6‐3 アジア医療ネットワークの構築
Ⅰ 日本のアジアに対するODA
日本は ODA を通して、アジア各国を援助しています。「 ODA 政府開発援助白書 2006 年度版」によると、 2005 年のアジアに対する政府開発援助は 3,841 百万ドル(うち贈与 1,682 百万ドル)で、イラク戦争後の復興のため多額の ODA を供出している対中近東を除くと、アジアは日本の最大の援助先です。
一方、援助の形態はどうでしょうか。円借款 ( 貸付 ) による資金を中心とした、ダム建設などのインフラ設備としての援助は、さまざまな利権が絡み、現地の人々の役に立つかどうかわからない「箱もの ODA 」として批判されてきました。そのため現在では、教育などの分野を中心として「技術協力」の割合が高くなっています。
Ⅱ 医療の世界での日本のソフトパワー向上を目的とした、国家的援助を
そういった技術協力の選択肢として、すずきかんは「人的交流・育成」を主軸とした援助を提案します。現地の医療研究者や臨床医師の卵を日本に招き、留学生として大学で勉強させます。そして、日本で学んだ最先端の医療技術を生かし、祖国の医療の充実に役立ててもらうのです。日本で学んだ彼らは必ずや日本に好感を持ち、将来的には日本と当該国をつなぐ懸け橋となるでしょう。現地の日本のソフトパワーの向上につながる大変効果的なお金の使い方です。
そして、現地ニーズの調査、留学生の選定などは現地の政府・現地で活躍している日本人 NPO に任せます。日本政府は予算だけ出し、留学生と大学のマッチングのシステム構築や維持のみを行います。現地のことは、現地で実際に活動している団体に任せた方が遙かに効率的ですし、ノウハウを生かせるからです。「いろいろな特性を持った人が、コラボレーションしながら世界を良くしていく」というすずきかんのビジョンとマッチしたやり方です。
Ⅲ 例 キルギスタンのリュウマチ熱
キルギスという国は、資源に乏しく産業もあまり発達していない、いわゆる発展途上国です。小児科も不十分で、学齢期の子供は多くがリュウマチ熱 ( 抗生物質の投与により、先進国では感染はほぼ防げる ) におかされます。この状況を改善する医療リーダーを養成するため、聖マリアンナ大の中島教授 ( リュウマチ熱研究の第一人者 ) がキルギスの留学生を迎え入れる予定です。
Ⅳ 留学生受け入れの現状
現在の ODA の枠組みの中では、以下の 2 つの方法で外国の若者を受け入れています。
1青年招聘事業
技術協力の一環として、各国の将来を担う青年を一カ月間日本に招く事業です。 2003 年度は 1,625 名の実績を持ちますが、これらは当該国が申請することによって留学生が決定します。日本が、どこの国から何人受け入れるかなどを主体的に決めているわけではないのです。これでは、国家的な戦略に基づく人材受け入れとは言えません。また、そのうち医療の分野では 69 人しか受け入れていません。
2国費留学生
日本の税金で、世界各国から留学生を招きます。国費留学生は入学金、授業料(文部科学省の定める標準額で、それぞれ 282,000 円、 535,800 円)が免除されるほか、学部生には月額 134,000 円、大学院生には月額 172,000 円の奨学金が支給されます。平成 17 年現在、 9,891 人の外国の学生が国費留学生として日本で学んでいます。
このような留学生の専攻は、以下のようになっています。(私費留学生含む)医療・保健分野の留学生数は非常に低い現状にあります。
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留学生の専攻分野(平成 16 年度) |
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専攻 |
入学者数 |
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人文 |
724 |
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社会 |
2,566 |
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理学 |
208 |
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工学 |
1,108 |
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農学 |
366 |
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保健 |
120 |
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教育 |
525 |
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芸術 |
134 |
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家政 |
33 |
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その他 |
814 |
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合計 |
6,598 |
日本がリーダーとなるアジア医療ネットワークを作り上げるためには、医療・保健分野における留学生の数を増やす必要があります。教養課程から受け入れるのではなく、学士入学、また臨床研修医を受け入れるなどすれば、費用も安価で済みます。
すずきかんは、アジア各国から戦略的に医療留学生を受け入れ、アジアの医療リーダーステートとしての日本の地位を確固たるものにします。
・毎年、アジア50カ国から10人ずつ、合計500人の医療留学生を受け入れ、日本で後期臨床研究や専門医養成を行います。
その試みを通じ、アジア人の体・遺伝子に合った治験や新薬開発、研究が容易となるアジア医療ネットワークを構築します。
毎年、 500 人の医療留学生を受け入れるとき、そのうち 250 人を医学部への学士入学( 4 年間の医学部+一年間の日本語予備教育)、 250 人を臨床研修医( 2 年間の臨床研修+ 1 年間の日本語予備教育)として迎え入れるとします。
前者に対しては、授業料、入学金の減免、日本語予備教育(100万円とする)、また国の定める奨学金(学部生に対して)の合計を考えます。
後者は、国の定める奨学金(大学院生に対してのものを準用)と、日本語予備教育の費用( 100 万円とする)を考えます。
<医学部への留学生>
奨学金 月額 134000 円 × 60 か月= 8,040,000 円(日本語予備教育の期間含む)
入学金免除 282,000 円 ( 文部科学省の定める標準額 )
授業料免除 年額 535,800 円× 4 年= 2,143,200 円 ( 文部科学省の定める標準額 )
日本語予備教育 100 万円
計 11,465,200 円
<臨床研修医>
奨学金 月額 172000 円 × 36 か月= 6,192,000 円(日本語予備教育の期間含む)
日本語予備教育 100 万円
計 7,192,000 円
これらの金額を前述の留学生数で掛け合計すると、 9,328,600,000 円( 93 億円)の予算が毎年必要となります。
これは、 ODA 全体の額から考えると非常に微々たる額であり、特別に財源を捻出せずとも、 ODA 予算内の配分を変えることで十分対応可能です。この金額で、非常に効果的にアジア各国の医療の向上に貢献でき、なおかつ日本のソフトパワーを上げることができるのです。
参考 : www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda