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 日本プロ野球〜2リーグ制を死守〜



 大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの突然の合併構想発表に端を発するプロ野球の球団減少問題、それに対する選手会のスト決行については、多くの皆様もご関心を持たれたことと存じます。今年の夏は、私も、野球問題に明け暮れました。「すずかんタイムズ」をお届けするのが遅くなってしまいましたのも野球問題に連日・連夜、奔走していたからです。特に、本件は、決定するまで、ご紹介できないお話しがたくさんあったということもあり、このタイミングでのご報告になってしまいました。どうぞお許しください。

 

 皆様、ご承知のように、選手や国民・ファンの意見が十分に省みられないまま、球団合併、一リーグ構想などプロ野球の縮小均衡への動きが急速も進められたことに、私は、大変な危惧を覚えました。そこで私は、民主党政調会長でもいらっしゃる仙谷由人衆議院議員を筆頭に野球を愛する議員の皆様と一緒に、八月四日「日本プロ野球の更なる飛躍・発展とスポーツ文化振興による地域活性化を推進する会(超党派議員懇談会)」を発足することとなりました。私は参議院文教科学委員会理事を仰せつかっていること、スポーツ政策の実務経験・活動実績があるということ、さらに、今回の問題解決の鍵となったIT業界に友人や教え子が大勢いるという理由で、同会の事務局長に選任されました。

 

 私個人としては、参議院選挙中の六月末の段階から、プロ野球選手会関係者のご相談にあずかっておりましたし、古田敦也選手会長と笹森清連合会長との橋渡しなどをさせていただいたりしておりました。しかし、七月七日のオーナー会議で強く押し出された球団減少・一リーグ化への動きや、また、古田選手会長らの要望に対して、「たかが選手」と一刀両断に拒否される様子などを見て、事態は深刻だと思い、この状態が続くと、日本プロ野球崩壊の悪循環の引き金を引きかねないと大変に心配いたしました。あの危機的状況を打開するために議員懇談会の発足を試み、八十名を超える多くの熱心な議員の皆様の賛同を得ることができました。この問題は政争の具にしてはならないと考え超党派でことを進めました。

この議員懇談会は、一個人の責任を追及すればことが足るという日本社会の癖を正し、社会の公器で文化的公共財であるプロ野球界のガバナンスを抜本的に改善することを第一目的としました(逆に、ガバナンスの抜本改革が行なわれなければ、この種の騒動が今後も繰り返されることになってしまいます。)。そして、経営者はもとより、選手、地方自治体、市民、地元経済界、ファンをはじめとしてスポーツを愛好するすべての人々の英知と情熱と努力が結集されるよう、透明で公正・公平な球界運営が実現されること目指すこととしました。

 

 我々としては、日本プロ野球界のガバナンスが健全化されることをひたすら目指し、健全化されたガバナンスの下で、プロ野球のステークホルダー(関係当事者)が広く参加したオープンな議論が実現されれば、関係者から必ずやいい知恵が生み出され、様々な創意工夫が実現されるはずとの認識に立って行動いたしました。

 

具体的には、

@「ファンも選手も球界の一員」であるとの認識のもと、選手やファンの意見がプロ野球問題の解決に反映されること。 二リーグ制を維持すること。

A野球協約や法令にもとづいて、経営側と選手側とで、十分な話し合いがなされること。

B新規参入の障壁となっている新規加盟料六十億円に関し、その性格を保証金への見直すとともに、金額の適正化を行うことなどによって、参入障壁が取り払われ、公正で透明な審査によって新規参入が促進されること。

 

 等を国会活動、関係省庁や日本プロフェショナル野球機構(NPB)との折衝、世論との連携などを通じて、関係方面に働きかけを行いました。

 

 @については、ファンの皆さんが主催するいくつかの集会に仙谷議員をはじめ議員の会のメンバーが出席しました。また、私の教え子たちと一緒になって八月二十三日に「野球の未来を創る会」を正式発足させ、発起人として名を連ねました。同会には、鳥越俊太郎さん、玉木正之さん、二宮清純さん、金子達仁さん、高野孟さんらのジャーナリストや、元ヤクルト選手の池山隆寛さん、大リーガーの石井一久さんや高津臣吾さん、漫画家のやくみつるさん、作曲家のすぎやまこういちさん、タレントの松村邦洋さん、政治学者の福岡正行教授、紀藤正樹弁護士、連合会長の笹森清さんら八十名を超える各界の野球を愛する方々も名前を連ねていただきました。

