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2-7  医療関連感染症の発生をおさえるための調査体制の整備

 この項目に関して、自治医科大学感染制御部長の森澤雄司先生に全面的な監修、論文の引用許可を頂いています。

Ⅰ  問題点 統計データの不足が生む患者側の誤解と、質改善における障害

 病院での、手術などの医療行為に付随して起こる感染症を医療関連感染症と呼びます。これはどんなに予防してもある一定の確率で起こるものですが、感染症に精通した医療者 ( 特に医師において顕著 ) の不足から、各病院での広汎・詳細なサベイランス ( 調査 ) ※が行われていません。その医療関連感染症に関するデータ不足は、医療関連感染症が医師の100%のミスで起こるものであるとの誤解を招き、医療訴訟の増加の一因となっているうえ、病院全体が連携した継続的な質改善を妨げています。

 

※ここでいうサベイランスとは、2つの方向性を持ち、どちらも重要です。

 

1 個々の病院の「病棟、病床での細菌数やウイルスの数」を継続的に調査することで、一般的な意味でのいわゆる「院内感染」を未然に防ぐ

2 カテーテル挿入などの「個別の医療行為における感染の件数や割合」を調査しデータを蓄積することで、その医療行為を行うにあたっての予防策を見いだすことができ、また避けられぬ感染により医師が不当に訴えられ、患者の遺族も徒に無念を募らせることを防ぐ

 

 

Ⅱ 医療関連感染症による大きな経済的損失

自治医科大学感染制御部の森澤雄司准教授のグループは、かつて都内の 1,200 床規模の大学病院において医療関連感染症に関する全病院規模の包括的なサベイランスを行いました。

 その結果をもとに、医療関連感染症が医療にもたらす経済的損失を算出したところ、一年間で11億円を超える過剰な医療費がかかることがわかりました。日本全体では入院病棟が90万床ですから、単純に計算すると日本全体で1兆円に近い過剰な医療費が医療関連感染症に使われているという計算になります。

 

1,200 床規模の大学病院における病院感染症のコスト(推計 )

  年間推定発生件数 1 例あたりのコスト 年間コスト
外科手術部位感染症 400 120 万円 4 億 8,000 万円
非外科手術症例の病院感染症      
MRSA 感染症 100 230 万円 2 億 3,000 万円
非 MRSA 例 400 100 万円 4 億円
合計     11 億 1,000 万円

( 森澤准教授の論文より引用 )

 

 

Ⅲ 解決策1 現場でのサベイランスを行いやすくするために

 病院を評価する第三者機関である「医療機能評価機構」は、このサベイランスを行うことを各病院に呼びかけています。しかし、現場で診療に従事している医師や看護婦が普段の勤務の間に全病棟を回って調査することは不可能であり、医療安全の調査と維持に特化した医療者を現場におく必要があります。

 高度先進医療病院では、病床 1000 床あたり 1 人の専門医療者を置くことが義務付けられてはいますが、一般の病院にもこれを適用すべきですし、実効的な調査のためには 250 床あたり一人くらいの割合で配置を義務付ける必要があるでしょう。

 現在、そういった医療安全の知識を持った医療者を認定する制度は、看護師、医師にそれぞれひとつずつ存在します。前者は「感染管理認定看護師」であり、現在 600 人ほどが取得しています。この資格を取得するためには 6 カ月の研修を受ける必要がありますが、残念ながら資格取得者も幹線管理専任で従事する場合はまれであり、病院管理者の医療安全に関する認識不足の実態を浮き彫りにしています。

 後者は Infection Control Doctor (ICD) であり、現在 4000 人ほどの医師が取得しています。しかし、これは簡単な講義を受けるのみで取得が可能であり、医療安全に関する医師の認識不足を改善させる大きな端緒になっていることは高く評価できますが、実際に現場の医療安全を管理できる医師が育成されているとは言い難く、また資格取得者は都会の大病院や大学病院に偏在しています。

 看護師においては、資格の取得希望者に対し補助金をだすなどして取得奨励に努め、医師においては実際に現場で使える医療安全管理力を養成するに足る資格の設立と普及を行う必要があります。

 

 

 アメリカでは、 APIC( 感染管理専門家協会 ) という感染管理看護師を中心とした組織が CBIC( 病院感染制御および疫学認定委員会 ) という団体を設立し、看護師に対する医療安全管理の教育を行っており、 CIC( 感染管理認定資格保持者 ) という資格を交付しています。

 

 

Ⅲ 解決策2 根本的な解決―教育レベルで現場の医師の認識を変える

 現場では看護師に比べて医師の医療管理に対する認識が低い場合が少なからずあり、感染症防止策がうまく機能しない一因となっています。これは医学部において感染管理学を学ぶことがほとんど無いことに起因します。医学部教育、ひいてはメディカルスクールでの教育において感染症に関する科目を必修とし、現場の感染管理に関して意識の高い臨床医師を育成する必要があります。

自治医科大学感染制御部の森澤雄司准教授も参加している感染症教育研究会には、全国からときに百人を超える数多くの学生が集まります。医学生、とくに臨床医を目指す学生の間での感染症の知識へのニーズは十分あるといえるでしょう。

 

 

医療安全管理のため、各病院のサベイランスを義務付け、継続的な医療安全の質改善が図れるようにします。

それが現場の負担なく行われるような政策を提案します。

・各病院に、250床当たり1人医療安全管理者をおくことを義務付け、条件を満たす病院を優遇します。

・医師を対象とする医療安全管理者の資格をより実践的なものとし、その取得を奨励します。

・医学部やメディカルスクールの教育に感染管理学をとりいれ、国家試験に出題させます。

 

 

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