3-1 クラブ活動を再編、地域立スポーツクラブの推進
I 学校単位の運動クラブは減っている
いわゆる学校ごとの「部活動」は減少の一途をたどっています。
部活に入っている生徒の割合は変化していませんが、少子化の影響で、学校ごとにチームを作れない部活動は廃止されてしまうという問題がでてきています。特に、もともと競技者の少ないスポーツはその影響を大きく受けています。地方・過疎地の学校では部活の選択肢が1つしかないという場合もあり、児童・生徒は多様なスポーツを楽しむことができません。
苦肉の策として、二つの学校が合同して 1 つのチームを作るということを行っている学校もありますが、それはあくまで例外的な措置です。
また、現在のような学校単位の部活動システムでは、原則として「掛け持ち」が不可能であり、そのことは生徒の能力・趣味の幅を狭めてしまっています。さらに、現在のシステムでは、定時制や通信制の高校に通う学生は通常の高校総体に出場する資格を持ちません。学校単位の部活動、それを前提とした大会のシステムでは日本の学童スポーツは成り立たなくなっているのです。
平成 10 年の学習指導要領の改正で、必修の「クラブ活動」は廃止され、体育の時間も 105 時間から 90 時間に削減されました。この状況でさらに部活動が衰退してしまうと、日本の体育は危機的状況に陥ってしまいます。
表1 部活動数の推移
出典:平成 18 年度文部科学白書|
競技名 |
平成6年 |
平成 16 年 |
増減率 |
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軟式野球 |
8,702 |
9,103 |
4.6 |
|
バスケ |
7,387 |
7,411 |
△ 0.1 |
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卓球 |
7,905 |
7,198 |
△ 8.9 |
|
サッカー |
7,387 |
7,006 |
△ 5.2 |
|
陸上 |
7,104 |
6,441 |
△ 9.3 |
II 「学校単位」部活動システムの限界
少子化の影響で、各学校ごとの部活動を維持することは難しくなっているのにもかかわらず、それに替わるシステムが構築されていません。
前述のように、全国大会である中体連や高校総体は、原則として「学校」の「部活動」が参加単位です。※1
また、学校単位の部活動の場合、教員に多大な負担がかかってしまいます。そのため部活動の顧問を請け負いたがらない教師が増加し、教員数の減少もあいまって、顧問不足が深刻化しています。正規の職務で無い顧問の仕事は、言ってみればサービス残業にあたり、給与にもほとんど反映されません。また、教師のスポーツ経験にも偏りがあるため、まったく競技経験のない教師が仕方なく顧問に就任することもあります。
学校単位の部活動の問題点として、「教師が指導者となるため、熱心な指導者が転勤してしまうと部活動の継続自体が困難になる」ことも挙げられます。公立学校の教師は 5 ~ 7 年ごとに転勤しますが、これによって部活動が振り回されてしまうのです。教師のみに部活動の負担を押し付けることは、教師、部活動生徒双方に望ましくありません。
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中学校運動部顧問の指導上の悩み(最大 3 つまで) |
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公務が忙しくて思うように指導できない |
58.2 % |
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自分の専門的指導能力の不足 |
40.0 % |
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施設・設備などの不足 |
28.1 % |
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自分の研究や自由な時間などの妨げになっている |
26.2 % |
運動部活動を地域のスポーツクラブなどに移行することについて・学校長へのアンケート
出典: 2001 年 4 月 20 日 内外教育
III 解決策 制度変更と「地域立」スポーツクラブの推進
解決策として「部活動」を「学校」という枠から独立させ、学校と連携しながらに地域によって支えられるスポーツクラブへと移行させる方法が考えられます。現在推進されている「総合型地域スポーツクラブ」が単位となって、地域のスポーツ児童・生徒をまとめるのです。学校・グラウンドごとにスポーツを割り振り、地域内の生徒をそこに集約することによって、場所と時間を十分に使った効率的な指導が可能となります。
無論、学校教育の一環としての部活動を高く評価する意見もあります。しかし、教員や学校長は、部活動を学校から独立させ、地域と連携して運営する必要性を強く感じています。学校単位の部活動であれば、どのみち少子化により崩壊は避けられません。
学校は学校しかできない機能を担い、地域ができることはどんどん地域の参画を推進していくことこそが、教師のプロフェッショナル力が十分に発揮できる下地となります。コミュニティ・スクールの論理を児童・生徒スポーツにも応用するのです。
