すずかんMAGAZINE NO.29 来たるべき総選挙の意味
2003.09.30 

9月20日の自民党(LDP)総裁選挙では、小泉純一郎総理が圧勝再選しました。
一方、臨時国会冒頭で、民主党と自由党が合併し、新民主党が本格スタート
しました。この秋の総選挙では、政党の分裂によるのではなく、選挙によって
なされる政権交代が、日本で初めて成就するのか否かが問われることとなります。

日本政治システムの最大の問題は、民意と政策との連動が切れていることです。
本来、選挙とは民意と政策をつなぐはずのものなのですが、自民党は、彼らの
権益を温存するために、一般民意が選挙を通じて政策の変更に反映されない
ような政治のOS(Operating System)を意図的に維持してきました。新民主党が
目指すのは、過去の政治OSをデリート(除去)し、人々の意思が税金の配分を
はじめとする政策の形成に的確に反映される政治OSをインストールし直すことです。
この2年間は、いわば、旧態依然たる自民党OSの上に、小泉という名前の一見
目新しい Application Software を作動させてきました。結局、何が起こったかと
言えば、OSと Application Software との相性が悪く、たちまちfreezeしてしまうと
いう故障が以前より増えただけでした。故障ばかりしているコンピューターを
使わされて、以前よりも、国民(ユーザー)は大きな迷惑を蒙りました。

入れ替えるべきOSの最たるものが、一票の格差の是正です。2000年6月の
総選挙においては、既に、自民党+公明党の2470万票に対して、民主党+
自由党+社民党の2726万票が上回っています。にもかかわらず、政権交代が
成就しなかった理由は、第一に、野党の候補者の乱立したこと。第二に、
民主党が優位な都市部と、自民党の優位な農村部とで、一票の重さに二倍の
格差があることです。第一の問題を解決するために自由党と民主党は合併を
しました。第二の問題については、我々は人口の均等割による議席配分に
していかなければなりません。一票の重さというものは限りなく平等に近いことが
民主主義の原則であるにもかかわらず、県庁所在地も含めた都市部における
有権者は、民意反映の重要なシステムである選挙制度の欠陥が長年放置されて
きました。長期自民党政権によって任命された判事がすべてをしめる最高裁判所も
一票の格差について違憲判決は出すようにはなりましたが、無効判決を出すには
いたっていません。格差が放置された結果、都市住民は選挙に無力感を抱き
投票に行かなくなりました。低投票率の下では、現在の予算配分の恩恵に預かって
いる建設業・農業従事者と特定宗教団体からの支持があれば自民党議員は再選
することができます。その結果、予算配分は何ら変わらないという悪循環に陥って
います。 民主党は、完全に人口均等割による衆議院小選挙区の区割改正を
提案しています。都市民が、政治OSを変更することの重要性を理解して、次の
選挙に投票していただいたならば、日本政治OSは確実に変ります。

至急、消去しなければならない政治OSの第二は、自民党・官僚・公共事業受注
企業との癒着構造です。この癒着構造が、適切な予算編成を阻んでいます。
今の日本経済が取り組まなければならない課題は、産業構造・就業構造の改革
です。すなわち、大量生産型製造業の減退を、知的産業とヒューマン・サービスに
よって補っていかねばなりません。こうした産業を担う起業家を応援していくことも
極めて重要です。そのためには、予算・税の歳出・歳入構造の抜本的な改革が
不可欠です。これらの産業を振興するために、研究開発費と高等教育費の
抜本拡充を断行しなければなりません。さらに、ヒューマン・サービス業の振興の
ためには、各家庭の可処分所得と可処分時間を増やし、将来への生活不安を
減らしていくことが必要です。多くの国民の民意もここにあります。

にもかかわらず、自民党は、建設業・農林業との癒着関係が強すぎることと、
官僚の縄張りに切り込めないことから、歳出構造の改革を10年間全く行う
ことができませんでした。例えば、英・米・ドイツでは、中央政府が支出する
知的投資(研究開発費と高等教育費の合計)は、公共投資と概ね同程度で
あるにもかかわらず、我が国は知的投資の約5倍もの予算を未だに公共
投資に使っています。(公団分を含めれば7倍になります。)

小泉内閣の二度にわたる予算編成をみても、公共事業の総額は微減したものの、
省庁のそれぞれの局にひも付きになっている公共事業分野毎の配分比率は
例年とほとんど変わっていません。小泉内閣ですら、それぞれの事業毎にへばり
ついている族議員・官僚に結局は屈してしまっていることは数字が素直に物語って
います。小泉内閣であっても予算構造の見直しに関しては、余りにもtoo littleで
too slow だと言わざるを得ません。さらに、医療費負担増、年金不安などに
よって、家計の購買力・購買意欲は大幅に減退しており、多くの民意が
期待する個人消費浮揚による経済再生のための政策運営は全くなされて
いません。

民主党は、従来から、政治家と建設業者と官僚の癒着構造を打破するために、公共
事業受注企業からの政治献金の禁止、官僚が企業への天下りすることを中止する
法案をすでに準備しています。これらのことを実施するだけで日本政治OSの改善は
効果抜群です。特に、適切な予算配分の実現には不可欠です。しかし、小泉自民党
政権はこの点については完全に沈黙しています。

さらに、民主党はマニフェストという政治OSを普及・定着させるべく努力して
います。有権者の皆さんの投票判断をサポートするものです。たとえば、民主党は、
9月19日に発表した次の総選挙に向けたマニフェストのなかで、予算歳出構造の
見直しを我々は公約しています。公共事業費の3割削減、中小企業予算の
7倍増、小児医療の患者負担を1割に軽減、失業率を4%に削減などを明確に
約束しています。一方、小泉自民党政権からは、数値目標と期限を明確に含んだ
マニフェストは提出されてきていません。

以上のように、小泉自民党政権の継続では、今の日本に最も重要な「日本政治の
OS」の入れ替えは全く不可能です。したがって、日本再生OS導入の唯一の方策は、
自民党政権に終止符を打ち、新民主党政権への交代することです。OSの変更は、
多少のリスクが伴うために、今までの日本の有権者は抜本的なOSの入替えに
慎重でした。しかし、最近は、地方政治では、新たなOSで政治が行われはじめた
知事・首長も増えてきています。そうしたことから、いよいよ国政におけるOS
入替えに対する懸念がかなり払拭されてきたと思います。次期総選挙に向けて、
OS入れ替えを求める世論を盛り上げていきたいと思います。益々のご支援を
お願いいたします。