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 ◆知的創造立国を考える


◆大学改革ワーキングチーム事務局長・
                     コミュニティ・スクール事務局次長として


 就任以来、民主党文部科学部門会議における大学改革ワーキングチーム事務局長、そして、コミュニティースクール・ワーキングチーム事務局次長、知的財産問題議員連盟事務局次長として、昨今の初等中等教育、高等教育、知的財産の創造と保護のあり方について、国会で議論してまいりました。前回のスズカンタイムズでは、初めての国会質疑での報告をお伝えしましたので、今回は、その続きとして、その後の文教科学委員会で、どのような議論を行ってきたかをご報告致します。日本の将来は、知と美によって立つしかないと思っております。知や美を担うのは、まさに人でありまして、人づくりこそが、日本再生の道だと信じ、国会では、文教政策に特に力をいれています。
 

◆大学改革が本格化

 まず、現在の大学改革における大きな議論は国立大学の独立行政法人化についての問題があります。この問題は国立大学だけに止まらず、周りの公立大学、そして、私立大学のあり方に対しても大きな影響を与える議論だけに熟慮が必要です。民主党は、以前よりこの問題を文部科学部門会議の中での重大問題として取り上げてきました。そして、この数ヶ月間には、この問題を多角的に議論するため、大学改革ワーキングチームが主導して、各方面の専門家の方をお招きして、意見交換を行い、今後の独立行政法人のあり方、大学全般の改革のあり方を議論してきました。第一弾として、慶應義塾大学教授で同大学元塾監局長(事務総長)の孫福弘氏、東京大学総長の佐々木毅氏、一橋イノベーション研究センター所長の米倉誠一郎氏、NTT先端技術総合研究所所長の東倉洋一氏、日教組高校・大学局長の荘司英夫氏などを同部門会議にお招きして、それぞれのお立場から、大学改革を取り巻く問題点についてお話を伺い、議論してきました。
 ここでは、会議でなされた議論等も踏まえて、現在、私が考えている大学改革のあり方をお話ししたいと思います。
 

◆魅力と実力のある大学作りのための大改革を!

 日本の国立大学教育について振り返ってみると、日本に帝国大学令が出たのが1885年で、その時、東京帝国大学が生まれました。その後、京都、東北、九州、北海道、大阪、名古屋に帝国大学が順に設立されて行きます。そして、1949年に国立学校設置法ができて、「帝国」という言葉が外れて東京大学になりました。それが、現在議論されている独立行政法人化の流れにおいて、国立大学法人に移行する予定となっています。このような意味から考えると、今回の改革論議は、本当に世紀の大学改革議論であります。21世紀の情報文化社会、知の時代の主役となる大学のあり方を考える非常に重要な議論であります。

 では、良い大学とは、どのような大学でしょうか。私は如何にして志が高く・心がけのいい・聡明な人材が、学生として、先生として、集まってくる場を作れるかという点にかかってくるのだと思っています。そして、それには、学生と教員と職員、この三位一体がうまくいったときにいい大学ができるのだろうと思っています。そういう観点から見たとき、日本の大学には、多様で魅力的な人材が世界中から集まっているかというと、充分ではないと思います。例えば、アメリカの大学に行くと、非常に優秀な人材が世界中から集まっているという気がしますし、そのバックグラウンドあるいはその年齢、世代ということを見ても、本当に多様なすばらしい方々が集まっている。そういう意味では、やはり日本の大学改革は、教員、職員、そして、学生に、外国人や社会人なども含めて多様な人材が入ってくることも非常に重要だと思います。

 具体的に、そのような大学にするためには何を改革しなければならないのでしょうか。ここでは、大学内の制度改革のあり方と、現在話題になっている国立大学の独立行政法人化についてのトピックに絞ってお話しをします。
 

◆今の大学制度、何が問題?

