2007年3月27日 文教科学委員会166-参-文教科学委員会-5号 平成19年03月27日鈴木寛君おはようございます。 今日は、この国の文化とかそうした基本になる国立博物館法あるいは文化財研究所、この在り方の議論をさせていただきたいと思いますが、その前に、三月の二十三日から高校野球が始まっております。私も毎年大変楽しみにしておりまして、春は選抜からという言葉もありますけれども、大臣は始球式は行かれたんですか。 国務大臣(伊吹文明君)大変行きたいと思っておりましたが、国権の最高機関のお許しがございませんでしたので、副大臣が参っております。 鈴木寛君是非またあらかじめ御相談をいただきながら。ただ、本当に大臣あるいは副大臣が始球式に行っていただいて高校野球を応援していただくというのは、本当に僕はいいことだと思うんですね。 私も甲子園、よく子供のころも、あるいは若いときも見にいきました。本当に心を一つに、選手の方々も、応援する方々も、あるいはその観客の方々も、本当にすがすがしい。私、日本の文化として、あるいは野球をやっておられる方はこれは国技だというふうに言っておられるようでありますが、是非健全な形で発展をしていただきたいな、あるいは我々もそういうふうに努めていきたいなというふうに思っております。 実は、私は超党派の議員連盟でございますプロ野球の飛躍・発展を推進する議員連盟の事務局長をいたしておりまして、その観点から若干、是非この文教科学委員会の場で、委員の先生方も含めて御議論させていただきたいと思う残念な出来事がこの野球界をめぐって起こっておりますので、御議論をさせていただきたいと思います。 選抜が始まる前日にも、今回のいわゆる西武ライオンズによる当時の高校生ほかに対する金銭供与という問題がありまして、そのことが発覚をいたしまして、そしてプロ野球のスカウト陣が高野連の関係者にも謝罪をするということもございましたし、それから、同時に今、日本プロ野球機構の方でもこのドラフトの在り方ということをめぐっていろいろな議論があるようでございまして、そしてまたその議論の中でなかなか結論がすっきりまとまらないと、ある意味ではごたごたをしているという状況なども報道等で漏れ聞いております。 この一連の西武ライオンズによる金銭供与に係る問題について、その事実関係について文部科学省はどのように把握されておられるか、お話をいただきたいと思います。 政府参考人(樋口修資君)お答え申し上げます。 今回問題になっておりますのは、プロ野球球団でございます西武ライオンズが、大学野球あるいは社会人野球のアマチュア選手二名に対しまして栄養費の名目で金銭の供与を行っていたことでございます。このことは、「新人選手獲得活動において、利益供与は一切行わない。」というプロ野球十二球団が行った申合せ、いわゆる倫理行動宣言に違反するものであります。 また、金銭が渡されました二名につきましては、一人は大学生、もう一人は高校を卒業して就職した社会人であるわけでありまして、いずれも高校生時代から御指摘のとおり金銭が渡されていたということが判明しております。これは、高校野球や大学野球の監督、コーチ、選手等が入団を条件として球団から利益を受けることを禁じる日本学生野球憲章にこれは明確に違反するものでございます。 日本プロフェッショナル野球機構、任意団体でございますが、このプロ野球組織や、あるいは財団法人の日本高等学校野球連盟並びに財団法人の全日本大学野球連盟におきましては、西武ライオンズや早稲田大学における調査結果を踏まえまして、今後、違反に対する制裁など対応を検討するとお聞きいたしております。 また、社会人野球の団体でございます財団法人日本野球連盟におきましては、選手等による金銭の受け取りは社会人としての倫理に反する行為であるということで、選手と所属するチームに一定期間の試合出場禁止の処分をしているところでございます。 以上がこれまでの経過でございます。 鈴木寛君私は、青少年の健全育成という観点で、やっぱりスポーツというのは本当に大事だと思うんですね。とりわけ野球というのは日本でも一、二を争う人気、特にやっぱり小学生始め中学生などに本当に青少年の夢を与えてくれるものでありますから。本当にスポーツというのはいろいろな夢を与える、それからチームワークの大切さを教える、あるいはフェアプレーとかスポーツマンシップとか、本当にこれは様々な意味で私は国民の財産であるというふうに思っております。でありますから、このプロ野球あるいは野球界にあって、二〇〇五年の六月に倫理行動宣言が出ていて、それからもう全く時を置かずしてこういったことが行われていたということは本当に残念だというふうに思います。 これは、確かに日本プロ野球機構、任意団体であって、その中の私的自治ということなのかもしれませんが、ただ私は、その一私的自治として語るには余りにも、そのような問題ではなくて、やはり社会の公器として我々も重大な関心を持って、そしてその健全化について努めていただきたいなというふうに思いますし、我々としても必要なことがあればお手伝いをしていかなければいけないなと、こういうふうに思っているわけであります。 それで、今回は確かに、入団前の金銭、栄養費という形で事前にお金が渡っていて、ある意味で極端な青田買いというんでしょうか、過剰なといいますか、過熱した青田買いの中で金銭の授受が起こったと、こういうことなわけでありますが、いろいろと私もプロ野球のことについてこの間、この数年勉強をさせていただいておりますけれども、今回は入団前の栄養費の話でありますけれども、例えば入団時の契約交渉、あるいはそれに伴う契約金、まあ契約金は基本的には選手がもらうわけでありますけれども、その授受をめぐって、今回も所属しておられた高等学校のコーチをやっておられた教諭の方が学校の御判断によって処分をされていらっしゃるようでありまして、こういうことからも分かりますように、選手は本当に社会的にはまだ未熟といいますか、成長途上の選手であります。一生懸命野球のことについては頑張っておられるんだと思いますが、例えば契約の話とか、あるいはプロ野球を取り巻くいろいろな社会的な背景とか構造とか、なかなか大人でもそれを理解することは難しいわけでありますから、まだそうした成長の途上にある高校生がそうしたことをきちっと自己防衛してというのは、これなかなか難しいと思います。ですから、やはり私は率直に申し上げて、今回、二人の選手と言っていいと思いますが、は、相当程度犠牲者じゃないかなとも、こういうふうに思うわけであります。 それで、更に申し上げれば、私も早稲田大学で教鞭も執らせていただいておりますけれども、だからといって申し上げるわけじゃありませんけれども、一生懸命夢を持って、そして野球に打ち込んで本当に努力をしてきた、もちろん才能もある、その若き有為な若人が、もちろん全く非がないというわけではないとは思いますけれども、完全に将来の夢が絶たれてしまうということになっているということはもう大変ある意味で残念だし、それを守ってあげられなかった、あるいはそのことに対して適切な指導をしてあげられなかった関係者というものは、本当に私は残念だなというふうに思うわけでありますけれども。 今回の栄養費に限らず、いろいろな新人獲得をめぐるお金の話ですね、お金の話。このお金の流れあるいはそれの分配、あるいはそれを取り巻くいろいろな社会的な構造の問題、こういったことのやはりきちっと全容を把握して、そして構造的な抜本的な私は改革といいますか、改善策をやはり打つべきではないかなということを痛感をしています。 今回、二人の選手及びそれの指導に当たっていた関係者が処分をされてそれで終わりということであれば、それは私は、またこのような問題が繰り返されますし、そして一番、まあこういう言い方は適切でないのかもしれませんが、ある意味トカゲのしっぽ切りのようなことになってしまって、これは本当に健全な球界の発展ということからすると極めて残念な事態になりかねませんので、これを機会に文部科学省としても、この背景にある、特にお金をめぐる構造的なまず実態と、それをどういうふうにしていったらいいのかということを、やはり文部省としても重大な関心を持って、かつ、きちっとそれを把握をしていただくということが重要だと思いますが、いかがでございますでしょうか。 政府参考人(樋口修資君)委員御指摘のように、今回、プロ野球に関しまして十二球団が行った自らの自主的な申合せに違反するような事例が生じたということは誠に残念でございます。 プロ、アマを問わず、野球の運営というものは野球関係者により主体的に行われるものだということが私どもの基本的な認識でございまして、今回の問題については、背景にどのような要因、課題があるかも含めて、野球関係者が中心になって解決すべき問題であろうと考えているわけであります。 今回の事件の背景には、先生御指摘のように、選手側の経済的負担の問題があるという御指摘もあるわけでございますが、これは野球に限られた問題ではなく、基本的に、それぞれの各競技の実態に応じて関係団体やチームなどが主体的に対応していくべき課題であろうかと考えているところでございます。 鈴木寛君今局長は、関係者が主体的に考えてと。これは、もちろん当然まず考えなきゃいけないとは思いますが、いろいろ聞いてみますと、やはり甲子園で活躍をするような高校の野球部というんでしょうか、かなり国内じゅうを飛び回って遠征をするとか、あるいは野球の名門校に行くために親元を離れて寄宿舎生活をするとかあるいは下宿生活をするとか、相当、高校野球といえども、かなりそうした野球生活を送っていく上で金銭的、経済的負担というものが個人あるいはその家族に掛かっているという実態があるということは否めないと思うんですね。もちろん、それはやっている選手の判断だと言ってしまえばそうなのかもしれませんけれども、あるいは、そういうことを奨励する学校がそうした経済的な資金調達を含め、振興策を含め考えればいいんだと、こういうふうに言ってしまえばそのとおりなのかもしれませんけれども、私はそこのところをもう少しきちっと考えていくべきだと思います。 すなわち、今いろいろな格差の問題というのがあります。それから、小学校なんかでも学力の格差というのが議論になっていまして、私は小泉前総理と予算委員会で議論したことがあるんですけれども、小泉総理が、いや、学力がすべてじゃないと、運動とかいろんなことがあるんだと。もう私も全くそのとおりだと思うんですけれども、今私、小学校とか中学校の現状を見ていて非常に心配なのは、学力の格差、明らかにこれ、塾に行けるお子さんと塾に行けないお子さんの格差というものが厳然として付いているという実態があります。そのことは、体力とかスポーツについても同じことが今生じつつありまして、例えば水泳教室に行けるお子さん、あるいはサッカーのそういうキッズとかジュニアとかというところのクラブチームに通えるお子さん、あるいは野球でいえばリトルリーグに通えるお子さんとそうでないお子さんとですね。昔はといいますか、少なくとも私たちのころは、運動が好きな子、運動が好きな子供たちは、やっぱりその地域の小学校あるいは中学校のスポーツ少年団で、必ずしも御家庭の経済力にかかわらず好きな野球や好きなサッカーに一生懸命打ち込めるという環境がありました。しかし、じゃ今日の小学生、中学生の状況を見てみると、好きなスポーツに打ち込もうと思っても、なかなか家庭の経済力の格差によってそれが十分にできないという状況がこれはあることは事実だと思うんですね。 例えば、私立の高等学校などで相当野球に力を入れているというところ、それはだから私立が特色を出すためにやっているんだから、それは私立の学校が頑張ればいいんだと、こういう話になるんだと思いますが、そうすると、私立に通わすことができない御家庭の子弟はどうなるんだろうかと。以前は、例えば授業料とか入学金の免除ということをしているという実態がありました。しかし、今は、私立高校といえども、そういうスポーツの特待生に対する学費とか入学金の免除というのはしてはいけないという話になってきているわけです。そうすると、なかなか、そういう私立学校といえども、そういうスポーツ特待生に対して経済的な支援というんでしょうか、あるいはインセンティブというんでしょうか、そういうことを付けるということは表立ってはできなくなってきているんですね。 要するに、この世界、もちろん建前といいますか、守らなければいけない大事なこと、あるいはルールということは、やっぱり決めたことはちゃんと守らなければいけない、これは当然であります。そのことを私はゆがめろと言うつもりは一切ありませんけれども、しかし、余り実態を見ずに一部の手直しだけを繰り返していくと、結果として今のような傾向というものが助長をされているということもやっぱり踏まえなければいけない。 それから、まあいろいろと、もちろん真偽のほどは分かりませんけれども、今回の処分などでもうかがえるように、契約金、まあかなりの金額の契約金を選手が受け取る。まあそのことは、それだけの努力をして才能があるわけですからそれはいいと思いますが、その契約金を、お世話になったクラブの関係者あるいはそれを仲介する関係者にもその契約金が分配をされている実態がかなりあるということは報道されています、一部の報道機関に。もちろんその真偽はあれですが、定かではありませんけど、しかし、これも一律にこれが悪いかというと必ずしもそうでなくて、それまで本当に身銭を切って選手を自分のうちで面倒を見て、そしてもうそうしたクラブ活動をやるために、例えば監督さんとかコーチの方が私財をなげうってやっておられるという実態もあります。 そうすると、私は、非常に頑張られた方あるいはリスクをしょって何かに打ち込まれた方が適正な、それに報われる、経済的なことも含めて資金がきちっと手当てをせられる、あるいは還流をされるということ自体は私は悪いことではないと思います。 ただ、逆に言うと、むしろそれが非常にフェアな形で、かつ透明な形で社会の仕組みとしてむしろ全部オープンになって、なるほどと、これだけ頑張った監督さんが、これだけ頑張ったコーチの方々が更なるそうした活動を続けていくために、あるいはそれを更に発展をさせていくために必要な資金が、何というんでしょうか、調達することができるということ自体は私はあってもしかるべきだと。 ただ、それが個人の何かに流用されたり、あるいは、だからそれは私は、例えば欧米などの例を見ていますと、サッカーなんかはむしろそういうところが半歩進んでいるんだと思います。必要な育成資金は必要だと、しかしそれをいかにフェアに透明に調達をし、そしてそれを流していくかというところの議論、あるいは、もちろんそれはいろいろな試行錯誤の結果でき上がっているわけでありますけれども、例えばプロのサッカー球団、あるいはFIFAのようなところがちゃんときちっとコントロールをして、そして育成を一生懸命やった主体に対してプロ側がそういう資金を提供するという枠組みができていて、そこがフェアな形で、公正な形で行われている例もあります。 