NO.40 EURO-ASIA Economic Forum に出席して | |
2005.11.21
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EURO-ASIA Economic Forum に出席して EURO-ASIA Forum西安で開催 11月9日に行われた元NEC会長の関本忠弘先生の講演会は、お陰様で、本当にすばらしい会になりました。私は、講演会が終わった午後、成田に向かい、11日まで、中国西安で行われました第一回EURO-ASIA経済フォーラムからお招きを受けて出席してまいりました。 中国ナンバー2の全人代委員長(中国の国会)の呉邦国氏が事実上のホストを務め、タジキスタンの首相、ロシア国会副議長、モンゴルの前大統領、カザフスタンの前首相、ウズベキスタンの外相、キルギスタンの経済財政相を含む各国の閣僚級40名、及び、中国側から中国開発銀行総裁、上海協力機構総裁、外務副大臣、省の総書記、省長、西安市長、SINOPECの副総裁、中国CRPの総裁ら、副大臣はじめ外務省高官、国策企業の総裁クラス30名ほどが集まり、アジア各国からの聴衆は800名、現地参加者、記者、スタッフ、ボランティアを含め1500人という大規模なフォーラムでした。日本からは、私と、日本政策投資銀行の方が招待をされました。日本からの参加者は、私の招聘を聞きつけて外務省から派遣された職員の併せて三人しかいませんでした。 私は、今年の8月に行われた日中政治・経済フォーラムで、私のスピーチとパネルディスカッションを、今回の主催者であるBOAOフォーラムのトップでいらっしゃるLong Yongtu先生が聞いて下さっていたことと、以前からおつきあいの深いCITIC(中国国際投資信託公司)などからのご推薦もあり、フォーラムのスピーカーとパネラーとして、参加要請を受けました。 今回の主催者であるBOAO Forumは、アジアにおけるダボス会議をめざし、従来から活動を続けており、2002年には、海南島で行われた、アジア経済フォーラムに、小泉総理も出席されたことを覚えておられる方も多いと存じます。今回は、それを少し拡大して、Euro ASIAフォーラムとして、バージョンアップしたものです。 ユーラシア大陸全体に拡大し、ウクライナ・イラン・ロシア・中央アジア諸国などが、メイン・プレイヤーとして加わりましたので、中国語・英語・ロシア語が、今回の公用語でした。 こうした国々の間の相互経済協力の促進として、特にエネルギー・金融・観光などが、メイントピックとしてとりあげられました。以前より、中国・インドにおける産業革命と情報革命の同時進行について追いかけてきたことと、通産省でエネルギー政策を担当していたこともあり、私は、エネルギーのセッションに、スピーカーとパネラーとして参加しました。 アジア諸国のエネルギー政策の要人たちと親しく交流 私は、イランの石油相、タジキスタンの資源第一副大臣、モンゴルの資源副大臣、ウズベキスタンの国策エネルギー会社総裁、パキスタンの大統領顧問、SINOPECの副総裁、中国CRP総裁の皆さんと一緒に議論に参加しました。私からは、日本が世界に誇る省エネ技術、石炭クリーンエネルギー技術、太陽発電技術、ハイブリッド車、燃焼電池の技術、石炭、原子力などの発電所の建設・運営技術に関する協力、又、省エネの為の政策ノウハウ人材の提供の可能性について提案をいたしました。 他のスピーカーからは、各国のエネルギー開発生産体制の現況、特に、中央アジアの国々が、着実に生産体制を充実させてきている旨のスピーチがありました。私のスピーチに対して、Long議長から、私鈴木の参加によって議論の幅と深みがましたとの高い評価をいただき、又、イラン・パキスタンの大臣などからも大変に「Informative(参考になった)」だったと、握手を求められ、スピーチ原稿を送ってほしいということになり「メル友」になりました。イランはじめ、中央アジア、モンゴルのエネルギー政策の最高責任者たちと親しくなれて大変有意義でした。 見習うべき中国外交の徹底した周到ぶり しかし、今回の私にとっての最大の意義は、中国外交の周到さと奥深さを肌で実感できたことです。(同時に、日本外交への危機も募りました。) BOAOフォーラム自体は、NGOですが、当然ながら、中国外務省の影響下にあります。