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 真の演説家 尾崎咢堂先生に学ぶ

 昨年の秋には、神奈川県の津久井町で行われた第一回の「演説の甲子園・尾崎行雄杯青年演説大会」に審査員として参加させていただきました。津久井町は、憲政の父である尾崎行雄先生の生誕地です。 私は、常々、「ディベート」と「演説」は全く違うものだと思っています。稀代の名演説家・尾崎行雄先生が学んだ慶応義塾でも、福沢諭吉先生が演説の普及に尽力されましたが、相手を論破することにエネルギーを注ぐディベートちがって、演説は、一人の人間として全人格をかけて聴衆と心を通すものです。さらに、人々を魅了し、人々・社会・時代を動かすのが『雄弁な演説』だと思っています。
 審査をご一緒した都立大学助教授の宮台真司さんも「議論に勝って動機づけに失敗するということがよくある」と述べていらっしゃいましたが、「人の心に灯をともす」ことこそが演説の核心です。
 中学生2名、大学生6名の素晴らしい演説を聴いた後のパネルディスカッションでは、私がコーディネーターを勤めさせていただき、審査委員の宮台真司さん、NHKの角プロデューサー、咢堂先生の妹のお孫さんでもいらっしゃる天野津久井町長、河村たかし衆議院議員と一緒に「演説論」について議論を深めました。
 自らの体験に基づき、感情がこもり、志に満ちた行動を伴う言葉こそが、人々を納得、共感、感動させ、新たな行動を生み出す。尾崎咢堂先生が人々の心を揺さぶったのは、大日本帝国憲法下で言論の自由がなかった時代に、命の危険を顧みず、勇気をもって自説を曲げず、自らの考えを、人々に訴え続けたことにあった・・・、これからの時代というのは、思いだけでは動かない、志を元氣に主張するだけではなく、その夢や志を、具体的にどのような手順と方法と戦略をもって実現していくかについても、語っていかなければならない、といった大変に示唆に富んだ議論がなされました。
 総選挙でも、多くの候補者の絶叫? を聞きましたが、果たして、真の演説と呼べるものがどれだけあっただろうか? と反省した次第です。
 尾崎咢堂先生は第一回総選挙以来連続25回当選、議員在職は63年に及びました。来年2004年が没50年になります。今回、改めて尾崎先生の足跡に触れ、国会に身を置く者の一人として、初心に返り、国会が再び言論の府として再生するため、人々を魅了し時代を動かす演説家としての人間の修業を一から始めなければとの決意を新たにした次第です。
ちなみに、青年演説大会では、東京大学で学ぶ韓国人留学生の姜星運君が優勝しました。実に立派な演説でした。


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