2006年10月4日 本会議
〜総理所信表明演説に対する代表質問〜
○議長(扇千景君) 鈴木寛君。
〔鈴木寛君登壇、拍手〕
○鈴木寛君
(はじめに)
民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
私は、初当選以来、一貫して教育問題に取り組んでまいりました。これまでほとんど注目されることがなかった教育問題を安倍総理が最重要課題として取り上げていただきましたことは、率直に歓迎を申し上げます。これをきっかけに日本じゅうで教育論議が沸き起こりますことを期待して、質問に入らせていただきます。
(美しい日本)
私は、昨年九月から、民主党、次の内閣の文部科学大臣を務めさせていただきました。本年五月、我々民主党は日本国教育基本法案を提出し、その前文に、美しいものを美しいと感ずる心をはぐくむとの一文を盛り込み、提案理由で、物質偏重主義を脱し、コミュニケーションや知恵や文化などをより重視する情報文化社会の創造を目指すと述べました。
また、私自身、七年前、慶応大学で教鞭を執っておりました折、二十一世紀には美意識、美徳、良心に基づき人々が自発的な活動を行うという功利を超えた価値観が醸成されるとの考えを出版などしておりましたので、安倍新総理が美しい国づくりを唱えられることは結構なことだと思ってはおります。
しかしながら、総理の言動は余りにも矛盾と欺瞞が多過ぎます。せっかく美しい国を口にされるのであれば、もっと整合の取れた議論をお願いを申し上げます。
(損得を超える価値)
総理も、損得を超える価値を大事にと著書で書いていらっしゃいます。正に美しい国づくりとは、経済合理主義、功利主義を超えて、多くの人々がそれぞれの美学に基づき自発的に社会に貢献し、そのことを美しいこととしてみんなが応援をする社会をつくることであります。
しかし、そうした社会とは対極の、損得を価値判断の重要な基準とする社会をこの五十年の長きにわたってつくり続けてきたのは、ほかならぬ自由民主党であります。そして、安倍総理が支え続けた小泉政権はそれに磨きを掛けてこられました。その自由民主党が美しい国づくりを行うことなど到底不可能であるということをまず申し上げておきたいと存じます。
それが証拠に、損得を超える価値には、貸金業者の損得よりも庶民の生命、人生を守る価値も当然に含まれますが、現在、政府・与党は貸金業者の損得を優先する法案を成立をさせようとしております。
また、生命、健康も、本来、損得を超える大変貴重な価値であるはずです。我が国の国民医療費はGDPで八・〇%、そのうち税金投入分は一・三%、アメリカは医療費総額がGDPの一五・三%で、税金投入額がGDPの四・七%となっており、我が国の医療費への税金投入はある程度抑制をされているにもかかわらず、小泉政権はそろばん勘定だけで医療を考え、高齢者の自己負担を引き上げ、医療現場への診療報酬を引き下げてきました。安倍総理もこれまでの現場無視の医療政策を継承していくお考えか、お答えをください。
(子育ての価値)
総理は、御著書の中で、子育ての価値は損得を超えるとも書いていらっしゃいます。私も全く同感でありますが、であれば、父親、母親に平気でサービス残業や休日出勤を強いている企業に対しても全く同じことをおっしゃってください。そして、ワーク・ライフ・バランスを重視した労働法制を速やかに再構築してください。お願いを申し上げます。
小児科、産科の医師不足問題も損得を超えて真剣に取り組んでいただきたいと存じます。私は、今年の三月、周産期医療の崩壊をくい止める会の皆さんを厚生労働大臣のところへお連れいたしましたが、小児科、産科を始め高度医療や終末医療を担っておられる医療スタッフは、余りにも過酷な労働条件の下、また、本年二月の福島県立大野病院事件以降は、たとえベストを尽くしたとしても、結果が残念な結果に終われば逮捕されてしまうかもしれないというリスクにおびえながら働いておられます。そうした職場に耐え切れず辞職する医師も続出し、多くの産科病院が閉鎖に追い込まれてしまいました。
総理、こうした医療現場を正常化するためにも、医療事故に関し、より公正かつ適正な法適用を可能にする、事実解明、原因究明に関する第三者機関の設立を検討していただきますよう、お願いを申し上げます。併せて、お産に関する無過失賠償制度の検討も早急に行っていただきますよう、お願いを申し上げます。
また、日本の医師数は人口千人当たり二人とOECD平均二・九人に比べてもかなり少なく、更に高齢化が進む中、臨床現場のマンパワー不足は明らかであります。にもかかわらず、厚生労働省は、医師の偏在はあっても全体では足りていると、このように強弁をし続けております。是非、総理、医師不足や医療現場の労働基準法違反の実態を調査し直すように厳命をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
こうした課題に真剣に取り組むことなく、単に美しい国づくりを字面だけで語っているのだとしたら、それは国民への大変な冒涜であります。
(教育基本法)
総理は、教育改革の課題として基礎学力の向上と規範意識を身に付けることを挙げていらっしゃいますが、今日最も深刻なのは、三年前から急増し、二〇〇五年では二千十八件にも上っている子供による校内暴力や傷害事件の続発と、子供の生命自身が脅かされる事故、事件の頻発であります。今こそ生命の大切さと自らの命を守ることをしっかりと教えていくことが極めて重要だと考えますが、総理の御所見を伺います。
こうした中、我々民主党は、日本国教育基本法案に、生の意義と死の意味を考察し、命あるすべてのものを尊ぶ態度を養うことは教育上尊重されなければならないとの一文から始まる、全四項目に及ぶ生命及び宗教教育に関する条文を盛り込みました。ちなみに、政府案は、中教審の案からも後退して、宗教教育については「一般的な教養」との文言を追加するにとどまっております。さらに、我々は、インターネットの光と影や国語力教育の充実など、「情報文化社会に関する教育」に関する条文も盛り込みましたが、政府案ではインターネット教育については一切触れておりません。
総理、我々のこうした案を参考に政府の基本法改正案を改めて見直してはいかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
(教育予算)
総理は、教育改革の具体論として、授業時間増、外部評価、教員免許更新制の導入を掲げられましたが、教育予算については一切言及がありません。安倍総理の教育改革論の最大の欠陥は、教育予算の話が全く語られていないことにあります。我々民主党は、教育こそ未来への最大の投資だと認識し、コンクリートから人づくりへ予算を回すべきだと考えております。
そもそも、我が国の教育予算ですが、初中等教育の公財政支出はGDPの二・七%、高等教育へは〇・五%。米国ですら初中等教育に三・八%、高等教育に一・四%です。フィンランドは実に、初中等教育に四・〇%、高等教育に二・一%、教育にお金を掛けています。
民主党の教育基本法案では、教育振興計画にGDPに占める公財政支出の比率を明記し、教育予算を少なくともまずは米国並みに引き上げていくことをうたっております。
我が党のこうした主張を自民党幹部はばらまきだと批判し、自民党は本年五月、今後教育費は大幅に削減するとの方針を決定をいたしました。教育予算の増額については、それをばらまきだと考える自民党と、それを未来への投資だと考える我々民主党で立場が百八十度違っております。
教育を叫ぶ安倍総理、教育削減のこの自民党の方針を踏襲されるのであれば、正にそれは欺瞞であります。コメントがあれば伺いたいと思います。
(教育現場の実情)
安倍総理の改革手法は、一言で言えば、教育現場に対する圧力強化と兵糧攻めであります。北朝鮮に対してはそれで結構でありますが、日本の教育現場は我が同胞によって支えられているのです。
多くの教師たちは、教育委員会への報告書作成に追われ、様々な事情を抱えた保護者の対応に疲れ、テレビ漬けで切れやすくなってしまった生徒児童を様々な制約の中で指導しています。そうした中、燃え尽きる教師も続出しています。教師の自殺も相次ぎ、精神性疾患による休職者数は三千五百五十九人に及んでいます。これが教育現場の実情であります。
私は、七年前、金子郁容教授とともにコミュニティ・スクール構想を提案しましたが、本来国がなすべきは、現場における教師と親と地域との対話と協働を促し、学び支援のコミュニティーを全面的に応援していくことであります。
教師をバッシングしていっときの世間の注目と支持を集めても何の意味もありません。現場を締め上げれば教育は再生できるとの安易な認識は、この際改めていただきたいと思います。
(教育格差の是正)
そもそも、人を育てるためには、愛情を込めて、手間を掛け暇を掛け、目を掛けて、心を配ってあげることが必要であります。そのためには、教育人材の質と数が確保されることが不可欠であります。
まず、絶対に解決しなければならないのは教育格差の問題です。再チャレンジを言う前に、人生の第一回目のチャレンジでだれもが同じスタートラインに立てるよう、すべての人々がそれぞれにふさわしい教育機会を享受できるように全力を挙げるのが我々政治家の務めであります。格差の是正に本腰を入れればおのずと学力も向上をいたします。
〔議長退席、副議長着席〕
つまり、二〇〇三年、PISAが行った国際学力調査で、読解力が世界十四位に転落をしたことが明らかになりました。習熟度最上位を示すレベル五の比率は、二〇〇〇年も二〇〇三年も全体の約一割で変わっておりません。しかし、レベル二、レベル一、レベル一以下の合計が二〇〇〇年調査では全体の二八%であったものが二〇〇三年には四〇%に増えたことによって平均点が下がってしまっているのであります。レベル二以下の子供の多くは、塾に通うことができない経済的余裕のない家庭のお子さんであります。こうした子供たちに対する底上げを図ることこそ公教育にとって最も必要なことだと思いますが、総理はいかがお考えですか。
底上げに必要なのは、補習や少人数教育のための人員増であります。フィンランドの授業時間は決して長くありません。しかし、生徒当たりの教師数は日本の約二倍であります。
しかし、この春に成立した行政改革推進法は教員を五%削減することを法定化しておりますので、この法がある限り補習や少人数教育の実現のための教員増は困難であります。安倍総理が学力向上を掲げても、行政改革推進法を見直さなければ何もできません。総理、この改正に踏み切る覚悟がありということなのでしょうか、お答えください。
また、私は、土曜学校運動や放課後学校などを提唱してきました。来年度に向けて放課後等支援事業を新規要求していただいていることは評価をいたします。ただ、補習など必要な中学生に対しても十分に配慮していただきたいと存じますが、文部科学大臣の御所見を伺います。
(奨学金の充実)
さらに、格差解決に不可欠なのは、高等学校、大学、専門学校、そして高専などにおける奨学金の抜本的充実であります。私は、一貫して希望者全員奨学金制度の実現を訴えてまいりました。我が国の高等教育費における自己負担比率は約六割に上っております。米国ですら三割、フランス、ドイツは約一割、フィンランドはわずかに三・五%であります。民主党の教育基本法案でも高等教育の漸進的無償化と奨学制度の充実を盛り込んでおりますが、これこそ教育格差解決の切り札であります。
総理、奨学金充実に是非とも本腰を入れていただきたいと存じますが、いかがでありましょうか。
(学校評価)
総理がおっしゃる外部評価の強引な導入は現場をゆがめるおそれもあります。美しい国とは、数字にならない価値をも大切にする社会でもあります。人間の能力や業績も数値で測り得るものと測りにくいものがあります。外部評価のみを強化すると、学校は、現場は数値化できない仕事の軽視を始めざるを得ません。また、十分監査能力のある監察官の確保は極めて困難でありますから、評価の信憑性が疑われる事態も発生しかねないのであります。
我々は、むしろ地域住民や保護者を始めとする学校関係者、当事者たちによるコミュニティー評価がより有効だと考えております。監察官の目はごまかせても、日ごろ接している保護者や地域ボランティアの目はごまかせません。と同時に、コミュニティー評価は、教師だけが一人で抱えていた問題をみんなで共有し、教師や地域住民、保護者との対話と協働のきっかけにもなり得ます。