ですから、日本の野球も、何というんでしょうか、一方では非常に建前としてはきれい事を言っていると、まあ言葉は適切じゃないかもしれない。しかし、その裏では非常にそうした、元々はやはり必要性があったのかもしれませんが、そのことが本音としてはやむを得ないんだ、やむを得ないんだ、やむを得ないんだ、やむを得ないんだということで、最初は合理的というか、それ、最初は納得のできることが、それがだんだんだんだん、何というんですか、スタンダードから外れていって、そして一番困るのは選手でありまして、要するにダブルスタンダードなんですよ。 ダブルスタンダードで、周りの人から、いや、これはダブルスタンダードがこの世界の常識なんだと。それを判断する、自分にとっては一回こっきりの契約の交渉ですから、あるいは一回こっきりの人生ですから、その先輩方から、特に大変お世話になっている方から、表のルールはこうだけど裏のルールはこうなんだと言われると、それに対してそうですかとも聞けないし、それについてもう従うしかオプションはないと、こういうことになっているわけですから、とにかくやっぱり非常に分かりやすい一つのスタンダードというか、一つのルールにきちっとして、しかし、そうやって本当にだれもが納得がいく。 要するに、今のルールというのは、結局NPBとかプロ野球機構とか高野連とかがそれぞれの、まあ私はそれぞれに妥当なことだと思いますけど、決めます。しかし、現場は、いや、そうはいったってなかなかそうはいかないよねという思いがありながら、それが全部出されない形でその都度のある意味でその場しのぎ的な対応が行われていて、そしてダブルスタンダードが温存されるということでずうっと続いてきているんですよ。 それで何年間に一回こういう問題が出てきているということで、この際、やっぱりそれをきちっと私は文部科学省も指導をされて、あるいは重大な関心を持たれて、そしてきちっとそうした実態も踏まえて、そして現に日本の野球というのは国際的に非常に高い水準にあるわけであります。その一番伸び盛りの中学校とか高等学校を本当に高校野球の指導に当たっておられる方が一生懸命支えられて、多くは非常に健全に、本当に私財をなげうってボランタリーでやっていただいているのです。その実態があった上でプロ野球に行って、そして昨年も大変日本国民が喜んだわけでありますけれども、WBCでああいう快挙、あれによって日本人どれだけ励まされたかということで、そういう社会的な極めて大事な役割を担っていただいていることも事実なわけですね。ですから、やっぱりこの辺りも含めて野球界を、これからも有為な若者をきちっと育成をしていくということを損ねずに、かつ、フェアにオープンにしていくということで、本当に今回のことを機にきちっとやっていただきたい。 本当は二〇〇四年の二リーグ十二球団の話のときにそれはやったはずなんですけれども、それが結局やられていなかったということで私はあえて今日問題提起させていただいているんですけれども、その辺りいかがでしょうか。 政府参考人(樋口修資君)委員から球児の経済的な負担の問題がまずちょっと御指摘をいただきました。 高校の運動部活動等では、まずは学校の教育活動の一環としてこれを行われているわけでございます。当然、野球もそうでございます。ただ、これが勝利至上主義的な運動部活動にならないように、そして経済的負担ということでありますると、やはり野球の合宿とか遠征とか、こういったものがやはり個人の負担が掛かるということで、勝利至上主義的な運動部活動ということによって遠征とか合宿というものが行われ、そして結果において負担の問題が生ずると。こういったことがないように、私どもは勝利至上主義に陥らないような教育活動の一環としての運動部活動というものを心掛けてほしいと。 そしてまた、学校外の民間のクラブチームの活動についても、これは個々の自己責任で参加するものではございますが、どうしても経済的負担の問題が生じます。これについては、クラブチーム等に対して経済的な負担が多大に生ずることがないよう我々としても配慮を求めていきたいと思っているわけであります。 そして、御指摘のように、例えばプロ野球の場合はこういう課題が実は生じてきたわけでございますが、サッカーの場合にはジュニアからの一貫した人材発掘システムを設けておりまして、市町村、都道府県、全国ブロックから全国という形でジュニア期からそれを養成して、そしてそういったものの選手の強化とか育成のための合宿等に対してサッカー協会全体がこれをバックアップしていくと、そしてサッカー協会全体がそのサッカーのレベルを上げるために全体で支援していくというシステムがあるわけでございます。 これはそれぞれの競技によって違うわけでございますが、私どもも、やはりプロ野球等野球においても、こういう野球界全体の発展のためにどういう形でジュニア期からの人材を発掘していくのか、そのことに対して全体でどう取り組んでいくのかということをこの野球組織の方にも御検討いただくことをお話を申し上げさしていただきたいというふうに思っております。 鈴木寛君ありがとうございます。 今、正に局長から野球界に対してもそういうことを申し上げたいという大変貴重な御答弁をいただきました。是非そうした注意喚起をしていただいて、これを機に本当に、いろいろな知恵はあると思いますので、ジュニア期からいかにそうした健全な育成をしていくか。 それと、スポーツ・青少年局というのは非常に重要なポジションにありまして、結局教育的な配慮と、これやっぱりバランスの問題ですよね、教育的な配慮もしなければいけない。しかし、その一方でやっぱりスポーツの振興、その中で非常に、特にスポーツ能力の高いジュニア人材、若手人材をどういうふうに育成していくかと、このスポーツ振興の、これの折り合いを付ける。さらに、青少年の健全育成というこのかなめを握っておられるのが私はスポーツ・青少年局長であると思っておりますので、これ、そうした野球界とも、何というんですか、コミュニケーションはやっぱり密に、もちろんそれぞれ自立した、独立した運営であるということはこれは当然ですけれども、いろんなやっぱり意見交換とか、我々の問題関心を時々はきちっと伝えていただくとか、そういうことは是非私はやっていただきたいというふうに思いますので、今文部科学省としても野球関係団体等々に注意喚起をしていただくという大変前向きな御発言をいただきましたことは大変多としたいと思いますし、是非これを機に頑張っていただきたいなと、こういうふうに思っているところでございます。 それで、もう少しこの問題を掘り下げてみたいと思うんですけれども、なぜここまで青田買いが過熱してしまうかということは、ある意味では入団してからの問題ともこれ裏腹の関係にあります。すなわち、これ九年たつとフリーエージェントという、FAという制度が利用できるわけでありますけれども、これは例えば一軍に九年間いなきゃいけないとか、物すごく限定された制度になっているわけですね。 一般の企業でありますと、企業も野球もこれは人材がすべてであります。新人のいい人材を採れるかどうかということに皆さん躍起になるわけでありますし、と同時に、今かなり世の中、人材の流動化というのがなされていて、中途採用というんでしょうか、経験者の採用でもって強化をすると。