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弘文堂 情報学事典 原稿
◆ネットワーク 〔英〕network

Ⅰ〔ネットワーク〕
 網・脈・系・組織、特に情報網等を意味する。あるや機能を全体として有する自律的な各単位が網目状に連携されたもので、ネットワークと一般に称されるものの例としては情報網、通信網、 データ-通信網、防衛網 捜査網、販売網 配電網 ローカルネット、全国ネット、学閥(同窓会)・人脈 鉄道網、密輸組織、血管・神経組織網などの用例がある。
 これらを整理するとネットワークは二つの側面から捉えることができる。それは形態、目的・機能、の側面から眺めることが出来る。
 先ず、形態については、大きく2つの形態に区別することが出来る。それは系統樹型とサテライト型(或いはリーグ型、メッシュ型)である。情報の流れが、単方向性であるかまたはフィードバック機能を備えた双方向性を持っているかの違いである。
 系統樹型に於いては、情報の昇り降りはあるもの、情報ルートは垂直の流れであって、横との連絡または連携は無い。これに対して、サテライト型は単位とするブロック内、或いは上位段階としてはブロック同士の間で階層を意識しない情報の交換がなされる。
 次に、目的については放送、PRを例とする一方的な情報の伝達或いは周知徹底を目的とするもの、諜報、調査を目的とする情報の収集などヒエラルキーの恣意に基づいて構成されたものがある。 一方、個人を起点ととする情報の共有意欲に基づくネットワークがあるが、今までは同好会や同窓会或いは、ミニコミ内の私的な閉鎖空間内での消息や伝言の域を越えることは無く、社会的に評価認知されるものではなかったが、インターネットの登場普及に伴い、このタイプのネットワークは社会的に大きな意味と影響力を有するようになってきた。

Ⅱ〔インターネット〕
 既存の解説書によれば、1つのサーバーコンピュータを核としたローカルネットを、相互に通信媒体で接続した世界中に広がる通信網とされているが、それは物理的なネットの仕組みであって機能を表してはいない。利用者はどこのローカルネットの加入者であるということを意識することなく、インターネットに接続されていれば、どのOSのコンピューターや周辺機器からであっても、自由にインターネット網にアクセスしデータのやり取りをすることが出来る。 今日においては「電話とは」と誰もことあらたまって考えることがないと同じように、電子空間上のアドレスを指定すればすぐにどこにでもつながる仕組みとなりつつある。
 インターネットの特性を要約すると、超空間性、超時間性、双方向性、接続の多様性・容易性があげられる。 これらの特性を生かして、単に文字、言語、音声、画像、データベースといった、ヒュー―マンインターフェースに関する統合だけではなく、いままで独立して行われていた医療診断、制御、セキュリティー管理等の様々な単独業務との連動、連携が進んでいる。例えば、今まで銀行のATMまで出向かなければアクセスできなかった銀行のネットワークに自宅から接続できるようになった。電子マネーの流通も視野に入っている。また業務のアウトソーシングや、在宅者等のビジネスへの参入の機会も変化してきた。 注目されるのはインターネットによる在宅障害者の就労機会の誕生である。これは単に障害者の就労と言う面にとらわれず、多くの人が世界との双方向性を有した社会の窓を家庭を含むあらゆる場所に持つことを意味する。
 しかし、ここに至ってわが国のインターネットの普及を阻害するいくつかの問題点があらわになっている。それは通信のコスト、速度、容量(帯域幅)のいわば基盤整備に関わる問題で急速な対応が進められている。