コミュニティー評価を普及させるためにもコミュニティ・スクール化、地域立学校化は極めて重要な課題であり、我々民主党は、教育基本法案の中で地域立学校化の全面的な推進を制度的にきちっと明記をさせていただいているところであります。既に五反野小学校で実証をされていますが、コミュニティー評価によって教師たちはどんどん成長をしています。こうした実践を踏まえて、外部評価の導入については慎重に検討をすべきであると思いますが、総理の御所見を伺います。
(教員免許更新制)
教員免許更新制については、校長などから強い懸念の声がわき起こっております。校長、教頭が免許更新の判定を実際には行うということになりますが、仮に十年に一度だとして、全国の教員百万人の約一割に当たる十万人の審査に毎年大事な管理職の時間が忙殺をされてしまいます。それだけの社会コストを払ったとしても、多くの学校では形骸化し、教員の質向上には恐らくつながりません。
指導力不足教員対策では京都市が既に実績を上げております。それを広げていった方が明らかに有効であります。京都市は、人権擁護委員やあるいは臨床心理士といった専門家も入れて丁寧に研修や対話を積み重ね、本人の自覚を促し、相当数の指導力不足教員を実際に退職をさせています。
また、今後は、学校経営、教科指導、生活・進路・キャリア指導などの専門コースを教員専門職大学院に設け、十年研修やe―ラーニングなども活用して修士課程を修了させ、実務経験などを勘案して、上級の専門免許などを交付するようにしていけば、それを目標に教師は前向きに研さんに励みます。
総理、是非ともこうした蓄積された議論を参考にして、免許更新制の導入についてはきちっと慎重に議論をすべきだと考えます。総理の御所見を伺いたいと思います。
(さいごに)
最後に、総理にお願いがございます。
教育、医療を始め、世の中の様々な現場の方々にもっともっと思いをはせていただきたい。全国津々浦々の教育現場、医療現場では、今日も朝早くから深夜まで大勢の医療スタッフ、教育スタッフが様々なプレッシャーや劣悪な環境に耐えながら一生懸命頑張っていただいております。ごく一部の非難されるべき教師や医師を除き、大多数は本当にまじめに誠実に生徒の人生や患者様の命を使命感を持って預かり、その任務を全力で全うしようと、それこそ損得を超えて日夜研さんと精進を重ねておられます。
しかし、小泉政権の五年半、そうしたまじめに頑張る現場の人間が余りにもないがしろにされてきました。その結果、現場のプロたちの献身的な努力も力尽き、限界に達しつつあります。安倍総理、私が本日お伝えをしたかったことは、あなたの側近たちがやろうとしていることは現場を支えるプロの皆さんのプライドや職人魂を踏みにじる危険性を大いにはらんでいるということであります。
美しい国づくりは、誇りや美学を持って一生懸命頑張っておられる現場の皆さんに、まず我々自身が心から敬意を払い、心から信頼を寄せることによって始まっていくのだということを申し上げ、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木寛議員にお答えをいたします。
医療政策についてのお尋ねがありました。
医療制度については、急速な高齢化の進展に伴う医療費の増加が見込まれる中で、将来にわたり持続可能なものとしていくことが不可欠であります。
このため、先般の改革においては、低所得者に配慮をしながら患者負担を見直すとともに、小児科、産科等を重点的に評価しながら全体としては診療報酬の引下げを行ったほか、生活習慣病予防や長期入院の是正、七十五歳以上の高齢者を対象とした新たな医療制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合など、超高齢社会を展望した医療保険制度体系の見直しを行うこととしたところであります。
今後とも、将来にわたり持続可能な制度を構築する観点から必要な改革に取り組んでまいります。
ワーク・ライフ・バランスを重視した労働法制についてお尋ねがありました。
就業形態の多様化や長時間労働者の割合の高止まりが見られる中で、安心、納得した上で多様な働き方を実現できる労働環境を整備することが重要であると考えております。このため、労働契約のルールや労働時間制度の整備について検討を進めているところであります。法的措置を含め、ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方の推進等に努めてまいります。