すずきかんは、部活動の再生にとりくみます。
・地域と学校がうまく連携し合う「総合型地域スポーツクラブ」の設立を推進、中学校区 3 つ当たりに 1 つ程度をめやすに「総合型地域スポーツクラブ」を設立します。
・そういった「総合型地域スポーツクラブ」単位での公式大会出場が可能となるような制度を作ります。
総合型クラブの設立状況、地域偏在
平成 18 年 7 月現在、 2416 の総合型クラブが存在します。
財団法人日本体育協会のホームページによると、県内すべての市町村が総合型クラブを設立している県がある一方で、クラブを設立した自治体が 2 割程度の県もあります。その違いは、国や財団から出ている財源の他に、県が独自に補助金を定めていることにあると考えられます。
総合型地域スポーツクラブの都道府県別設立状況(設立している市町村の割合)
出典:財団法人日本体育協会のホームページ 4-02 総合型地域スポーツクラブの育成状況(その2)」
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1 |
富山県 |
100.0 % |
1 7 |
東京都 |
51.6 % |
35 |
福井県 |
35.3 % |
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2 |
兵庫県 |
100.0 % |
22 |
佐賀県 |
47.8 % |
45 |
北海道 |
20.6 % |
|
3 |
大分県 |
72.2 % |
25 |
鹿児島県 |
46.9 % |
46 |
奈良県 |
20.5 % |
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10 |
徳島県 |
58.3 % |
31 |
和歌山県 |
40.0 % |
47 |
群馬県 |
17.9 % |
市町村合併の影響もあり、正確な数値が出ていない都道府県もある。
国、財団、地方自治体からの補助金
国からは、文部科学省の「総合型地域スポーツクラブ推進事業」として助成金が出ています。(委託先の日本体育協会に対して交付金が配分、各都道府県体育協会を通して個別の事業に配分される)これは主に総合型クラブの設立のためのもので、平成 17 年度に 1,366 百万円、平成 18 年度に 1,025 百万円、 19 年度案で 738 百万円となっています。「平成 17 年度 文部科学省実績評価書」によると、平成 17 年度の予算の実績として「 431 クラブが育成されつつある」とあります。この記述をもとに、平成 17 年度の 1366 百万円を 431 クラブで割ると、1クラブ当たり約 317 万円の補助金が、設立時に国から出ていることになります。
また、スポーツ振興くじからの助成金も出ています。最大 2 カ年、一年あたり 300 万円を上限として創設のための活動経費が交付されています。
都道府県はそれぞれ金額およびその出自が異なりますが、兵庫県では、1万人以上の従業員を持つ県内の事業所に対して法人県民税の超過課税を行い、文化、スポーツ、レクリエーション事業( CSR )に充てる目的税としています。この一環として、 2000 年度より「スポーツクラブ21ひょうご」事業が開始され、各クラブに対して整備費として 800 万円、運営費用として年間 100 万円× 5 年間の補助が行われます。
富山県では、平成 16 年以降、「総合型地域スポーツクラブ育成事業補助金」が設けられ、平成 18 年度は 56 百万円の予算額が計上されています。
県が設立のイニシアチブをとり、相当額の補助金が出ている兵庫県では、市町村での設立率は 100 パーセントに達し、兵庫県では 831 か所に設立されました。国・スポーツくじの予算にくわえて、兵庫県並みの補助を行うことが、総合型地域スポーツクラブ設立における金銭的な面での最低条件といえるでしょう。
さて、前述のように、中学校区 3 つ当たり一つの総合型地域スポーツクラブを設立するとします。
全国には公立中学校が 10,200 校ありますので、約 3400 の総合型クラブが必要となります。
一方、現状では、 2416 の総合型地域スポーツクラブのうち 831 が兵庫県に集中しており、ほかの都道府県には約 1600 弱しかありません。約 2000 の総合型クラブを増やす必要があります。
2016 年に東京オリンピックを誘致しようという動きが大きくなってきており、すずきかんも賛成しています。 64 年の東京、 72 年の札幌、 98 年の長野オリンピックは、ハードウェアであるスポーツ施設をのこしましたが、 2016 年の東京オリンピックでは、全国各地にソフトウェアであるスポーツクラブを作りましょう。
ここで、総合型クラブ一つあたりに支払われる補助金の合計を考えてみます。
国から: 317 万円
財団から: 2 箇年で最大 600 万円
都道府県(兵庫県の例):設立に 800 万円、運営に五年間で 500 万円
これを合計すると、 2217 万円になります。
2,000 の総合型クラブを設立すると、単純計算で 443 億円が必要となります。
※1日本中学校体育連盟 HP