それから、人材の方も、Aという会社にはなかなか自分の活躍の場はなかったけれども、Bという会社であれば自分が本当に活躍する場もある。これはチームワークですから、それぞれの人の能力の問題もありますけれども、相性とか、働く職場と。そういうふうにある程度人材の流動化ということができることによって組織といいますかチームというのは、新人の採用とそれから中途の経験者と、この両方のベストミックスによっていいチームづくりというのはしているわけであります、民間企業においては。 ただ、野球界の場合は、あるいは実は国家公務員の場合もそうかもしれませんけれども、なかなか中途の戦力強化ということが十分に行えないがために、どうしてもこの新人のところに過度な、何といいますか、バイアスが、荷重が掛かってしまうというのが現状かと思うんですけれども。もちろん、難しいことはよく分かってはおりますけれども、選手のより自分が頑張りたいチームで頑張りたいと、こういう非常に率直で素朴な思いというものを私はもう少しかなえてあげてもいいんではないかなというふうに思います。 そういう中で、これも二〇〇四年来ずっと問題提起がされてきた問題ですけれども、今日は公正取引委員会にも来ていただいていますけれども、プロ野球の球団と選手との契約の在り方で、私は、契約というのは基本的にはやっぱり対等な立場で契約ができると、もちろん合理的な制限というんでしょうか、制約というのはある程度はやむを得ないと思いますが、しかしそれは必要最小限でなければならないというのが契約あるいは民法の大原則だと、こういうふうに思っております。 明らかにその原則が崩れていることは事実であります。もちろん、しかしプロ野球界の全体の発展という中でやむを得ない部分もあるということも承知しておりますが、例えば日本プロフェッショナル野球協約というのがございます。その四十五条とか四十六条では、契約というのは全部これ統一契約でやらなきゃいけないということになっているんですね。それで、「球団と選手との間に締結される選手契約条項は、統一様式契約書による。」と、こういうふうになっているわけなんです。これまた面白いことに、監督並びにコーチとの契約条項は統一契約書によらないというふうになっているんですね。ここに明らかに差別的取扱いというのがありまして、そして「統一契約書の様式は実行委員会が定める。」というふうに言っています。 これは民法上は約款契約ということだと思いますが、約款契約であればその約款契約の妥当性、例えば銀行の約款契約であればそれの妥当性については金融庁がそれを監督しているということになっていますし、あるいは生命保険でも同じようなことだと思います。 要するに、このような統一の基準、統一の約款でやらなければいけない業務というのは、例えば運輸業にしてもいろいろな業務がありますが、その場合はきちっとそれを、だれかがその公益性、あるいは客観性、あるいはそれの必要最小限の措置であるということを確認するという方法が入っているわけでありますけれども、NPB、日本プロフェッショナル野球機構というのは別にそうした役所の監督というものもない。これは別に私それでいいと思うんです。それを監督、文部省が所管しろなんということはみじんも言うつもりはありませんが。 しかし、それが本当に公正な契約自由の原則、あるいは公正な契約関係の樹立という観点から問題がないのかどうかということはやはりきちっと関心を持って、これだけの好機でありますから注目する必要があるんではないかと思いますが、公正取引委員会はこのNPBの野球協約についてそういう観点から検討とか検証とか行っているのか、あるいはそこまで本格的なことはおやりになっていないにしても、どういうふうな問題関心を持って、これ何年間に一回問題になるこのドラフトの問題とか契約の問題とかFAの問題、研究をされておられるのか、その辺りの状況についてお答えをいただきたいと思います。 政府参考人(鵜瀞恵子君)野球協約についてのお尋ねがございました。 野球協約にはいろいろな定めがあるようでございますけれども、御指摘の点はドラフト制度あるいはFA制度にかかわるものと理解いたしますので、野球選手契約についてどう考えるかということかと存じます。 野球選手契約につきましては、一種の雇用契約に類する契約と考えておりまして、プロ野球における現行の契約慣行を前提として考える限り、独占禁止法上の取引に直ちに該当するものとは解されませんで、独占禁止法上問題となるものとは言い難いというふうに考えております。 過去に検討したことがあるかというお尋ねでございますけれども、何度か国会で答弁をさせていただいております。 鈴木寛君ありがとうございました。 公取がこれは基本的には雇用契約であるというふうな解釈をされるということは、これは極めて重要な御解釈でありまして、これが雇用契約であるということであれば、むしろ労働法制に基づいてしかるべき対応が行われるということが政府全体としての御理解だと思いますし、そういう整理であればそういうことできちっと対応していくということがこれから必要かなということで、大事な解釈、大事な答弁を大変ありがとうございました。 それでは、今後また厚生労働省の皆様方とも御一緒になって、選手の人権といいますか、労働権というものがきちっと保障されているのかどうかという観点で私たちも研究を続けていきたいというふうに思います。 それで、今回、大変我々の大好きな野球というものが本当にこれから大丈夫かなと、特に青少年に対してやっぱり明るいイメージを取り戻すということは非常に重要ですね。やっぱり夢を与え続けていく、そういう野球界に私はこれを機に、むしろピンチはチャンスで生まれ変わっていただきたいと、こういうふうに思っております。 それで、しかしその一方で、例えば今行われておりますドラフト会議、今年のドラフト会議で希望枠というんでしょうか希望入団枠、これが青田買いを過熱させる要因になっているんで、これはアマチュア界の方も即時に撤廃をしてくれと、あるいは選手会の方もこれは即時に撤廃するべきだと、こういうことがあって、しかしながらなかなかそれについてすぱっと、こういうことがあって大いに反省をして希望枠はもう今年からぱっとやめましょうというふうになるのかなと思っていたら、なかなかそういうことになってないようでありまして、こうしたことも、もちろんNPBが独自に御判断されるということではありますが、私の希望としては、希望枠は今年きちっと撤廃をして、野球界をもう一回、それこそ極めてクリーンな形で前向きにもう一回再建をしていくんだというきれいなスタートが行われる二〇〇七年になってほしいなと、こういうふうに私は強く希望をいたしております。 大臣に是非お伺いをしたいと思いますが、今回の西武ライオンズの金銭供与問題に端を発します、再び露呈されてしまった野球界の、何というんでしょうか、もやもやとした部分というんですか、これを是非払拭をしていただいて、もちろん払拭をするということと同時に、先ほど局長と御議論をさせていただきましたけれども、やっぱり若い人たちの夢を本当に与えている仕事でありますので、これを是非、しかも、若い人の育成というものには本当に時間も手間もエネルギーも掛かる、そしてそのことを頑張っている方々がいらっしゃって、その方をも応援していかなければいけないことも事実であります。 非常にいろいろな複雑な要素を含んではおりますけれども、すべての関係者がこれならばということで、もう一回みんなが気持ちを一つに出直していける、そういう環境づくりに、文部科学大臣がということになるとなかなか御答弁がしづらいかもしれませんけれども、大臣も野球をお好きだと思いますが、かつ、日本の野球界そして社会に対して大変なリーダーシップを発揮していろいろな分野でいただいております伊吹大臣、個人の立場でも結構でありますし、大臣の立場、どちらでも結構でございますが、今回の問題についての大臣の、大臣のというか伊吹先生の、大臣のと言うと答弁が限られてしまいますので、伊吹先生の御感想と、そして個人としての思いでも結構でありますから、みんながもう一回出直そうじゃないかと、そして、もっともっとすばらしい野球にしていこうじゃないか。そして、昨年も王監督率いるチーム・ジャパンによって僕たちは本当に大きな勇気と元気を与えていただいたわけであります、その後の王監督の闘病のことも含めてですね。そうしたことで大臣の、伊吹先生のお考えといいますか、御決意というものをお聞かせいただきたいと思います。 国務大臣(伊吹文明君)先ほど来の先生の御議論をずっと伺っておりまして、政治家としての私の基本的な考えを少し申し上げたいと思うんですが、私たちは、何か事件が起こったり妙なことが発生しますと、そのことがもう必ず悪いことだという社会の大きな風潮みたいなものができちゃって、そして必ず制度を変えろと。何か今のことは悪いんじゃないかという意見があって、制度をよく変えるんですね。変えてみたけれども、そうすると、なるほどそのことはなくなったが、今度は別の欠点がたくさん出てくるんですよ。 ですから、基本的に私は大切なことは、今回のことは決していいことだとは思いませんけれども、やはりプロ野球はスポーツ団体としてプロ野球の自主的な御判断で運営をされ、アマチュアの方々、学生野球は日本学生野球憲章というものを、みんながその精神を大切に規範意識を持って運営してもらえば、そう私はおかしなことは本来起こらない。ところが、人間というものは弱いものだから、どうしてもそのとおりできないんですね。 ですから、先ほど局長が申しましたように、いろいろ対話をして、先生から御注意があったようなことが起こらないようには話をしたいと思いますが、ここにいる我々、大臣じゃなくて伊吹がということからいえば、政治家がみんな考えなければいけないことは、本来自分の親元を離れて野球のタレントのある人を、金に任せてと言っちゃいけませんけれども、集めて、それで校名を、学校名をとどろかせるというようなことが本当に教育上いいのかどうなのか。まだ未成年の段階は、やはり基本的には御家庭の中で御一緒にやっぱり育てていくということだと思うんですね。 ですから、先ほど契約のお話もありましたけれども、金融とか運輸契約を諸官庁が見ているのは、それは不特定多数の方を相手にする業務だからなんですよ。我々は、借入れのときにどんな契約を交わしているのか、あるいは新幹線に乗るときにどういう契約があるのか実際はほとんど見ておりませんね。そんなものを見て新幹線に乗ったことはありません。だけれども、それは国土交通省はきちっとやっぱり見ているんですね。 先ほど公取から御説明したように、これは不特定多数の人じゃなくて、一対一との間のやっぱり雇用の契約の問題ですから、どこまで文部科学省が私は関与できるのかということは、少しやや、やはりこういう民間団体の運営については抑制的に私は対応するというのが政府としてのあるべき姿じゃないかと。もちろん、公益に反するとか大きな社会規範に反するということについては積極的にやらねばなりません。 だから、ドラフトの問題も、あるいはフリーエージェントの問題も先生さっきおっしゃいましたけれども、なるほど自由に選べるという、これは憲法上の職業選択の自由がありますよね。そうすると、プロ野球に入るという職業選択の自由はあるけれども、所属球団を選べるという自由を制約しちゃっているわけでしょう。だから、そこに自由希望枠というものを置いている。要は、そこのバランスの問題ですね。 ドラフトの後のフリーエージェントのことからすると、トレードというものがあるわけですから、本来トレードを自由に、かなり運用上選手の希望も聞いてやりながら運用できれば、私は、フリーエージェント制度というのはそんなに大きな、是非短縮しなければならないという問題でもない。 フリーエージェントを短縮すれば結果的にどういうことが起こるかというと、アメリカで今起こっているように、金を持っているチームは、ニューヨーク・ヤンキースのように金に任せて、日本にも若干そういうチームがありますけれども、幾らでも選手を取ってしまって、地道に選手を養成するというチームの姿勢がなくなる。そういうインスタント的な、金銭ですべてが動いていく社会というか、プロ野球界をつくってしまうということが、これから野球に対して希望を持っている青少年のためにいいのかどうなのかという観点もまたあるわけですね。 だから、少し何か事件が起こると、必ずこれが悪いのでこうしなければならないというよりも、先生の御注意を踏まえて、関係者にやはりもう少しルールを守って、そしてフェアにやってもらいたいということを関係局長から話をさせるということから始めてみたらどうなんでしょうか。私は、先ほど来のお話を伺ってそんな感想を持っております。 鈴木寛君まず、繰り返しますけれども、大臣からも、局長から話をしていただくということを今御答弁いただいたことは大変多とします。 ちょっと一点だけ誤解のないように申し上げておきますと、私が思いますのは、日本というのは、こういう問題が起こりますと、すぐ個人攻撃というか、個人の首を取れば事足れりとする傾向がありますよね。これは私は良くないと思っております。今回、特に一番、何というんですか、罪の薄いというか軽いというか、ある意味で私からすれば犠牲者である若い、一人は大学生、一人は社会人野球の選手が、ある意味では首取られたわけですね。この首取られたことで、要するに退部をさせられたわけで、それはルールに基づいていますからそれはしようがないんですけれども、それでもって何かこの問題は終わりましたよと言って済ますことは良くないですよということを言っていて、だから、日本の悪い癖って幾つかありますよね。要するに、個人攻撃とか個人の首を取ったらもう問題解決としてしまうと。それはまずやめましょうということを申し上げている。 じゃ、なぜこういうことが起こってしまったのかというと、やっぱりルールに、あるいは制度に、あるいは構造に何かひずみがあるんであれば、やっぱりそこも含めて、単にその関係者、要するに選手及びその監督さんですか、その関係者を処分してもうこれで終わったということで、実はその方々はむしろ犠牲者の方が強くて、今大臣もおっしゃったような、もっともっと、何というんでしょうか、このことにたけて、何というんですか、自分は利を得て、ある意味で、言葉のいいか悪いかは別として、そうした現場の関係者を処分して終わってしまうということで終わらせてはいけないんですよねということを申し上げているわけで、そのことは大臣も御異論ないと思うんですね。 であれば、こういうことを再発防止するためには、やはりきちっと構造的な背景の問題もちゃんと明らかにして、そしてそこを正さないと、要するに元を絶たないと駄目じゃないですかということを申し上げていて、そこはきちっとそういう観点からこういう議論をさせていただいたということを文部科学省としてお話しをいただけるということですから、そういうことですよね。 