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 予算委員会報告〜子育て世代の負担軽減について〜

本年三月十日の予算委員会おいて質問に立ち、NHKで全国に生中継されました。議案は、政府与党が提出した「所得税法等の一部を改正する法律(三月三十一日可決)」に関して、それが本年度から二ヶ年かけて実質的に三・三兆円の家計への負担増につながる大増税案であること、そして、それが子育て世代の重い負担増になること、ひいては、わが国における家計における教育費負担のあり方などについて、小泉総理以下、関係閣僚に以下の主張を突きつけ、質疑に臨みました。

  コンクリートから人づくりへ

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、昭和六十一年の十八歳以下の児童のいる世帯は全世帯の約半分、四六・二%ありましたが、平成十五年になるとそれが全世帯の約四分の一の二八・三%、大都市になると二四・二%にまで低下していること。また、高齢者世帯(その平均年収約は三百五万円)の四七・六%が「生活が苦しい」と感じている一方で、児童を抱える子育て世帯(その平均年収は七百二万円)では六二・八%の方々が「生活が苦しい」と感じていることを指摘し、単なる所得の大きさだけから判断していては聞き取れない、こうした悲鳴にこそ、我々政治はもっと耳を傾けなければならないと主張いたしました。そして、政府の増税案では総額九・九万円の負担増がこの子育て世帯に直撃することになり、こうした悲鳴を逆なですると主張しました。

私は、四年前の参議院選挙、「みなさんの税金をコンクリートから人づくりへ」を公約に選挙を戦わせていただきましたが、昨年九月に政策調査会副会長に就任以来、これを民主党全体の政策スローガンにすべく努力してまいりましたが、ついに、民主党全体の総意となり、先の通常国会で民主党が提出した予算案においても子ども第一主義の予算編成をさせていただきました。従来より、住宅ローン減税、あるいは教育ローン減税といった政策を主張して参りましたが、民主党予算案には、十五歳までの児童に対する一人当たり月一万六千円、年間十九万二千円、二人ならば三十八万四千円の子ども手当を計上させていただきましたことを国民の皆様に向かって主張し、教育と子育て、これに頑張っている世代に対する負担を軽減するという観点を経済財政政策の立案の基本方針に据えなければならないとの思いを小泉総理・谷垣財務大臣に直接ぶつけさせていただきました。谷垣財務大臣からはスローガンについてはいいスローガンだとのコメントはいただきましたが、負担増を改めるとの方針変更に応じてもらえませんでした。

慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで一緒に教鞭を取らせていただきて以来、一貫して、竹中平蔵大臣とは個人消費を如何に刺激するかという議論をして参りましたが、今現在、この国の消費を支えているのは六十歳以上の高齢者と二十代の若者で、三十代、四十代の購買力は一貫して低迷しています。この原因は子どもの養育費、教育費、そして住宅ローンということですから、こうした負担を軽減するために、政治は優先順位を変えて、税制改正なり予算編成なりを考えなければならないと強く訴えました。

  学力問題を解決の鍵は家庭の経済状態の改善

十五歳児を対象としたOECDの二〇〇三年の国際学力調査(いわゆるPISA調査)において、日本の児童は学力五段階における下位の二レベルまでの割合が二〇〇〇年調査時の二五%から四〇%へと、十五%も増加しています。そして今、日本の子どもは学力だけでなく、生きる力全体が低下していることが大問題になっています。この背景に、子どもを抱える子育て世帯の家計状況の悪化があることを指摘しました。たとえば東京都教育委員会は二〇〇四年二月、公立中学校二年生を対象に学力調査を実施しましたが、都内でも、百点、満点で平均十ポイントから二十ポイントの違いで生じている事実を紹介しました。私も全科目、都内でナンバーワンになった市とワーストワンになった区を視察して来ましたが、修学援助(給食費とか修学旅行代の援助)において、これが五%の区がある一方で、三割、四割を超える区もある。そしてこの学力と経済力のばらつきに正の相関がある。私は「断固申し上げたいことは、どんな地域、どんな家庭に生まれたお子さんであろうと、生きる力を最大限に伸ばすための教育の機会と場が与えられなければならない、それを全面的に支援することこそ政治の最大の使命だ」と小泉総理に迫りました。

