すずかんMAGAZINE NO.27 政治のOSを変えなければ! | |
2003.07.29
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190日の国会が終りました。最終盤は、イラク特措法をめぐり、 皆さんご存知の「大仁田議員vs.森ゆうこ議員」の乱闘を含む 大荒れの国会となりました。天下のフィナンシャル・タイムズも とりあげたようです。全参議院議員が、先週の木曜日・金曜日は、 二夜にわたり、未明の審議・採決となり、心身ともにくたびれ果てました。 こうした国会のなかに身をおきながら、つくづく感じたのは、やはり 日本政治のOS(オペレーション・システム)を変えるければということです。 小泉総理は、「与党による強硬採決の断行と野党の反発によって 生れた乱闘」をセレモニーと称しました。確かに、これはセレモニーです。 解説者としては的確な表現です。今までの伝統的手法を墨守しているという 意味でまさにセレモニーです。しかし、小泉総理は解説だけしていていいの でしょうか? 国政に責任あるものとしては、こうした異常事態にあたって、 正しい法案が可決され、修正されるべき法案がきちんと修正され、間違った 法案が否決されるための政治のOSを創り直す努力こそ、我々の任務だと 思っています。こうしたセレモニーを毎年国会終盤に続けなければならない 政治構造をいかに変えていくか、我々国会議員も真剣に考えなければ なりません。マスコミが評論する紋切り型の与党批判、野党批判も、 セレモニー化しています。与党も、野党も、マスコミも、みな同罪だと思います。 今回のイラク特措法は、まさしく、修正されるべき法案でした。そもそも、今回の イラク特措法案、当初は、民主党も、賛成するか反対するか、判断を迷っていた 時期がありました。そこで、民主党は態度を決定する判断材料は現場にあると いうことで、末松、首藤の両衆議院議員と、若林参議院議員を現地に派遣しました。 そして、この問題のスペシャリストであるこの三人が、先入観なく客観的な目で 判断して「イラクは依然戦闘状態にある」という現状認識をもとに戦闘地域である イラクに自衛隊を送ることは時期尚早であるとの意思決定をしました。その後、 民主党調査団が下した判断が正しかったことは米兵が百数十名なくなったことなど いくつかの事件で証明されましたし、アメリカ軍の司令官までが追認しました。 現状のイラク、即ち、戦闘状態にあるイラクに、しかも、武器利用も認めない 丸腰で、本来、国を守るべき自衛隊員を派遣することの是非を、7月26日の 段階で、一人一人の国会議員に、党議拘束で縛ることなく、無記名で個人の 見識に基づいて投票させたならば、恐らく6・7割の議員が反対に回ったでしょう。 世論調査を同じような結果になると思います。知り合いの自民党議員たちと プライベートで腹を割って話をすると「これだけ状況が変わったのに、自衛隊 派遣ありきで、しかも、小泉政局のために、押し通すのは、確かにひどいよな」と 語っていますし、内心では、そう思っている与党議員も多いと思います。特に、 平和の旗を掲げる党の議員は、全員、反対に回るのが、本当でしょう。 では、なぜ、多くの議員が個人的にはクエスチョン・マークをつけている この法律が、無修正のまま強硬採決までして可決してしまうのでしょうか? その理由は、政治のOSが間違っているからです。今は、国会審議をする 前に、与党は、その賛否を決めてしまっています。そして、その決定を 覆すことはほとんどできません。特に、今回のように、法案を提出した 時期とは、問題の前提となる状況が一変してしまったり、隠蔽されていた 重要事実が判明したとしても、結局、無修正のまま与党は強硬に突破します。 なぜ、与党は修正しないのか? 結局は面子です。面子が潰れるからです。 与党が面子にこだわり、修正に応じないから、野党は、残された対抗策として、 日本では審議時間を浪費して時間切れに追い込めば審議未了・廃案になるので、 法案の成立阻止を狙って時間稼ぎに走る、それでも駄目だと、こちらも面子を かけてガチンコということになります。不毛な悪循環に入ってしまうのです。 「過ちを改むるに憚ることなかれ」という格言がありますが、審議を尽くして、 おかしなことが判明したら、その段階で、きちんと法案修正ができるような システム・ルール・文化が作り上げられれば、少なくとも不毛な強硬採決と 乱闘はなくなります。この与野党の面子剥き出しの悪循環を断ち切ること こそが真の構造改革です。政策決定構造の改革をなさねばなりません。 今回の乱闘劇は、依然として、政治構造の改革を、議員が未だにサボって 着手していないことへの警鐘としてとらえなければなりません。 たまたま、今国会で私が担当した法律案のうち、民法、民事訴訟法の 改正については、それぞれ国会審議を深めることを通じて、衆参委員会の 場で法案の修正がなされました。このことは従来の霞ヶ関・自民党の常識からは、 大変に珍しいことですが、珍しいことが法務委員会では珍しくなくなってきて います。その理由を考えてみましたが、これらの法律を担当するのが、 いづれも法務省民事局でしたが、この局は他の霞ヶ関の官庁と違って、 いわゆる官僚ではなく裁判所などからの出向者がその主力を担っていて、 担当者に妙な面子がないこととも関係しているのかな? とも思いました。 正しい法案修正が行なわれないの理由は、与党・霞ヶ関の古びた面子論が その大きな理由ですが、それに加えて、伝統的な野党もイデオロギーに こだわって実質的な議論に応じてこなかったという歴史が尾を引いていることも 事実です。結局、55年体制が作り上げてきた制度・文化、振る舞いを、 根っこから、変えていかなければならないということです。全ての関係者の 責任です。 私、スズカンは、面子やイデオロギーを捨てて、より日本のため、国民の皆さんの ために、実質的によりベストな判断を国会が下せるような制度づくり、意識改革、 文化づくりに努力を傾注していきたいと思います。その思いを再度強くした国会の 最終盤でした。 |
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