医療事故の究明、お産に関する無過失補償制度についてお尋ねがございました。
医療の安全、安心の確保は医療政策における最重要課題であり、医療事故の死因究明を公正かつ迅速に行うことは、事故の発生予防、再発防止や紛争の早期解決等の観点から必要なことと考えています。このため、本年度内を目途に医療事故に係る死因究明制度の試案を提示をし、来年度には、有識者による検討会を開催し、その議論を踏まえ必要な措置を講じることとしております。
また、お産に関する無過失補償制度については、安心してお産ができる環境整備のための一方策であると認識をしております。具体的な仕組みがつくられるよう、精力的に検討が進められることが重要であると考えています。
医師不足や医療現場の労働基準法違反の実態調査に関するお尋ねがございました。
医師の数については、毎年三千五百人から四千人程度増加をしており、まだ過剰な状態には至っていませんが、将来的には必要とされる医師の数を上回る数の医師が供給されるとの見込みを本年七月に示しております。また、労働法規の遵守状況等については既に必要な調査を行っております。いずれにいたしましても、地域間や小児科、産科等の診療科間において医師の偏在が生じていることから、医師確保のための各般の施策に取り組むことにより、地域医療の確保に努めてまいります。
命を大切にする教育についてお尋ねがございました。
子供たちに生命の大切さや自らの命を守ることを教えることは極めて重要であります。
学校教育では、道徳の時間等において、失われた命は二度と回復できないことなど、命の尊さを理解し、掛け替えのない自他の生命を尊重する態度を育てるための教育を行っております。また、子供たちが危険を予測し、回避能力を身に付けて犯罪から自らの命を守るため、具体的な対処方法を身に付けさせる防犯教室などの実践的な安全教育を進めているところであります。今後とも、このような教育を推進をしてまいります。
教育基本法についてお尋ねがありました。
新しい時代の教育の基本理念を明確にし、国民の共通理解を図りつつ、社会全体による教育改革を着実に進め、我が国の未来を切り開く教育を実現するにふさわしい法案として政府として教育基本法案を前国会に提出をいたしたところであります。
政府提出の教育基本法案においても、生命や宗教に関する教育の重要性にかんがみ、生命を尊ぶ態度や宗教に関する一般的な教養を新たに規定しているところであります。一方、教育の理念や基本原則を規定するという教育基本法の性格にかんがみ、政府案においては、お尋ねのインターネット問題のような個別具体的な事柄は規定していないところであります。
なお、民主党提出の日本国教育基本法案については論評を差し控えたいと思いますが、国会においてそれぞれの法案について活発な議論が行われることを期待をいたしております。
教育予算についてお尋ねがございました。
教育への投資は、我が国の発展に欠かすことができない未来への先行投資であります。豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間の育成に向けた教育再生に取り組むためにも、教育予算の内容の充実は重要であります。
一方、我が国財政は極めて厳しい状況にあることから、歳出歳入の一体改革も重要な課題であり、効率化を徹底しながら、めり張りを付けて必要な財政措置を講じてまいります。
次に、教師に対する基本認識についてお尋ねがございました。
私も、教育現場で本当に努力をしておられます多くの教師の皆様方に対して本当に心から敬意を表している次第であります。
教育は人なりと言います。教育の再生のためには、この言葉のとおり、教師が意欲を持ち続け、その能力を高めながら最大限の力を発揮してもらうことが極めて大切であります。このため、体系的な研修の充実、優れた成果を上げた教師に対する優秀教員表彰の実施、能力、実績に見合っためり張りを付けた教員給与体系の検討などを進め、教師の資質向上のための取組を積極的に行ってまいります。