今回、アジア・ダボス会議に、ユーラシアを加えた理由は?今回、西安で開催した理由は?今回、エネルギーと観光をメイントピックとした理由は?これらの問いに対する答えはただ一つ。すべては、ユーラシア地域における油田開発を有利に展開していくためです。 私も、当日のスピーチで述べましたが、これからの中国経済の最大のボトルネックは、エネルギーと環境です。 1990年には、120%あった中国の石油自給率が、93年に石油の輸入国に転じ、今や40%が輸入、2030年には、石油需要80%は、輸入に頼らざるをえません。その為、中国は、海外における油田採掘権の確保に、国をあげてとりくんでいる最中です。 今回のフォーラムも、まさにこの国策達成の為に、イラン・中央アジア・ロシア・ウクライナなどの石油埋蔵国にターゲットをおき、しかも、西安を開催地とすることで、シルクロードを参加者に特別に意識させ、往時のように相互交流を復活しようと歴史にも訴え、一方、中国人観光客を計画的にシルクロード観光に送り出し、まずは観光を通じて、経済的利益を先にシルクロード諸国に提供し、加えて、相互利益・イコールパートナーシップを強調し、中国へのパートナーからの信頼を高める場として、アジア・経済フォーラムを再編してこうということです。さらに、そうしたベースの上にたって、プロジェクト金融もパッケージで議論し、このフォーラムをキッカケに西安に両国のトップが集まり、中国系企業と当事国との油田の共同開発プロジェクトをまとめようというのがシナリオです。 中国側の意図は明白ですし、私も、それを承知で、中国の資源外交の熟練ぶりを、この目で見に行ってみようというが第一、同時に、中国はじめ参加国に対して、日本の省エネ・新エネ技術のレベルの高さを再認識してもらう絶好の機会と思って参加しました。 今、中東はじめ世界の石油利権をめぐっては、中国は、米国やインドとライバル関係にあります。米国石油利権の申し子であるブッシュ政権のイラクへの介入も、当然、石油がらみであるわけですが、濃厚な人間関係構築による中国外交の方が、力づくの米国外交に比較して、相当うまくやってきているなあいうのが率直な印象です。 500人を超える大宴会やパワーランチなどに出てみると、如実にわかるのですが、私は、イランの石油大臣と同じ円卓でしたが、すでに中国と関係当事国の人とは、トップから担当者レベルに至るまで、相当しっくりいっています。今回のフォーラム開催によって、その絆が、あちらこちらで深められているようでしたし、いくつかのプロジェクト交渉が信頼にみちた談笑の中で、かなり進展していっているようでした。 「会議は踊る」ではありませんが、まさに唐の時代から積み重ね続けてきたコミュニケーション外交のノウハウの蓄積を存分発揮し、そのすさまじさをまざまざと見せつけられた二日間でした。 大宴会後は、外国からの参加者数百名を、各国首脳から担当者までを、マン・ツー・マンでアテンドして、昨年出来たばかりの、大唐芙蓉園(昨年、数百億円を投じて作られた唐時代のテーマパーク)を、貸し切り、参加者が回遊・散策を楽しみ、その中の劇場で、唐時代とシルクロードをテーマにした、オリジナルミュージカルまで準備していたのには舌をまきました。 まさに饗宴=シンポジウムと歓迎の極意を見せつけられました。参加者のすべてが扁桃体を大いに刺激され、まさに脳裏にやきついた一大スペクタクルでした。私も、改めて外交の真髄というものを勉強させてもらいました。 つい最近、インドにかたむきかけていたあるイランの油田採掘権を、中国がまきかえしたというような話を少し前に聞いていましたので、その本当の理由が改めてわかったような気がいたしました。 わが国も政・経・学・文化・メディアの連携によるソフト外交展開の体制整備が急務 私は、ふと、20年前、通産省に入省仕立ての頃のことを思い出しました。当時は、日本も国益の為に、政府と民間とが一体となって協力するという雰囲気が残っていました。そして政治リーダーは、もっと思慮深く、したたかでした。しかも、昔は、各国の人脈に食い込んでいる感じがありました。しかし、今は、外交自体が稚拙になっています。政府と民間の連携も乏しくなり、二重三重であるべき外交ルートもすっかり細くなっています。 