Ⅲ〔ネットワークにおけるボランタリズム〕
 日本では1日に300冊の書籍が出版されるといわれているが、これは有料である。ところがメールマガジンは、2001年6月時点で「まぐまぐ」だけで、1週間の発行誌(紙)約1万種、総発行部数3700万部という膨大な数に達している。また、ウェブサイトその他、メーリングリスト、BBS,その他類似のものを含めると推計することすら不可能である。ここで注目すべきことはバナー公告などで利益を得ているものはごく少数に留まり、そのほとんどが無料でありまた有料の情報があったとしても何時か無料の対抗情報が現れるのが常となった。この読み違えが情報提供事業を目論みこの業界に参入したITビジネス企業の挫折につながっている。
 人は、持っている良い情報を隠し通すことはとても不得手である。ダイヤモンドの首飾りは人に見られて初めて価値が認められるが、見る人は拝観料を支払うことはなく「素晴らしいものをお持ちですね」という評価のみを与えるにすぎない。これと同じ理屈がインターネットのなかで起こっている。多くの開発者がフリー・ソフトウェア―を提供しているし、シェアウェアにしてもその思考・労力に比べれば格安である。自分の開発したソフトが、大勢の人に使われるという自分の実力に対する評価を糧にし、いつの日にか世界に認められることを願って作成に励んでいる。
 ここでの象徴的な事象は、LINUXの開発である。このオープン・ソース・ソフトの開発では、世界中の専門家がボランティアとしてブラッシュアップに協力した。インターネットは、誰かが統合的に企画推進し組織管理するものではなく、参加者がボランタリーに参加するヒューマン・ネットワークが形成され、その中で、自発とそれに対する相互評価、共鳴、共感がタイムリーに発生しフィードバックされやすく、その結果、自発の好循環が発生しやすい。ここでは、市場を無視した無償性の要求も、また逆に無償性を横取りする不当利得も受け入れられない。このように、ITビジネスのバブル的草刈場ではなかったのである。

Ⅳ〔ネットワークによる熟議(ハイパーコミュニケーションの成立)〕
 インターネットが最も衝撃的なインパクトを発生させると考えられる要素は、インターネット普及による、メディアのパーソナル化、民主化だと考えられる。
 通信のコストが下がり、高速度、広帯域化が進むと、既存のマスメディアとインターネットの境界が無くなる。例えば、放送や新聞の事業を行うには、電波塔や輪転機や配送網などの整備のために巨大な資本や組織が必要であったが、インターネットではその制約が排除され、誰もが、いつでもメディアになることが出来る。 また、情報の提供の対象は不特定多数で、一方的であったものが、特定の多数の個人向けにも双方向性を備えられるようになる。人間は何時までも一人で居ることはできず、情報を求めての再連携化(Re-Netting)がおこり、結果、自然に情報の集中・分配化が起きる。そこで又新しいネットワークがあたかも脳神経の増殖のごとく形成される。
 このような環境で、さまざまな人と人との高密度なコミュニケーションの場が形成される。そしてこうしたコミュニケーション空間は、市民による市民の為の意思決定の場として直接的な熟議の民主主義を機能させることができる。
 すでに、この場を有効に活用しだしたのは、ボランティアを原点とする、NGOやNPOの活動でありワールドワイドに連携を広めている。 このインターネットのルールを取り決める国際機関IETF(Internet Engineering Task Force)もボランティア組織であって、その意思決定はネット上で行われている。
 現在の国政は議会にその決定権が委託されているが、この複雑かつ流れの激しい時代に、各政党の掲げる一括の公約で支持政党を選ぶことのほうが難しくなっている。 税制はA党、教育問題はB党という選択がずれ、ねじれを生ずることは当然あるはずである。このように代議制・間接民主主義の矛盾、限界が顕在化する一方で、インターネットの普及により、時空をこえた市民間の対話が圧倒的に容易になった。これによって、市民による直接対話型民主主義の成立と普及の可能性が飛躍的に高まりつつある。今や、技術的には、携帯電話によりエベレストの頂上からの発言や投票が可能な時代となっている。(704頁)

〔関連項目〕LINUX,NGO,NPO,アウトソーシング,インターネット,携帯電話,コミニュケーション,電子投票,電子マネー,ヒューマン・インターフェース,ボランティア,民主主義,メールマガジン