  知的立国日本にむけて教育の受益者負担主義を改めよ

また、小泉総理に対して、総理の好きな市場競争原理優先主義を貫徹するには、大きな前提が必要だと主張しました。日本には相撲部屋という良い模範がありますが、力士というのは修行の期間は、経済的な心配を一切することなく、稽古に打ち込める。相撲界や部屋が食事と稽古の場を確保する。その上で土俵に一旦上がったら、体重の軽重を問わず、力と技を競いあうというようになっている。日本の教育も修行段階では、本人や親の経済力にかかわらず、誰もが存分に稽古に打ち込めるような教育体制にしていかなければならないとの持論を展開いたしました。

私は日本の教育には受益者負担主義が万延しすぎていることに警鐘を鳴らしました。特に義務教育についての事実上の受益者負担主義なっている点は改めるべきと主張しました。総務省の家計調査によると、子どもを抱えるモデル世帯の収入格差は大体二・二倍なのですが、教育支出の格差になると四・九倍、さらに塾・家庭教師といった補助教育費に至っては実に十四倍の格差があります。この格差を限りなくなくしていくということを国がやらねばならないと主張しました。小泉総理も、改めて、日本の義務教育のおかれた問題について、よく勉強させてもらった旨の答弁をいただきました。

大学生も大変です。自宅生で年間二百万円、下宿生で二百五十万円、一年平均で費用が掛かります。私が当選以来主張しつづけ、民主党のマニフェストにも盛り込まれました「希望者全員奨学金制度」をぜひ実現すべきだと小泉総理に訴えました。わが国の高等教育費における、家計負担の割合についても議論しました。二〇〇一年の調査で、日本は高等教育費の五六・九%を家計が負担しています。これは、韓国についで二番目の高さです。OECD平均では家計の負担率は十七.一%、フィンランド、デンマーク、ドイツなどでは、ひと桁台、スウェーデンは0%であることを紹介しました。

何でこんなことになってしまったのか。自民党長期政権が高等教育の家庭負担の問題について何の問題意識ももたずに来たからです。その怠慢を物語る象徴的な事例が、国際人権規約(A規約)に含まれる「高等教育無償化条項」に対するわが国の対応の遅れです。すなわち、規約第十三条の二項(C)に高等教育に関し、「高等教育はすべての適当な方法により、特に漸進的な導入により、能力に応じすべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」という条文があります。日本も含め百五十一の国がこの人権規約全体は批准しているわけですが、日本、ルワンダ、マダガスカルの三カ国だけが、この十三条二項(高等教育無償化条項)の批准を留保しているのです。他の国々は、厳しい経済状況、厳しい財政状況の中で、人づくりの重要性を認め、この条項も含めて批准し、この条項に基づき漸進的に政府の負担割合を引き上げてきました。三十年、四十年間、その努力を継続してきた他国と、そのことを怠ってきた日本の差が、この家計負担費の割合の差に端的に表れています。私は、小泉総理に対して、次世代を育てる上で、まずこの高等教育無償条項の留保の撤回をすべきだと厳しく迫りましたが、この点については、なんらリーダーシップをとるつもりもなく、まともな回答は得られませんでした。

私は、授業料の一〇%程度しかカバーされない現在の奨学金制度では、厳しい子育て家計の負担軽減を図るには十分ではないこと。フランス、ドイツでは授業料は無料で、加えて学生の生活費までも国が面倒を見る制度になっていることも紹介しました。そして、そうした家計負担を引き下げる大前提として、日本の対GDP比の公教育財政支出額が、現在は、高等教育段階で0・五%、義務教育でも二・七%しか確保されていないのを、少なくとも、アメリカ(五・六%)やフランス(五・七%)並みに引き上げていくことが不可欠であると強く訴えしました。正にコンクリートから人づくりへと予算の充て方を変えていくべきとの従来の持論を再度小泉総理にぶつけました。我々は専門学校などにも奨学金を充実させていこうと考えていますが、そのことによって、日本より二〇%、三〇%も高いフィンランドの大学など高等教育進学率に追いつくこと。これこそ知的立国日本の国際競争力に直結する道だと主張しましたが、コンクリートから人づくりへの基本論については理解は得られたものの、具体的な予算配分を変えることについて、小泉総理からは、なんら具体的なコメントはありませんでした。

委員会質疑の最後に、経済的に本当に困っている千三百万人の子育て世帯、そして学ぶ意欲を持って一生懸命頑張っている三千万人の若者のために皆さんの貴重な税金を使っていく。この人づくりの政治の実現ための政権を作り上げていくために全力を尽くすことを、全国の有権者のみなさまにお約束して、小泉総理との論戦を終わりました。

米百俵のスローガンを掲げて以来、教育改革に何の努力も傾注しない小泉内閣に、この国の教育は任せられないことを改めて痛感した予算委員会でした。




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