国務大臣(伊吹文明君)当事者を悪者にして、そして特にテレビ、バラエティー番組等で非難をすればそれですべてが終わるという社会風潮は、先生がおっしゃるとおり決していいものではないと思います。 今回見ておると、アマチュアの球界は、先生がおっしゃっていることをかなり理解して、私は良識的な対応をしていると思うんですよ。東京ガスのピッチャーは一年間の公式戦への出場停止を言われておりますね。早稲田の選手は大学から退学かな、停学か、停学のあれを受けていますが、野球生命が絶たれたわけじゃないんで、首になっているわけじゃないんですよ。かつてプロ野球球界も、裏金問題があったときに、一場選手は、やはり当時裏金を出して入れようとしたところへは入れなかったけれども、今楽天に入って活躍をしておりますよね。 ですから、当事者がやはり野球生命をきちっと維持できるような良識的判断はしていると。しかし、そのことが一般の方から見ると逆に甘いと言われているんだけれども、先生がおっしゃったように、本当の一番の元凶は別のところにいるわけですよね。そのことをしっかりと私たちは判断をして、そして、もう少し規範意識を持ってやってもらいたいという話をさせましょうということを先ほど来申し上げておるわけです。 鈴木寛君一番の元凶は別のところにいるという大変な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。 それと、もうこれは御答弁要りませんけれども、ちょっと後半の大臣のところで、若干確認というんですか、お分かりになっていると思いますが大事なことなんで。 トレードがあるからいいじゃないかとおっしゃったんですけれども、私が問題にしているのは、トレードというのは選手の意思でトレードじゃないんですよね。それは球団の意思でトレードなんですよ。だから、正にプロ野球における選手というのは、今の状況でいえば、商品を正にトレードしているということがトレードなんですね。で、先ほど公取からお話しいただいたように、いや、ちゃんと労働者なんです、雇用契約なんですということになれば、もう少しそのルールに当たっては選手の意思というものが反映されるというのがより望ましいんです。 それから、その当事者の契約自由に基づき、あるいは意思が反映されるということであると、先ほどのNPBの野球協約というのは、要するに統一契約書によると書いてあるわけですね。これは、大臣も労働行政に大変お詳しく、その最高責任者もやっておられたから分かりますが、その観点からすると、現に同じ四十五条の中で、監督とコーチは自由契約していいよというふうになっておきながら選手はこの統一契約に従えと書いてあるものですから、じゃ、なぜ監督、コーチと選手との間でその取扱いが違うんですかと。監督もコーチもある意味では雇用者ですよね。もちろん、ある意味で、労働法的に言えば多分管理的職にあるということだと思いますが、しかしそれは管理的職にあろうが、雇用関係にある両者が、例えばほかの会社の場合に、管理職の雇用契約といわゆる一般社員の雇用契約がここまで明確に制度上書き分けられているというのは、ちょっと労働法制の観点からするとやや不自然な格好になっているんですね。 ですから、逆に言うと、運輸約款とか銀行約款と違うという整理を、逆に言うと今日大分政府としてしていただいた。文部大臣もそういう御答弁いただいたし公取の方もそういう御答弁いただいたので、だったらきちっともう、今までは、これ請負とかの話になってしまうんですけど、今偽装請負とかいろんな労働法制上の問題があって、プロ野球選手はいわゆる雇用者なのかそれとも請負なのかというのが非常に法的にあいまいに来て、その文脈その文脈である意味で都合のいい解釈で、統一的な法解釈に基づく制度設計といいますか、法運用というのがなされてなかった部分があるものですから、今日の議論で大分政府としての今の、政府としてのということじゃないんですけれども、我々、国会の中でそういう関係が少し整理をされましたので、それであれば、要するに、どの整理論でもいいんですけど、フェアネスというか、正義と公正という観点で、そして基本的にはそれぞれの当事者の意思というものが最大限に尊重されると。で、必要な制限というのは必要最小限、公序良俗の範囲内に収まっているということがこれ大原則ですよね。そのことを常に確認をする必要がありますよねということを私、申し上げているということを御理解をいただいておきたいというふうに思います。 国務大臣(伊吹文明君)先生の御指摘はよく理解しているつもりです。そして、税法上は個人事業主なんですよ、プロ野球の選手は。ですから、要するにサラリーマンではないんです。ですから、単なる雇用契約ではないと私は思いますよ。そして同時に、契約金を契約する際に取っておりますから、企業からいうと一種の資産であるわけですよ。繰延資産であるわけですから、この選手をどこにトレードするかは、もちろん選手も人間ですから、選手の意見も、同意がなくてもトレードはできます、しかしトレードを受け入れないという自由はあります。しかし、受け入れない場合は契約に反することになりますから職を変わらねばならないということですね。今年でいえば、中村選手のようなケースが起こってくるということですよ。 ですから、この問題をどんどん詰めていくと、契約金なしで契約をするのかどうなのかというような問題も含めて、少しやっぱり抜本的に考えないといけないんじゃないでしょうか。 鈴木寛君大臣分かっておられておっしゃったんだと思いますが、トレードを拒否する自由はないんですよ、事実上はね、今の契約関係の中で。そこは訂正していただきたいと思いますが、結論は、私も申し上げたいこと、大臣と同じで、要するにやっぱり抜本的にきちっと整理をして検討していくということが必要だということを申し上げていて、それは最後大臣も同じことおっしゃっていただいたんで、是非そうした観点で大臣も問題関心を持っていただきたいと思いますし、そうした意識をこれからも深め、広めていきたいというふうに思います。 ちょっと時間が大分なくなってまいりましたので次のテーマに移りたいと思いますが、財団法人日本美術刀剣保存協会の件でございます。 これは既に国会でも問題になっております。私も大変心配をいたしております。私は、文化庁のこれまでの、平成十三年の立入検査、それに基づく指導、勧告、これ極めて適正だったと思って高く評価をしております。そして、しかしながらというか残念ながら、昨年の夏以降の文化庁による極めて適正なこの間の指導に対する財団法人日本美術刀剣保存協会の対応というのは、これは極めて不誠実、不適切だというふうに私は思っております。大臣もそうした御発言を国会答弁でされておりますので、私の認識と全く同じだというふうに思います。 とりわけやっぱりひどいと思いますのは、例えば二月二十六日に、ある意味で文化庁を愚弄するような発言あるいはそうした対応がなされていて、これは本当にゆゆしき、かつ、極めて遺憾な状況だなというふうに私は思っているわけでございます。 それで、文化庁もこの間粘り強く、再三事務局長を呼んだりして、六、七回呼んだりして指導に当たっておられる、対応に当たっておられるようでございますが、三月の二十六日、すなわち昨日、財団法人保存協会の方から、刀剣保存協会の方から一定の報告というんでしょうか、この間の対応についての報告がなされるというふうに聞いていたわけでありますが、それがどういうことに昨日なったか、ちょっとお話をいただけたらと思います。 