すずかんMAGAZINE NO.22 「政府の暴走、いかに抑えるか?」
2003.03.15 


みなさんご無沙汰しております。スズカンです。固唾を飲む毎日が続いております。
毎朝、CNNやウエブ・ニュースでイラク情勢をチェックして、まだ、戦闘行動が
起こっていないことを確認してから、日々の業務が始まります。スズカンTVでも
7週間連続で、イラク問題を取り上げております。昨年末には、年明け早々にも、
米国による武力行使やむなしの雰囲気ではありましたが、武力行使がないままに、
2ヶ月が経ちました。

この間の感想は、やはり時代の変わり目だなということです。ハードパワーが
圧倒的な影響力をもった時代から、情報やコミュニケーションというものそれ自体
影響力を持つソフトパワーの時代にさしかかっていて、ハードパワーとソフト
パワーが拮抗して、毎日そのバランスが微妙に右に左に揺れ動いているのを
感じます。いろんな人々が、それぞれに知恵を出しながら、あきらめずにいろいろな
努力をすれば、それらは、すべて、何らかの形で意味があるということです。
NGOはもとより、国連の安保保障理事会でも、英国も、仏国も、中間派も、
いろいろと知恵を絞り、提案をしています。私が以前からその重要性を指摘して
いるコミュニケーション外交がまさしく繰り広げられています。その議論の中に、
日本が入っていないことが、残念です。我々日本も、対米追従、イエスマンではなく
日本ならではという知恵を絞り、提案をし、議論を進化・深化させるために貢献
すべきです。それが、できていないことが残念です。

人命の損失とコストのかかる武力行使という方法でなく、イラクの武装解除、
イラクにおけるより民主的で非好戦的な政権の樹立を如何に行なうか? 
と多くの人は考えています。その方法についての知恵くらべです。国連査察
委員会では、不十分なのであれば、国連軍による査察強化・実施など、いろいろ
あると思います。イラク政権の民主化についても、巷で言われているサダム・
フセインの亡命も含め、まだまだ知恵はあるはずです。

なぜ、日本政府が知恵を出せないのか? まず、意思の問題があります。加えて、
私が、指摘したいのは情報収集と判断能力の問題です。フランスが、あそこまで、
堂々と独自の判断をし、持論を展開できるのも、イラクについての膨大な情報を
収集しているから、イラクの関係者と膨大なコミュニケーションを自ら行なっている
からです。スズカンTVに来ていただいたゲストの方もおっしゃっていましたが、
フランスの調査員(諜報部員も含め)もかなり、イラクに入りこんでいて、その
一次情報に基づいて確信をもっていろんな判断をしているとのことです。
そうした意味で、我が国の情報というものについての認識を改めることも
必要だと痛感しています。


話は変わりますが、私が、毎日、心を痛めている問題があります。名古屋刑務所の
問題です。私は、法務委員会にも所属しておりますので、この問題については、
日弁連・同僚議員をはじめ、様々な方から、詳しく教えていただいているのですが、
驚愕の事実が判明しました。どうやら、この10年間で、名古屋、大阪、府中、
横須賀の4刑務所で、4年間に100人の変死(病死や老衰ではない)があったと
いう事実が、法務省から報告されました。そのうち8件については、事件の疑いが
あり、司法解剖も行なわれているとのことです。これから、民主党が中心となって、
より詳細な実態解明・原因究明は行なってまいりますが、明らかに異常なことです。

そもそも、私たち国民は、平和で、健康で、幸福な市民生活を送っていくために、
自分たちだけでできないことを、政府という機関に委ねています。自分たちだけで
できないことの一つが治安です。まず、市民の安全、社会の安全を維持するために
刑事ルール作りを国会に委ね、その執行を政府に委ねてきています。しかし、我々
国民は、受刑者にその量刑の範囲を越えて、変死させてしまうことまで、政府に
委ねてはいません。

また、世論調査でも分かるように、国民の多数は、50万人も死傷者がでるイラクへ
の武力行使の遂行を応援することまで政府に委ねてはいません。さらに、武力
行使終了後のイラクの戦後復興では、巨額の資金提供が日本にも求められると
思いますが、こうした経緯と経過で、我々の税金をブッシュ政権の尻拭いに
使うことまで、政府に委ねていません。

もちろん世の中、万能な組織や人などいません。しかし、政府の暴走が、「人の
命は地球よりも重い」という人間社会の当然のルールまで踏みにじって、頼んでも
いないとんでもないところまでに及んでいる。事態は、大変、ゆゆしき状況です。
一方で、是非、頼みたい経済浮揚については、何にもしてくれない。私は、
刑務所で、イラクで、毎日、命が脅かされている人たちがどんな思いで日々
過ごしているのか? そのことを思い浮かべるだけで戦慄します。

政府の暴走。最終的に、それを止められるのは、国民の皆さんです。なぜ政権交代が
必要か? 民主国家において、国家の暴走を食い止める最大の方法論なのです。
特に、議員内閣制においては、与党はどうしても政府を擁護します。まして、
長期政権となると、過去の失政までかばいます。政権交代に向け、民主党も
がんばりますが、国民の皆様の勇気と英断を強くお願いします。