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 文教科学委員会報告

 私は、一月からの通常国会においても、引き続き、文教科学委員会の理事を務めました。理事の仕事は、ひたすら裏方に徹して、法案審議の準備・折衝、他議員の質疑の調整などを、頻繁に開かれる理事会において処理をするのが本業です。ですから、質問は極力他議員に譲るのですが、そうしたなか、私も、本年三月十五日の参議院文教科学委員会において、子どもたちの学力と体力の低下について政府・文部科学省に質し、三月三十一日には、義務教育費国庫負担法の一部改正について、政府与党の法案に反対の討論を行いました。また、各地の教育現場も視察させていただきました。

 
  子どもたちの学力低下と体力低下の相関について

 三月十五日は、子どもたちの生きる力について徹底審議しました。今、学力低下が問題になっています。しかし問題はそれだけではありません。体力の低下も大きな問題になっています。そして実は、この二つの問題は経済的な相関性をもっています。これは予算委員会のご報告でも若干述べましたが、OECDPISA調査などからも明らかになったことは、わが国の子どもたちの学力が今、二極化しているということです。上位レベルの子どもたちの割合は減っていませんが、下位レベルの子どもたちが増えている。だから総合的学習の時間をやめて土曜日も授業を行えば学力が戻るという、そう単純な話でもありません。PISA調査でもっとも総合的な学力が高いと評価されたフィンランドは実は調査国中もっとも授業時間数が短いのですが、個別学習とか少人数学習、自習時間といったものがしっかりしているので授業についていけない子どもをフォローでき、全体的な学力の底上げを実現しています。逆に日本の子どもたちの自学自習時間は調査国中最低ですし、教員の数も調査国平均よりも十人多い三十四・三人に一人と非常に少ないのが現状です。結果として日本では、授業についていけない子どものための補完的な学習を、公教育ではなく塾や家庭教師が担っているので、各家庭の経済状況によって子どもの学力に格差が出てしまう。この事実は総務省の家計調査にも出ていて、四人世帯、有業者一人の家庭における収入格差は二・二倍なのですが、補習教育にかける費用の格差は十四・七倍に上るのです。

こうした経済格差は体力低下の問題にも関係しています。水泳教室やサッカークラブ、スキー教室といったものに払う月謝の額も、先の家計調査によれば五・一倍もの格差が出てきている。つまりこうした教室・クラブに通える子どもは裕福な家庭に限られてきているのです。そして、この格差が地域的な学力格差となって現れています。こういうところに私たち国会議員や国はフォーカスを当てなければなりません。そして問題の解決のためにも、どういう地域に、あるいはどういう世帯にどのような問題があるのかということについての絞り込みと対応策を、PISA調査のようにサンプル調査ではなく悉皆調査という形で科学的に明らかにしていかなければならないと考えています。 

  要保護・準要保護児童生徒への医療費援助の必要性

 子どもたちの健康、これは家庭の経済力によって格差が付いてしまうのは、政治の失敗です。ところが三位一体に伴う義務教育国庫負担制度の見直しに関連して、準要保護とされる児童生徒への援助が見直されようとしています。特に学校保健法で定める、学習に支障を来す恐れのある疾病に対する医療費援助について一般財源化が計画されており、私はこれを大変な問題であると考えています。たとえばアレルギーや歯周病などは子どもの学びに大きな影響をすでに与えています。私は、文教科学委員会で、こうした疾病も政令追加すべきだと申し上げたのですが、政府・文科省側の答弁は調査研究やマニュアル作成を行っていきたいという曖昧なものに止まりました。なかなかこまめに病院に行けない要保護・準要保護の家庭の子どもたちのために学習の障害を取り除く援助をしようという学校保健法十七条の趣旨に照らせば、少しでも状態が良くなって就学に専念してもらうために、これらの疾病治療に対し援助を行うことは公の当然の責務であると指摘しました。各市町村の予算編成が、今後ともこの学校保健法の趣旨に適うものであり続けるかどうか、監視を続けていきたいと思います。 

  ベストプラクティスを評価できる教育行政に

 それぞれの学校現場を見ておりますと、たとえば杉並区立和田中学校の藤原先生がやっておられる「よのなか科」や、陰山先生が広島尾道の土堂小学校で実践されているような、様々な優良事例や先進事例、いわゆるベストプラクティスというものが数多くあります。こうした現場からの創意工夫がどんどん起こってくることが私は非常に重要だと思っています。