経済的余裕のない家庭の子供たちに対する教育の充実についてお尋ねがございました。
家庭の経済力にかかわらず、すべての子供に高い学力と規範意識を身に付ける機会を保障することが必要であります。このため、習熟度別少人数指導など個人個人に応じた指導の充実や、必要な授業時間数を十分確保することにより基礎、基本の確実な定着を図るとともに、教員免許の更新制度や外部評価を導入するなど、公教育の再生に努めてまいります。また、家庭や地域の教育力の向上を図り、社会全体で教育再生に取り組む環境を整えてまいります。
行革推進法の教員部分の見直しについてお尋ねがございました。
簡素で効率的な筋肉質の政府を実現するためには、教員も含めた公務員の総人件費改革など、行政改革の推進は必要と考えております。その際、公立学校における教員の質の低下をもたらさないよう、習熟度別少人数指導などに必要な定員を確保するとともに、教員の質の向上や必要な授業時間数の十分な確保などにより学力の向上を図ります。
奨学金についてお尋ねがございました。
家庭の経済状況により修学の機会が奪われないよう、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であると考えております。現在、無利子、有利子合わせた奨学金事業全体で見れば、要件を満たす希望者のほぼ全員に貸与できているところであります。今後とも、健全性を確保した奨学金制度の充実等を推進し、我が国の将来を担う学生等を支援してまいります。
学校の外部評価についてお尋ねがありました。
学校教育の質を高めるためには、学校が教育目標を明確に設定し、評価をしっかりと行い改善を図っていく学校評価システムを構築することが重要であります。その際、御指摘のように、保護者や地域住民などによる評価が有効であることは言うまでもありませんが、客観的な観点から行う第三者による評価は、保護者や地域住民が行う評価の材料としても役立つと考えられ、信頼される学校づくりのために重要であると考えています。
いずれにいたしましても、学校評価については、学校同士が切磋琢磨して質の高い教育を提供できるよう外部評価を導入する必要があると考えています。
教員免許更新制についてお尋ねがございました。
学校教育の成果は教員の資質と熱意に負うところが大きく、定期的に教員の資質、能力の刷新を図ることは極めて重要であります。その意味で、教員免許の更新制度の導入は、教員の意欲を高め、ひいては教員の質の向上に大きく寄与するものと考えております。内閣に教育再生会議を早急に発足させ、その推進を図ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣伊吹文明君登壇、拍手〕
○国務大臣(伊吹文明君) 鈴木寛議員にお答えを申し上げます。
お尋ねは、放課後等の支援の事業についてであります。
もう社会が随分変わってまいりましたので、核家族化が進み、そして共働きがほとんど現実のものとなっております。したがって、義務教育の小学校に入った後は、授業が終わった後、それから夏休み、冬休み、春休み、お父さん、お母さんが帰ってくるまでの間、いわゆるかぎっ子現象というものが起こりますから、これを放置しておくということは、子供の安全のためにも、あるいは学力を付けるためにも、あるいは人格形成の上からも決していいことではありません。
鈴木議員からもいろいろ御示唆をいただいているということは文科省から伺っております。で、入学前はこれは夜間保育等の若干の受皿がありますが、義務教育になるとこれは非常にその受皿が少ない。したがって、地域の教育力と学校を利用した力を合わせて文科省でやると同時に、保育の機能を持っている厚労省も併せて御示唆のような放課後支援の事業を進めていくということは、教育上の問題だけではなくって、少子化対策のためにも非常に大切なことだと思います。
今般は小学校を中心に予算要求をいたしましたけれども、自治体の運用によって余裕があるときは、御示唆のように中学校にその範囲を広げる、また、うまくいけば将来各党の御支援も得て更にその範囲を拡大していけばいいんではないかと思っておりますので、よろしく御協力をお願いします。(拍手)