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 教育基本問題調査会

 

 私が事務局長を務めております民主党教育基本問題調査会では、今年度も大変有意義な議論が交わされました。憲法調査会でのとりまとめも終わり、民主党では、憲法改正の動きに連動・連携して、典型的な憲法付属法である教育基本法についても、新しい時代にふさわしい新教育基本法の創造を目指し、教育現場での具体的な改革につなげていきたいと考えております。

 教育の基本問題について議論し、政策体系を抜本的に見直すべき、その目的について、我々は議論を深め、以下の五つにまとめました。

一.
現場において発生している重要な課題を解決・改善するため。児童虐 待の深刻化、学力・体力・コミュニケーション力をはじめとする生きる力 の低下、ニート・フリーターの増加、理念なき文部科学省の改革プログラ ムにより惹起されている現場の混乱、価値観及び目指すべき人間像の多様 化をめぐる困惑、さらには、学校施設の老朽化、耐震性や情報化対応など 環境整備の遅れが目立ちます。先進国中最低水準にある公教育財政支出も 改善しなければなりません。

二.現場からの国民的な改革運動をより強力に推進していくため。地域・ 保護者参画型の自主・自律的学校づくり(地域立学校化)の推進を目指す べきです。コミュニティ・スクール運動の普及・促進や、市民による学校 設立・運営の弾力化もしていかなければなりません。

三.長年懸案となっている課題を政治主導により決着させるため。就学前 児童をめぐる文部科学省と厚生労働省による縦割り行政、先進諸国に比し て大幅に遅れている教員配置数、そして宗教に関する学習機会の過度の抑 制などあります。

四.憲法・教育基本法の趣旨実現のため教育関連法制の改正・追加を行う ため。憲法上の解釈が曖昧ないわゆる教育権論争について、「国民の学習 権」を明確化する必要があります。また建学の自由が謳われてはいるもの の現実的にさまざまな制約があり設立が困難な私立学校については、制度 の改正を行わなければなりません。継続・生涯教育、児童・小児・学校の 安全対策、それぞれの規定欠如も問題です。

五.国際条約・国際宣言等で、その実現のために必要な国内法の整備を行 う。日本は国際人権A規約十三条の二項(無償化条項)を留保しています 。留保解除を目指して国内法の整備が必要です。

 基本的な方針としては、教育現場の改革につながる教育法体系および教育財政制度などの教育政策全般の再構築を目指すものであり、以下、各項目について取りまとめれた議論を、ご紹介申し上げます。

<前文>

真の主権者たる国民は、わが国の歴史と伝統文化の最善なるものを受け継ぎつつ、新たな地域社会、日本社会、国際社会の主体的な形成者としての誇りと自覚を持つべく教育されるべきである。

<第一条(教育の目的)>

 いわゆる愛国心問題については、国を愛する心を健全なかたちで自然な結果として、多くの国民が持つことが望ましい。しかし、誤解を招きやすい「国を愛する態度」という言葉は用いず、地域社会、国際社会と並んで「日本(社会)」の形成者であることに誇りと自覚を持つべく教育されるべきである旨を、法律の本文中ではなく、前文においてはどうかとの意見が出された。

<第二条(方針)>

あらゆる機会・場所において、十分な安全への配慮と実質的な安全の確保に万全を期する旨、また教育目的達成のためすべての国民が自発的努力を行う旨を盛り込み、併せて学校安全法(仮称)、小児事故防止法(仮称)の制定、学校保健法の充実をはかるべきである。さらに、学習権をすべての人々が有し、学習のための十分な支援を受けられる旨を明記する。

<第三条(教育の機会均等)>

 「ひとしく」「能力に応ずる」ではなく、大切なことは一人一人の状況に応じた適切かつ最善の教育機会と環境が確保されることである。また「能力があるにもかかわらず」を削除し、意欲あるものに対しては誰でも奨学するべき旨を明記する。

<第四条(義務教育)>

 義務教育として、自律し社会のために貢献しうる人間として基本的な能力を習得することを明記すべきである。また現行法では義務教育の「義務」は親の就学させる義務となっており、ひきこもりや不登校、フリースクールやインターナショナルスクールは義務違反との解釈も成り立つおそれがあることから、義務ではなく基本的権利として一定程度のリテラシーをすべての国民がもつべきことを国家が保障するべきである。

 国際人権A規約中、高等教育段階無償化条項を留保しているのは一五一カ国中日本を含めわずか三カ国である。参議院文教委員会において留保解除を検討する旨の決議がありながら自民党政権下で長年放置されたまま今日に至っている。奨学支援・高等教育の漸進的無償化条項を教育基本法に盛り込み、連動して奨学のための国内法の整備を行う。

 従来の障害者教育に加え、特別支援教育についての一条項を盛り込む。

<第六条(学校教育)>

 学校の基本的役割、学校の学習支援義務を規定することが望ましい。

建学の自由を尊重することは規定すべきであるが、バウチャー制導入についても、さらなる議論を積み重ねる必要がある。

 教員の資質向上を図ることの必要性を規定すべきであるとともに、教員の使命・職責の特別任務性から、教員を一定程度特別な存在として位置付けるべきである。

<第七条(社会教育)>

 生涯教育は生涯学習社会へ適応するためにますます重要になる。奨励・振興されるべき旨を盛り込む。

<第八条(政治教育)>

 国政および地方自治に主体的に参画する主権者の育成にはもっと積極的であるべきだが、特定の党派的政治教育・政治活動は引き続き禁止すべきである。

<第九条(宗教教育)>

 極端に慎重になりすぎてきた傾向を改め、宗教的伝統や文化に関する知識・意義は尊重すべきである。

<第十条(教育行政)>

 教育内容・方法・運営などについては、教育現場、設置者、学習者の主体性・自律性を尊重すべきであり、国は学校評価の実施や、学校の説明責任の付与などを積極的に行うべきである。また、権限の現場委譲を進めるため、地方教育行政法の見直しが必要である。

 教育振興計画の策定と安定した教育財源確保の義務づけ、義務教育財源確保のための法整備を行う。

<その他(新たに基本法に盛り込むべき規定)>

 情報社会に適応するためのメディア・リテラシーについて、教育の必要性を規定すべきである。青少年に対する有害コンテンツ規制については、保護者に有害コンテンツである旨を情報提供することの義務づけまでは基本法に盛り込むべきであるとの意見が出された。

 
 教育問題に関しては、現政府のように理念のない改革プログラムを実行するだけでは、余計に教育現場や、あるいは学習者が混乱するだけです。変わりつつある時代に、教育とどのように向き合うかは最重要課題です。だからこそ、現場の声を聞き、国民と対話し、熟議によって一つずつ確実に適確に、柔軟な対応をもって解決していかなければなりません。教育問題を専門とする議員として、これからもバリバリ頑張っていきたいと思います。

 



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