◆ネットワーク外部効果 〔英〕external effect in a network 
 一般に外部効果が発生するときは、あるシステムや、規格に対するユーザーの利用集中度によってその効用が増加し、1つの規格やシステムの利用度が急速に高まっていく。
 今までにもVTRの規格、PCのOSなどでこうした現象が見られた。
 ある財やサービスに関して、その利用がユーザー単独で完結するのではなく、ネットワークした他のユーザーとのコミュニケーション、コラボレーションの中で主として利用されたとき、その価値は他者がその財・サービスをどの程度使っているか(いわゆる市場シェア)によって変動する。 まさに他者の利用度合いによってその効用が増加するという外部効果が現れることをネットワーク外部性(network externalities)と言う。
 接続の効率からみれば、接続可能な相手の数の多い(ユーザーの数の多い)ネットワークの方が支持されやすく、そのネットワークは益々多くのユーザーを抱えることになる。
 初期のパソコン通信ネットワークの場合には確かにこの定説どおりで大手ネットへの集中化が進み始めたが、インターネットの出現は一挙にこのネットワークの閉鎖性(ユーザーの囲い込み)を開放し、どのローカルネットからでも不特定多数のユーザーとの接続が可能となった。 その結果、加入ユーザー数において劣勢であったパソコン通信ネット業者も淘汰されること無くISPとして再生することが出来た。 
 インターネットが支持されている理由は数多くあるが、その根底にあるのは様々な規格やシステムを互いに排除するのではなく、コンピューターの機種、OSにかかわらず、また、送付する情報のタイプにかかわらず相互接続が可能で、実際に接続が促進されることにより、より高い利用利用価値を生み出す外部効果性があると考えられているからである。
 そのため上位階層で互換性を司る統合プログラムやプログラム言語が次々と開発されてきた。 その結果、身近なところではwindowsとMacを例とする様々な共存が実現している。この最大の要因は、インターネットが何らかの組織体や企業の「事業」ではなく自発的有機的なネットワークによって、それが管理運営されており、外部効果による排他的競争力の追求とは別の次元で、人類の智財の集散を意識した高い倫理性によって支えられていることによる。
しかし、この倫理性が著しく損なわれるときこのネットワークは破綻し、閉鎖的・統制的な第2インターネットに生まれ変わるかもしれない。(708頁)

〔関連項目〕インターネット,コミュニケーション,コラボレーション,ネットワーク


◆ボランティア 〔英〕volunteer
 一般市民の社会活動への参加の一形態である。元々は志願者、義勇兵を意味し、自ら志願する、進んで事にあたるという行動を伴う。 現代のボランティアは各人が持っている能力、労力、時間、金品、資産を社会に役立てる活動であって、自発性、無償性、公益性の3要件が謳われている。 わが国では阪神大震災における市民活動がボランティア元年と称されるようになり、市民の自主的な社会参加活動がようやく認知されるようになったが、国や地方行政機関はその無償性、行政への補完性に注目し、育成奨励の促進を図っている。
 しかし、ボランティア及びその活動の様態は、極めて政治的な理念によって揺動する。赤十字、YMCA等の発祥地英国では、富裕層の社会的責任(慈善・奉仕)として行政を補完するものとの考えかたが伝統的にあり、サッチャー政権に見るごとくボランティアを保健社会サービスの分野で利用した例もある。
 もう一つの極は、ヨーロッパ大陸及び北米の考え方で、より良い市民性を推進する方法として地域社会の共助、共存に向けた市民活動が志向されている。またボランティア組織としても、旧来の教会や、慈善財団の援助から脱皮し、市民自らが結成したNGO/NPOが中心となっており、公はむしろ如何に市民活動と関わるべきかや、行政と市民との役割分担の再構築に関心が寄せられている。
 また、既存の雇用労働者、或いは事業者が行う社会サービス分野からボランティア活動を切り離すべきだという意見がある。それはこの分野に無償もしくは安価なボランテイアを投入すると、そこで働く従来の労働者の賃金水準を低下させるだけでなく、時としてそのサービス事業が根底から破壊されることがあるからである。
 昨今、いままで無かった全く新しいボランティアの活動分野と、態様が誕生している。それはインターネットへを通じた市民の政策形成への参加であり、そこに提供される膨大な知的資産や、イデアの相互編集は既存の社会的価値観から大きく飛躍し、まさにボランティアによって開拓される新しい社会の誕生を予言するものである。(876頁)

〔関連項目〕NGO,NPO,インターネット,ネットワーク

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