政府参考人(高塩至君)今先生から御指摘ございましたように、財団法人日本美術刀剣保存協会につきましては、昨年来指導を行ってきているところでございます。 今先生から御指摘のございました、昨日、三月二十六日までの報告ということは、先週、私どもの課長名で向こうに求めたところでございますが、大臣から、実は明日、現在の佐々会長が私のところに参って協議をするということがございましたために、この三月二十六日というのを改めまして、三月の三十日まで、今月末までに明日の話合いを得た上で報告書を提出するように求めたということでございます。 鈴木寛君いよいよ大臣が佐々会長とお会いになるということですか。 政府参考人(高塩至君)恐縮であります、私が明日会うということでございます。 鈴木寛君今までは事務局長が対応されていたようでありますが、会長が文化庁に来てということで、次長にお会いになるということですね。 是非、これ大臣、きちっと次長に指導をされるんだと思いますが、これ、どういう方針でこの刀剣保存協会に対してこの間のことを臨まれようとしているのか、ちょっと改めてお聞かせいただけますでしょうか。 国務大臣(伊吹文明君)再三、衆参国会で御答弁を申し上げておりますように、事の発端は、非常にアンフェアな印象を持たれる、仲間内の刀剣を仲間内で評価をして、そして、それによって実は権威が付いて市場価格が高くなるということについてのいろいろな御批判があったわけですから、そのことについて文化庁が種々指導をし、そして、橋本龍太郎先生が会長のときに、橋本先生は、そのような文化庁の指導に沿って協会の体質を改めねばならないという御指導をしておられる事実があるんですね。そのことを念頭に置いてだと思いますが、会印を押した、会印というか会長名の、会長名だったかな、事務局長名の判こをついた改善の文書が出てきているわけです。 普通は、民法上、社会の良識からしますと、公印を押したもので出てきたのは当該団体の意思と受け止めるのがこれは当たり前であって、そのことは、しかし後で、あれは内部の不十分なことがあって、必ずしも団体の意見ではないということを言ってきて、そして、橋本会長に御不幸があってからなかなからちが明かなくなってきているということですから、一番最初の原点に戻すように話をしたいということでございます。 鈴木寛君これ、相当私、悪質だと思うんですね。やっぱり、文化庁からそういう指摘を受けて、これ非常に真っ当な指摘ですよね。それで、橋本龍太郎先生の御不幸があって、しかし、まあいろいろ、普通であればこれはもう一発で文化庁の御指導に従ってこうやってこういうふうにしまして今後きちっと出直したいと思いますというふうになるのが極めてこれ常識的なといいますか、通常の対応だと思うんですよね。それが何でここまで、半年といいますか、一年になろうかという状況でありますけれども、続いているのかということは私、本当に疑問、大いに疑問であります。 それで、逆に言うと、ただ、これかなり確信犯的な、何というんでしょうか、対応といいますか、あるいは私は文化庁も愚弄されているところもあると思うんですけれども、もちろん、今まで粘り強く文化庁、御対応されてきて、それはそれで結構だったと思うんですけれども、もちろんこれはデュープロセスに従ってちゃんとやっていかなきゃいけませんから。 しかし、余りにも不誠実がこれから続くようであれば、やはりこれは、それこそデュープロセスに従って、文化庁もやっぱり毅然たる態度というんですか、毅然たる措置というものを私はしていく必要が、まあ明日の対応いかんではということになるんだと思いますけれども、あると思いますが、これ、今後、もちろん明日の対応いかんですと、こういうお答えになるんでしょうが、従来のような文化庁に対する私はある意味では非常に適切でない対応が続くようであれば、これはやはり文化庁も覚悟を持ってきちっと適切な指導あるいは措置をする必要があると思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。 国務大臣(伊吹文明君)先生、先ほど先生からるる御質問があった野球界のことについても私は申し上げましたけれども、民間の組織でございますので、できるだけその運営に官が立ち入って人事その他に口を出すということは、よほど相手がひどいことでない限りは、まあまあこれは慎むというのが行政の本来の姿なんですね。そういう形でずっとやってきましたけれども、なかなか確かにらちが明かないと。 そこで、公益法人については、御承知のように、民法の六十七条の二項、三項、七十一条という規定がありますので、これはラストレゾルトとしてこういうものがあるというふうに理解をしながら、やはり自主的に一般社会から御批判を受けないように健全に運営していただくよう、会長が来られたら次長から話をさせるということだと思います。 鈴木寛君これは財団法人なんですよね。正に公益法人なんですよね。 公益法人というのは、正に不特定多数、世の中のために事業活動を行うがために財団法人の認可がなされて、それに伴って様々な恩典といいますか、をも享受しているということでありますから。しかも、公益性の判断あるいは公益目的に基づく業務運営については、これは文部科学大臣が明白な権限と責任を有しておられる。しかも、この刀剣保存協会は、国から二百六十五万円の補助金も出ている団体ですよね。それから、文化財保護法に基づく重要文化財の管理団体でもあるわけでありまして、公益法人の中でも更に今申し上げたような公金が出ていると、税金が支出されている。それから、正に我々の日本の財産である重要文化財を管理をするということを指定をされているという団体でもあって、これは極めて公益性の高い団体でありますから、それに対してはやはりきちっと毅然たる態度でもって臨んでいただきたいということを改めてお願いをしておきたいと思います。 その点は是非よろしくお願いをいたしたいと思いますし、また、明日以降の対応については私たちにも御報告をいただければ有り難いなというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。 それで、次に移りますけれども、今回の国立博物館法の改正法案なわけでありますが、これは事務的にも申し上げましたけれども、私は、新しいこの法人の名前に博物館という名称がなくなってしまったことは大変残念に思っております。もちろん、これはいろいろ知恵があって、博物館と文化財研究所ですか、例えば博物館・文化財機構とか、いろいろな知恵の出し方はあったんではないかなというふうに思いますが、今回の名称になっているということは私は残念だったなと、こういうふうに思っております。 それで、もちろんその間の経緯等々については、ちょっともう時間がありませんので、既に我々民主党での部門会議でもお話をいただきましたので、それについてのお答えは結構ですけれども、そのやり取りの中で感じましたことは、博物館あるいはミュージアムというものについての認識というのが、少し私たちの認識と文部科学省、文化庁との認識が違うのかなということを心配をしているんですね。 