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 医療改革を推進中 とりわけ小児医療の充実を

 

 医療と教育とを二大テーマとして取り組んでいる私ですが、この七月十一日、行政監視委員会にて、とくに小児保健医療に焦点を当てた質問を、尾辻厚生労働大臣に対してさせていただきました。

 日本は、ゼロ歳児および五歳以降の小児死亡率はおしなべて低いにもかかわらず、一−四歳児の死亡率が先進十四カ国平均に比べて約三割高いという数字が出ております。そしてその最大の死亡原因は不慮の事故です。つまり、ゼロ歳児なら病院、五歳以降なら幼稚園や学校という安全衛生行政のおよぶところでは優良ですが、そうでない家庭などでの事故が多く発生しているのです。そこで対処策としては、まず家庭における事故予防を徹底すること、そして万が一事故が発生してしまったときのために救急医療体制をきちんと整備することがあげられます。

 事故予防対策を実施している家庭の割合は、例えば一・六ヶ月のお子さんを持つ家庭で四・二%、三歳のお子さんを持つ家庭では一・八%です。さらに事故予防対策を実施している市町村の割合は、三ヶ月検診時点で三二・六%、全国の市町村の八八%で何らかの対策は行われているのですが、そのうち指導が充実していると自己評価しているのは一・五%にすぎない。政府は「子どもに安全をプレゼント」というパンフレットやHPを作成して周知徹底を図っていますが、それだけで満足できるものではありません。というのは、何らかの事情でそのような情報が手に入れることができなかったり、検診に行けなかったりする家庭もあるからです。そこで私は、家庭訪問を提案いたしました。成績の良いイギリスやスウェーデンなどでは、出産直後からきめ細やかな訪問が行われ、適切なアドバイスが受けられるようになっています。日本でも、より指導を密にするため、育児支援家庭訪問事業の推進を尾辻厚生労働大臣に要請いたしました。

 育児の最大の不安は子どもの急病だと答える親が六七・七%、小児の最多死亡原因は不慮の事故という状況で、日本の小児救急医療体制は不十分であるとしか言いようがありません。救急センターの患者の五〇%は小児、そのうち八〇%は三歳未満、大都市では小児急患の三〇%は二十三時から翌朝八時までの深夜帯に集中しているという調査報告が出ております。一方で小児科は減少していて、平成八年から平成十四年では二割減となっている。整備面でも完備には程遠く、小児救急医療体制が整備されているのは九の都道府県のみ、救急病院と告示していても小児救急を実施しているのはそのうちの五四%、さらに年中無休で対応しているのは四〇%です。小児科医がいる救急病院は三〇%しかないのです。小児(救急)医の不足と、整備の不十分さがあらわれています。

 小児科が少ないのは、不採算部門として病院の収益の悪化原因になると切られてしまうからです。まず季節による変動要因が多く病床の稼働率が低い。またコストの6割が人件費であることや、薬の使用量が少ない、診療に手間が掛かるなど、さまざまな理由があります。赤字を解消しようとする病院経営者が少しでも高い診療報酬を求め、また小児科医自身の職業的使命感もあって休日夜間時間外診療は続けられていますが、現在では小児科医ひとりひとりの負担が大きくなって大変な過剰労働になってしまっているうえに、小児科医の高齢化も進んでいるという厳しい状況です。

現在一二九〇ほどある小児施設を、むしろ八四〇くらいに集約し、中核病院を五〇、地域小児センターを二四〇ほどにするという小児科学会の提案も委員会の場で紹介しました。しかし、このようなプランを実現するためには、現在の各大学の小児科医希望者数を三割増にしてそれが十年続かなければなりません。設備の面でも、全国に九十七床しかない小児専用集中治療室(PICU)を増やすなど、早急に対処する必要があります。私が以前から提唱しております小児保健法につきましても改めて提案させていただきました。日本の医療費の四・五%しか小児医療に使われていないという現実を、なんとしても変えていかなければなりません。

 改善が必要なのは小児科だけではありません。麻酔科医・がん治療などでも、深刻な問題が発生しております。共通の問題は、専門医の数が不足し、過剰勤務であること。また、がんなどの高度医療においては、医療提供者側の水準が低いわけでは決してないのにもかかわらず、患者さんやその家族の満足度はきわめて低いという状況が多々みられます。患者と医者とのコミュニケーションが不足していることが最大の原因です。ただでさえ非常に複雑で難しく、さらに急速に高度化する医療技術に対し、的確に理解し判断するためには患者さんの側に立って医療の専門家が支援することは必要不可欠です。しかし、現状ではコミュニケーションを行おうとすればするほど過剰勤務と不採算のもととなってしまう。制度的な支援が必要です。診療報酬改定も含め、しっかりした支援制度の検討を要請いたしました。

 また現場の状況と国会の議論、とくに経済財政諮問会議における医療費抑制の議論との乖離も大きな問題です。無駄な医療費は省くべきですが、現在の医療費抑制論はただGDPとリンクさせて抑えればよいといった乱暴なものです。なにが必要でどこを削るべきなのか、もっと医療関係者の話を聞いて考えるべきなのです。

 こうした提案に、尾辻大臣自身は、大きな賛意を示していただき、一緒に議論を深めていきましょうということになりました。

これら医療問題は、医師の供給に関しては文部科学省、診療報酬制度では財務省など、厚生労働省だけで対処できるものではないのです。省庁の枠組みを超えて取り組まなければなりません。そうした点も含め、これからも医療問題解消に向け全力を尽くして取り組んでいきたいと思っております。

 

 

 



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