大変だと思いますけれども、正に研究分野の領域も広がっていく、しかし総合的かつ戦略的にやっていかなきゃいけないと。例えばテーマの設定も、バイオだと思っていたらまた今度新しいものも出てくるかもしれないし、ナノテクとかいろいろなことも出てきます。
そういう意味で、本当に国内外の英知を結集して、正しい判断、まあ何が正しいかも難しいんでありますが、しかし一つだけ明らかなことは、これ、単なる大衆討議あるいは劇場民主主義、あるいはそういうふうな短期間の流れに流されて決めていいものでは全くないと、こういうことです。特に、小泉政権になっての心配は、そういうところに非常に流されて、本当に国家の基盤になる科学技術政策というのが非常に難しい局面にあると、こういうことを私は懸念するわけであります。
それで、日本の強いところ、弱いところあります。非常に確定した分野におけるそのレベルというのは、これはやっぱり日本は相当高いレベルにあると思いますけれども、新しい研究領域は何なのかと。あるいは、ふくそうする研究領域間でどういうふうにテーマ選定あるいはウエート付けあるいは新しいそういうふうな学者の集まりといいますか、それを含めるコミュニティー、その知的研究コミュニティーを新しくつくり上げていくとか、やっぱりこういうところがどうしても、今科学技術総合会議のお話がございましたが、そこに出ておられる先生も私も何人も存じ上げていますけれども、その分野ではすごい先生ばかりです。
しかし、これはどの先生もしようがないと思いますけれども、じゃ隣の分野について評価できるんだろうか、あるいは、今はメジャーではないけれども今後大事な分野というものについて、そういう知見がおありになるかないかはそれはまた別の話でありまして、そこはある意味で今現在は本当に個々の委員の先生方の個人的才覚といいますか、識見といいますか、そういう立派な方が会議のメンバーになっておられますけど、これもう少し、個の力のみに頼るんじゃなくて、適切なテーマ設定とかあるいは資源配分とかあるいは人材育成計画、こういうことを、プロジェクトマネジメント論も含めて、そういう領域の設定とか分野の設定とか資源投入とか、あるいはそういうプロジェクトのマネジメント、例えばバイオのRアンドDのマネジメントと情報のRアンドDマネジメント、全然違いますね、これ。そうすると、ITでうまくいった方式、政策をバイオに導入しても全然これうまくいかないということになります。
それから、当然、臨床と基礎研究、これまた違う。それから、その間のTRみたいな話も違っていくというようなことを私はもう少し、何といいますか、層を厚くしっかりと遺漏なきようやっていくためにはどうしたらいいか、これは自問自答も含めて思っているわけでありますけれども、是非こういう分野に、更に言うとコンセンサスの醸成、それから世論の支持を獲得する、当然民主主義の国でありますし、貴重な税金をこれは公的分野は使い続けていかなきゃいけないわけで、そういう意味でのきちっと理解を求めるということも含めてこれ大変大事な課題だと思いますけれども、この点いかに取り組んでいかれるかをお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。