 まず、大学内の制度改革のあり方について、私は原則として大学が自由に改革できるようにして、文部省の顔色を窺ってビクビクしながら改革をするような形をなくしていかなければならないと思っています。

 例えば、大学入試が良い例です。いわゆる知識偏重型の能力を問うているという批判があったのですが、実は、近年の入試形態は様々な大学の努力により、大きく変わってきています。受験科目に小論文や面接、リスニングの試験を課すなど、多様な形で能力を見る試みが成されています。面接については、現在、96%の大学で導入しており、(学部ベースでも78%)、小論文については約96%の大学で導入されており、(学部ベースでは77%)8割を上回る大学が、それぞれの取り組みを導入しています。

 また、それぞれの受験生の能力、適性を、高校時代の活動状況などを多面的に評価して、きめ細かい選抜を行う取り組みとして、慶応大学の湘南藤沢キャンパスで始められたアドミッションズ・オフィス入試を行う大学も大変増えてきています。私も同キャンパスでの入試に携わっていたとき、その多様な人材選抜のあり方を目の当たりにしてきました。

 しかし、その時同時に、先代の方々からこのような入試形態など、様々な大学改革を実現していくことが、文部省との関係で如何に難しかったかということを幾度となく聞かされていました。にもかかわらず、文教科学委員会で、現在の大学の諸制度改革についての質問をすると、文科省担当者から、さも自らが作ってきたかのように、「アドミッションズ・オフィス入試など、現在は様々な入試改革をしております。」などという話をされ、非常に歯がゆいものを感じました。

 このように、大学入試が多様になってきているとは言え、未だ、大学側は文科省に気兼ねをして自由に入試の内容を決められないという状況があります。これは毎年、文科省が局長通達という形で、大学入学者選抜実施要項を出しているところに原因があるのだと思っています。その中には、学力検査は学習指導要領に準拠し高等学校教育の正常な発展の障害とならないように十分留意して実施するものという条項があるのですが、大学側はやはり相当気にしていて、これが実際には拡大解釈され、何をやったとしても、「高等学校教育の正常な発展を阻害」すると解釈され兼ねないので、どんなときにも文科省の顔色を窺わないと、設定できないかのような状況を生み出し、自由な入試内容の設定が出来なくなっているという現状があります。

 この点について、文教科学委員会で遠山大臣、岸田副大臣に伺ったところ「これは以前に大学の出す難問奇問によって、高校生たちが過度の受験勉強に挑まざるを得なかったということがあり、受験競争による高等学校教育への悪影響が、社会問題になった歴史的経緯から出されている」とのことでした。また、「その通知の中では、大学入試の自由まで束縛しているつもりは全くないとのことで、国立大学が独立行政法人化された後も、引き続き行っていく」とのことでした。受験戦争の歴史的経緯は分かりますが、大学側としては、拡大解釈のもとに全て文科省にお伺いを立ててからでないと新たな改革が出来なくなっており、それによって、時代の流れに答えられる改革が出来ないと言う点こそが問題なのではないかと私は思います。
 

◆大学にも競争原理の導入と一層の創意工夫を促すべき
 
 私が考えるこれからのあり方は、大学のことは、大学の自律性・自主性を尊重して、大学自身が作っていけるようにするべきだと考えています。そして、もし、受験競争に拍車をかける難問奇問を出し続ける大学があるのであれば、文科省によって淘汰されるのではなく、民間の専門家で構成される第三者としての評価機関が評価をしていくような方向性に変わっていくべきだと考えています。国立大学独立行政法人化の議論でも、大学運営での第三者機関の設置の議論が出てきておりますが、大学入試等の詳細の制度改革についても、同じくその方向性で行い、あくまでも文科省は中央教育委員会の事務局のような位置づけになり、政府は最後に出ていくという形が、望ましいのではないかと思っています。この考えは民主党全体の考えでもありますので、今後、民主党全体としても強く押し進めていきたいと考えています。