そうした観点から、文部科学省は学習指導要領の最低基準性、学習内容については現場に任すという方針を出したにもかかわらず、未だに、ほとんどの校長先生や現場の先生は、何から今までと違ったことをやると学習指導要領違反になるかもしれないと自己抑制しています。私はこうした問題意識から、委員会の場において、たとえば研究開発校に指定されている土堂小などで行われている十五分単位の特殊なモジュール型授業を一般の小学校が行ってもいいのか?と質問し、文部科学省より、「問題はない」との回答を得ました。こうした現場が未だにいくつもあるのです。この手の誤解を現場から払拭するためにも、文部科学省は学習指導要領の解釈について事前に問い合わせできるような制度を明確な形で作るべきだと提案しました。

また、文部科学省に対して、全国的にベストプラクティスを集めてきてそれを普及するためのより効率的で開かれた体制の整備。学者ではなく、優れた先生、ベストティーチャーが教員養成や研修所の教壇に立てるような教育学部や人事交流制度の再編成。などを要請しました。 

  義務教育費国庫負担法の一部改正について 

 三月末には、政府与党より提案された国の補助金等の整理・合理化に伴う義務教育費(以下、「義教費」と略)国庫負担法の一部改正案につきましては、活発な議論がありました。まず第一に、義教費国庫負担制度については平成十四年十二月の総務・財務・文科三大臣合意とその後の閣議決定や政府与党合意において、中教審の検討も踏まえ十八年度末までに検討を行うとされていたにも関わらず、昨年夏に唐突に中止論が浮上し、十一月の政府与党合意において強引に四千二百五十億円の削減の先行と中教審の結論の十七年度秋までの前倒しが決定されました。この法案はまさに小泉内閣の特徴である議論なき豹変と突然の約束破り、独善的見切り発車の結果、提出されました。また、今年度限りの暫定措置により義教費国庫負担金から減額されるとする四千二百五十億円という数字の根拠が、実は地方六団体の改革案で提示された中学の義教費国庫負担金削減額の借り物という以外、何の根拠もないということが明らかになりました。さらに、準要保護者への就学援助費補助、医療費援助が削減廃止されることとなりましたが、義務教育の在り方について議論を行う最高機関である中教審の鳥居会長ですら、そうした削減廃止の内容が法案に盛り込まれていることを知らなかったと述べたことです。こうした杜撰で不誠実な対応を続ける小泉内閣の存続は、わが国の教育現場にとって百害あって一利なしであることはもはや疑うべくもありません。今後も小泉流政治に対する批判の声を緩めることなく、徹底した政策論争でその矛盾と誤りを追求して参りたいと思っています。 

  各視察のご報告

 四月十二日、新潟中越地震による学校施設の被害を把握するため、新潟県の長岡市立阪之上小学校、同校に間借りしている山古志小学校、小千谷市立東山小学校、同東小千谷小学校の計四校を視察して参りました。とりわけ甚大な被害に見舞われ、現在もなお他学校での授業を余儀なくされている山古志小学校の子どもたちやその保護者の方々との触れ合いによって、私は政府が早急により多くの復旧支援と教育環境の整備に尽力すべきであることを痛感させられました。早速、文部科学省などと相談して、教員加配などの措置を決めました。と同時に、阪之上小学校では、六年生のみなさんと一緒に給食をいただきましたが、将来政治家になりたい児童が何人もいて、激励にいったはずの私が、子どもたちから、励まされるというシーンもありました。
また五月十日には、独立行政法人や国立大学法人、短大の四年制大学化といった高等教育および政府系研究機関の諸課題を検討するため、筑波学園都市を視察。

八月二日には専門職大学院やオルタナティブスクールといった多様な教育環境に触れるため、LEC東京リーガルマインド大学、東京国際学園高等部、NPO法人「育て上げ」ネットの、計三つの教育団体を視察して参りました。たとえ、どのような事態に至ろうと、子どもたちは義務教育を受ける権利があり、国はその機会を提供する責務があります。そうした基本的な権利保障を実現するための具体的手当てがなければ、その先の多様な高等教育やオルタナティブな教育の存在意義も十分発揮しえません。。フリースクール生向けの教育バウチャー・クーポン制などは大いに検討すべきだと痛感いたしました。あらためて教育を受ける権利がいかに大事かということに思いを致した視察となりました 

※尚、予算委員会での質問と重複する部分は適宜割愛させていただきました。


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