といいますのは、ミュージアムというのは今や単にハード、物のコレクションではなくて、それももちろん重要なメーンな業務の一つでありますが、ミュージアムというのは正にそれは運動体なわけですよね。日本の芸術、文化、学術を振興して、そのために必要な知恵あるいは研究という活動、いわゆるソフトな活動もやり続けていく。それから、それに従事する人材というものをそれこそ育成をしていくと。こういうハードウエアとソフトウエアとヒューマンウエアと、この三つがいずれも重要で、そうしたことを非常にうまく目配りをしながら、かつ、有機的な連携も考えながら総合的に日本の文化の充実というものを具体的に実践をしていく、その活動主体は私は博物館だというふうに思っているわけなんです。 今回、いろいろ条文を見てみました。大変残念なのは、確かにこれ、総務省とか財務省とかに言われて、独立行政法人の合理化というんでしょうか、有機的連携もあるんでしょうけれども、そういうようなある種受け身的な、きっかけはですよ、きっかけはそういったことだったと思います。しかし、私はこの際もう一回、今申し上げたような考え方というのは恐らく文化庁も共有はしていただいているんだと思うんですけれども、そのハードとソフトとヒューマンと、人材と、なんですけれども、いや、それはそうだという話になるんですけど、であれば、今回きちっと法案の中にも、法律上もそういう位置付けといいますか、再定義というんですか、改めてきちっとそうした、博物館というのはこういう機能を持っているんですよということを位置付けていただいたらよかったんではないかなということが一つ。 それから二つ目は、今回もう一回考え直していただきたかったことは、今回の新しい文化財機構が所管をするのは四つの国立博物館ですよね。それ以外にも、科学博物館というのは、これは生涯学習政策局が別に所管をしていて別の独立法人として存在をしますと。それから、民博とかあるいは歴史博物館、これは研究振興局が所管をする独立法人として存在をしていると。それから、同じ文化庁でも、先日六本木に新しく生まれました国立新美術館も含めて、国立美術館という枠組みもあると。美術館、これ英語で何と言うのか分かりませんけれども、これもアートギャラリーなんでしょうか、あるいはアートミュージアムなんでしょうか分かりませんが、いずれにしてもミュージアムのグループとして位置付けられるということはあるんだと思います。 こうした日本のミュージアム行政というかミュージアム政策ということを、もう一回一からあるべき論というのを議論して、そして今後それがうまくいくようにやっていくという、そういう組織論の在り方、機構論の在り方ということももっと踏み込んで見直していただくいいチャンスだったのにもかかわらず、それが私は不十分だったんではないかなというふうに思います。 それから、そういう観点で申し上げますと、さっき申し上げました人材、人間の部分ですね。なぜ、日本が文化財あるいは文化あるいは芸術といったことについてまだまだ十分でないところがあるとすれば、アーティストとか、あるいはそういったものの職人、あるいは伝承をする技術者、もちろんこうしたものの振興ということはかなり文化庁も掲げておられますけれども、むしろそうしたアートプロデューサーとか、あるいはそうした人材を育てるためのいろいろなコーディネーションをする方とか、そういう人材の養成というところ、あるいは学芸員の養成とか、もっと広範な人材育成というところがやっぱり日本は不十分だったというところはあると思うんです。そうした人材育成の在り方、要するに今まで育ててきた人材だけでよかったのか、もっと別にそういった必要があったんではないかとか、人材の点というのは物すごく重要だと思います。 それから、ソフトウエアに関する事業についても、ただ単に物理的に美術館なり博物館に日本じゅうから集まってくださいというのも結構ですけれども、これだけITの世界で、要するに正に国の宝物でありますね、いろいろなコレクションをもっといろいろな形で見せていく。例えば、デジタルアーカイブのようなものとか、あるいは国民全体の芸術、文化、学術に対するリテラシーというんでしょうか、そういう意識を高めるということも私はミュージアムとしての重要な要素だったと思うんですけど、何かこういうことがもっともっと議論をされてもよかったのになと。そのことがきちっと法文上も位置付けられてもよかったのにな、あるいはこれを機に、ただ単に縮小ということだけじゃなくて、きちっと新しい事業にもう一回再構成されるとか、それに予算も付き、あるいは事業も出ていくとか。 そうすると、単に何か縮小の中のリストラじゃなくて、リエンジニアリングという言葉がありますけれども、きちっともう一回全業務を見直して、なるほどと、ああ、これで新しくむしろ効率的、効果的に芸術・文化政策が進んでいくなと、そういうことになってほしかったなと思うんですが、なかなかそういう意味で私は今回の法律改正というのは不十分な点が否めないなと、こういうふうに思っております。 この点、時間もうございませんので、是非こういうことは、今回の法律が変わるわけでありますけれども、ちょっと引き続きこうした問題についてはやはりもっと抜本的に検討していただいて、もっと攻めのミュージアム行政をこれを機にやっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。 国務大臣(伊吹文明君)御意見はごもっともだと思います。 先生のおっしゃっていることは提出しております法案にある程度やっぱり書いておりますので、例えば十二条の三号というのがあって、「前号の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の事業を行うこと。」、それから七号に、「文化財に関する情報及び資料を収集し、整理し、及び提供すること。」、八号に、二号、三号及び前三号の業務に関し、「地方公共団体並びに博物館、文化財に関する調査及び研究を行う研究所その他これらに類する施設の職員に対する研修を行うこと。」と、こういう根拠は置いてありますので、今おっしゃったことを拳々服膺して、行政の執行の在り方の中でできる限りのことをさせたいと思っております。 そして、確かに美術館、民博その他との、これは私が大臣になる前に既にやっておったことですから、私が後追い的に批判することはしちゃいけないと思いますが、やはり縦割り的な弊害があったのかな、あるいはやはり一緒にできないそれなりの理由があったのかなと、いろいろなことを考えながら今先生のお話を伺っておりました。 鈴木寛君前号に関するというのがあるんで業務が限定されているということを私、申し上げているんです。その前号というのは、有形文化財を収集、保管、公衆の観覧ということになっちゃうんで、それはだからハードの、物の要するにコレクションとそれの展示ということに限られているから、そこをもっと広げましょうと。 だから、そういうことがあることは分かっているんですけれども、そうじゃなくて、もっとやっぱり文化財とかあるいは学術、芸術、文化振興、歴史ということについての、やっぱり広く人材育成とかそういった日本の文化的な教養を高めていくための国民の事業にも乗り出してくださいと、こういう意味でございますので、申し上げたいことの意は酌んでいただいていると思いますので、これからの行政の中で是非反映をしていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。 |