 次に、国立大学の独立行政法人化については、私はそもそも国立と私立と公立、こういう法人化区分自体が必要ないのではないかと考えています。議論を聞いていると、国立大学は非常に公益性があって社会性があって、私立大学は私益に走って、公益性、社会性がないかのような議論がなされることがあるのですが、私立大学で研究・教育に携わっていた私からすると違和感を覚える議論です。私立大学の卒業生も社会のために貢献するよう教育をしており、学校法人も学校教育法あるいは私立学校法に基づいて公益性ある組織として設置が認められています。もし、私益に走るところが出てきたとしても、それを第三者機関が評価していけば良いだけであり、国立、公立、私立の別を作る必要はもはやなくなってきているのではないかと思っています。

 更に、少子化の影響で、現在、私立大学では、2000年度で3割が定員割れとなっております。18歳人口は91年240万人をピークに2004年から急激に減少をして行く状況で、2010年には、121万人と半減するわけです。にもかかわらず、最近地方公共団体は自前で県立大学を設立するなど、未だ、大学は増え続けております。

 このような状況を見ると、独法化後の地方国立大学と、地方の公立大学、そして経営の苦しくなった私立大学が乱立し、2,3年のうちに大学の統廃合が議論されることは明らかです。すると、この組織間の有機的な連携を図るためには、法人格が違うということが一つの障害になって来るはずです。ですから、今、議論している独立行政法人化を一歩進めて、国立、公立、私立の学校区分をなくして、一様に「大学法人」のような形で統一することで、統廃合をスムーズに進めることは必要なのではないかと考えております。

 また、その後の、一つの方法論として、国立であろうが私立であろうが学ぶ学生に対しては、学生の方に渡していくような教育クーポンとか教育バウチャーというのは考えられるのではないかと考えています。 現在、国費から大学に対して出しているものを足し合わせると、1兆860億円ぐらいになるので、これを大学生で頭割りすると71万円ぐらいになります。これを、何らかの基準を設けて学生達に給付し、大学という組織に渡すのではなく、学生の方に支給することで、学生たちの選択に合わせて大学再編が成されていくようにするのはどうかと考えています。そして、この流れが発展して、私が元来訴えてきた、全学生に奨学金が支給される「人づくり」を重視する社会に変わって行けばと願っています。
 

◆コミュニティ・スクール構想

 スズカンの公約でもあり、金子郁容先生と一緒に提案した「コミュニティ・スクール構想」についても、この間、かなりの進展がみられました。昨年以来、コミュニティ・スクールWGを精力的に開催し、民主党ととしてのコミュニティ・スクール構想についての基本的見解をまとめたポジション・ペーパーのとりまとめを行いました。党内、関係団体との意見すり合わせも順調に進んでいますし、超党派での意見交換も行っています。そうした、党内の盛り上がりをバックに、金子先生とも連携して、文部科学省に積極検討を働きかけてきました。この結果、今国会で審議された14年度の予算において、コミュニティ・スクールの実験モデル校の予算が認められました。全国30校の応募があり、そのうち7校が選ばれました。東京では、足立区の五反野小学校が採択されました。
 また、14年3月末には、15年中にコミュニティ・スクール構想について法整備も含めた検討を行うことが、正式に閣議決定されました。今後は、4月から始まりつつある実験校の実態調査なども行い、よりよいコミュニティ・スクール法案になるよう関係者を幅広く巻き込んで、さらに議論を深めていきたいと思っております。
 

◆「人づくり」のメインフィールドで、更に頑張ります!

 その他にも、文教科学委員会では、GDP比における文教科学費増大、社会人と外国人に対する奨学金のあり方など、幾つかの提案をさせて頂きました。いずれにせよ、21世紀の社会インフラを作っていく上で、「人づくり」が最も重要な政策であるということを、今後とも民主党のメンバーと共に訴え続け、教育問題に対して、国会が真剣に目を向けていくように取り組んで行きたいと考えております。


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