同会は、ネット署名活動や八月二十八日、九月七日には日比谷公園を中心に集会活動を行うなど世論を盛り上げ、その活動は、数多く報道機関に取り上げられました。私は、教え子たちと一緒に会の企画準備や関係者への協力要請に奔走し、当日は、集会の司会を努めました。

また、議員懇談会のメンバーでもある田島要衆議院議員が千葉で、楠田大蔵衆議院議員が福岡で、地元の仲間の皆さんとともに署名活動や球団関係者への働きかけを行いました。

署名活動では、全国で様々な団体が奮闘されて九月八日には、選手会が百二十二万の署名を機構側に持ち込みましたが、その約三分の一は、連合の皆さんのご努力によるものです。なんと、九月末の段階で、連合の皆さんは、最終的に八十万の署名を集められました。

 

 A及びBについては、議員懇談会メンバーが、八月九日に選手会の古田敦也会長、松原事務局長と懇談し、八月二十六日には、日本プロ野球組織(NPB)の根来コミッショナーと会の幹部が一時間半にわたって折衝を行いました。コミッショナーから、急速な一リーグ制移行を軌道修正し二リーグ制を維持する旨、第三者を入れた構造改革委員会の設置、新規参入のあり方についての調査などについての回答をいただきました。

 

特に、新規加入問題については、国会からの取り組みが最も早かったように思います。従来の野球協約では新規加盟料(六十億円)や球団引継ぎの参加料(三十億円)などが規定されていて、地元経済界や地方公共団体が協力して市民球団を経営しようとしても経済的理由で断念せざるを得ない状況になっていました。Jリーグなどの場合は、登録料は低額ですから、草の根や地元からの力を発揮することができ、いくつかの経営危機を乗り越えることができました。加えて、この六十億円とか三十億円というお金は、既存球団に山分けされるという仕組みになっていました。このような制度は問題だと考え、球団経営に問題が生じたときなどの緊急避難的手当ての原資として資金を預かるような制度に改めるべきだと考え、そのための働きかけを行いました。

 

早速、八月四日午後の衆議院文教科学委員会で、同僚の民主党の笠議員が質問に立ち、公正取引委員会から「(新規参入料については)目的に照らして合理的かどうかさらに検討すべきだ」、また、一般論とは前置きしつつも、「新規参入を不当に排除するということについては公正取引委員会としても関心を持たざるを得ない」という答弁を引き出しました。

また、再度、八月三十日に議員懇談会の席に公正取引委員会事務局を呼び、独占禁止法上の疑義を質し、「独占禁止法上問題」との見解を確認いたしました。こうしたことを受け、後に、NPB側も労使交渉のなかでこの点は改めることとなりました。

 

こうしたなかで、東京高等裁判所からの異例の見解表明もあり、九月八日のオーナー会議以降やっと、選手と経営側の実質的協議が始まりました。会議終了後の滝鼻オーナー会議議長の記者会見で「今後は、オーナーが実行委員会のメンバーに決定・判断権を一部委ねる旨合意した」と発言されたことからも明らかなように、それ以前は、権限が十分に与えられていない実行委員会が選手会の相手をしていたということになります。

 

九月九日、十日は、初めて、経営・選手の間で中身のある協議が開始されました。プロ野球機構側の顧問弁護士の先生が、筆頭発起人の仙谷由人議員(弁護士)の司法修習所同期で、かつ、私の恩師の菅野和夫東大教授の知人というご縁もあり、我々も十日の暫定合意文のとりまとめのお手伝いもさせていただきました。まずは、いろんな分析を行い、面子論ではなく事実・数字に基づいた議論を継続・深化させようということで、九月十一日、十二日のストは回避されました。

しかし、皆様もご承知のように、翌週の協議では、二〇〇五年シーズンからの十二球団二リーグを求める選手会と、二〇〇六年シーズからとする機構側で意見が折り合いませんでした。やむをえず、選手会は、プロ野球の縮小を阻止するため、圧倒的な世論の支持を背景に、七十年をこえるプロ野球史上初のストライキに九月十八日、十九日に突入しました。

我々も、選手会も、機構側も、ストが長期化・泥沼化することは、プロ野球界全体にとって好ましくないと考えておりました。また、スト突入の段階で、根来コミッショナーが辞意を表明され、調整役不在ともなっておりました。再度、関係者からの要請もありましたので、九月二十日夕刻から九月二十三日の交渉決着まで、我々が、水面下で、文部科学大臣、官房長官などとも連携し、交渉妥結にむけてのお手伝いをさせていただきました。

 

結論としては、皆様もご承知のとおり、新規参入料制度が見直され、五十年ぶりに楽天がプロ野球に新規参入することとなり、来期も、十二球団・二リーグ制が維持されました。また、セ・パの交流試合も新たに行われることとなり、プロ野球の魅力回復に若干なりともプラス要素が加わることとなりました。

 

球団減少という最悪の事態が回避され、我々としては、正直、ホットしてはおります。さらに、半年前まで、絶大な権力をもっておられた渡辺オーナーや堤オーナーが野球界を去られましたことは、正直、強い感慨を覚えざるを得ません。これもひとえに、十二球団の選手の皆さんが古田敦也会長のリーダーシップの下に心一つに一致団結したこと。そして、それを全国のファンの皆さんが全面的に支えたお陰だと感動しています。

特に、古田敦也選手会長は終始素晴らしかったです。若者たちも各地・各所で一生懸命がんばっていました。民意を結集し、あきらめずに声を発し続ければ、「世の中は変わる。少なくとも何かは止められるんだ!」ということを、若者をはじめすべての国民の皆様が実感できたという意味で日本の歴史上久しぶりの快挙ではなかったかと思います。私も、国民の皆様のお気持ちに沿ったかたちで働くことができ、よかったと思っております。古田敦也選手会長にも大いに感謝していただきました。

近鉄バファローズを失った大阪の皆様には、本当に申し訳なく思っておりますが、千葉と福岡の皆様は、かなり危うかった球団の存続が確保されて、胸をなでおろしておられることと存じますし、また、新たにホームチームを持つことになる東北の皆様には、新球団を地元一丸となって愛し・育てていただければと存じます。今後は、四国をはじめ、プロ球団不在地域における新球団参入のお手伝いしていきたいと思っております。

しかし、まだまだ予断は許されません。福岡ダイエー・ホークスの動向はいまだ目を離せません。ここも我々で十分注視し、できる限りのお手伝いはさせていただく所存です。さらに、大幅な視聴率低下でも明らかなようにプロ野球からの離れてしまった人心を再び取り戻すために、あらゆる努力を傾注していかなければなりません。そのためには、経営者側、選手側、共になすべきことが多くあるように思いますし、ファンや有識者の代表も参画する構造改革委員会などでも、いろんな打開策が提案され、実現されることを強く期待しています。

 

我々の側からの問題意識としては、野球界全体の組織ガバナンスの見直しについては、中期的課題として取り組んでいきたいと考えています。つまり、サッカーの場合、プロ・アマをとわず、日本のサッカー界全体を包含する組織として財団法人日本サッカー協会があります。そして、その下に、社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が存在しています。

しかし、野球の場合は、プロ・アマ双方を含む組織として近年発足した全日本野球会議は法人格をもっていませんし、この組織は、実質的な権限や予算・実働部隊をほとんど持ち合わせていません。アマでは、財団法人日本高等学校野球連盟、財団法人日本学生野球協会、財団法人日本野球連盟(社会人野球)が存在し、一方、プロ野球は、経営側のみを構成員とする組織として、文部科学省所管の社団法人日本野球機構と任意法人日本プロフェショナル野球組織(NPB)が二元的にいびつな形で存在していますし、加えて、文部科学省所管の社団法人日本プロ野球選手会があります。

実質的に活動を行っているNPBが任意法人であるために、民法上も、商法上も何ら、内部・外部からのチェックを受ける法的義務がないところに、今回のプロ野球問題の遠因があると我々は考えています。

河村前文部科学大臣からも「野球機構とNPB、この二つの団体が一体となって透明化されるということになれば・・・」との発言もありましたが、この際、それぞれの組織のあり方を見直して、法的位置づけも明確化することがプロ野球の健全な発展に不可欠だと考えております。

さらにできれば、日本の野球界も、プロもアマも含めた大掃除を行い、アジア・リーグなどに向かって明確な構想力と実行力をもって取り組む強力なリーダーの登場が待望されると痛感している次第です。将来的には、古田敦也さんなどは、最適任だと思いますが、古田さん登場までを待っていられる時間的余裕は今の野球界にはありません。

 

以上のような観点から、国会からも、野球界の健全化のための環境整備をお手伝いしていきたいと考えております。野球問題では、皆さんも様々なご意見がおありだと存じます。ぜひ、いろいろとご意見いただければ幸いです。引き続きのご支援お願い申し上げます。




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