民にとって、頼りになる政府から、どうでもいい政府になり、今では、話をぶち壊す迷惑な政府になってしまいましたので、当然のことだと思いますが、今の日本外交に 老獪さや周到さのかけらも残っていません。 今回、改めてわかりましたが、中国は、本音では、日本の省エネ・新エネ技術、発電所関連技術、低公害車の技術やノウハウを欲しがっています。しかし、今の日中関係では、国策プロジェクトは、もちろん、省や市のレベルでも、現場担当者同士は日本企業で行こうとの内々の合意ができていたにも関わらず、最終段階で、政治判断により交渉ストップ、や商談キャンセルが相次いでいます。その結果、そもそも日本企業に、声がかからなくなっています。 私個人としては、日中の架け橋として、全力を尽くすつもりですが、やはり、政治トップの言動は重要です。ともかくも、政治、経済、学術、文化などの分野を超えて、しかも、それぞれのトップから若手までが、一同に会して、直面する課題で知恵を出し合い、将来の夢の合作について語り合い、そして何よりもお互いに人的関係を深め合うことの重要性を、改めて痛感した2日間でした。 又、日本のメディアで、どれだけ今回の欧亜フォーラムのことが報道されたのかわかりませんが、3年前は、小泉総理の参加もあって大々的に報じたボアオ・フォーラムの動向をフォローし続けないのでしょうか? 急速に進む日本の孤児化 同じ日、胡錦涛主席は、ブレア首相を英国に訪ねています。実は、外交的勝負は、どんどんつきつつあります。日本は本当に、極東の孤児になってしまっています。 もっともっと世界の各地で何が起こっているのか、政治とメディアが学ばねばならない。そして、外交を気分で行うのではなく、もっともっとしたたかにならねばなりません。結果が明らかになってからでは遅いのです。 国際外交のしかるべき場が、どんどん日本抜きでおこなわれるようになっています。このことは大事なニュースだと思います。理由は簡単です。もはや日本は貿易大国ではありません。すでに、国際貿易の世界では、中国に日本は、抜かれています。次は、GDPであり、金融です。あと10年で、日本は、経済大国のタイトルを中国に渡すことになります。その中国との合作促進をぶちこわす総理を我が国民は選んでいるのです。 通商や経済での挽回が困難ななかで、日本は、その存在感をどう出していくのか、 それは、科学技術をはじめとする知識や芸術文化の分野です。 では、そのことを戦略的にみすえ、必要な投資、人材育成、外交努力を行っているのか?心配は募るばかりです。
海外にでると、環境のこと、エネルギーのこと、経済のこと、教育のこと、通貨のこと、人から意見を求められ、いつも、とても充実した噛み合った議論ができます。しかし、この数年、国内でこうした問題をまじめに考え・議論する政治家は選挙ではあまり評価されません。議論するチャンスすら乏しくなっています。私も、それなりに、一生懸命、社会のことを実地検証し、分析、構想し、提案してきましたが、少しだけ、むなしくなるときもあります。 一方、民間企業では、対中戦略について、大いに議論されているようです。頼もしいことですし、私もいろいろ教えていただいていますが、そうした情報が、どうやら霞ヶ関や永田町で共有されていないことによく直面します。少なくとも、中国やインドに関しては、外務省・大使館・政治家が、不要かといえば、様々なプロジェクトを行うとき相手側には、政府と政治家が関与していますから、こちらも、そのカウンター・パートが出て行く必要があります。日本も、まともな体制を早く構築したい、少なくとも、他がどうであれ、私は、皆様方から信頼され頼りにされる政治家になる為、さらに精進を重ねていきたいと思います。 今回の参加で、中国の首脳陣は、私を日本の有識者の一人としての認識をより深めてくれたような気がいたします。今までのいろいろな形で、中国人脈や中国情報を教えてくださった多くの皆様方のお陰と大変に感謝いたしています。これからも日中との活動をまじめに続けていくつもりです。さらなる、ご指導をお願い申し上げます。 追伸:愚痴ばかりは言っておられませんので、この度、我々は、仙谷由人先生を代表理事に、松井孝治先生を事務局長に、「公共政策プラットフォーム」というシンクタンクを立ち上げました。12月10日に設立記念のシンポジウムを行います。 |
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