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 2003年の前半を振り返って

 190日にも及んだ第156回通常国会も、7月28日をもって閉会することとなりました。今国会開会中には、米英両国によるイラク攻撃が展開され、わが国にとっても、国際貢献のあり方が大きく問われた国会であったと言えます。また、依然として低迷する経済状況からも、まさに政治の役割が大きく問われています。今国会では、予算案をはじめ多くの重要法案が審議・通過しました。その中には、有事法制や個人情報保護法など、国民の生命・財産・尊厳を守るという意味からも、実に重要な意味を持った法案もありました。さらに、国立大学法人化法などの知的創造立国に向けた基本枠組が問われる法案、その他、司法改革関連法、労働基準法改正、保険業法改正などの大型法案の審議・成立が続き、まさにこの国のあり方が大きく問い直されています。

 今国会の最大の争点は、経済問題と、イラク・北朝鮮問題を中心とした外交・安全保障問題です。この二つの問題を見るだけでも、小泉政権の危うさがよくわかります。華々しく総理としてデビューした当初は、その勢いに誰もが驚かされました。私自身も、参院選前でしたから、必ずや私の主張は、有権者の方々に伝わるはずだとの信念は持ちつつも、小泉旋風便乗選挙には、本当に冷や汗モノでした。ところが二年以上が経過し、やはり自民党政権であることの限界・メッキがどんどん剥がれてきています。もともと14,000円以上あった株価は、最近持ち直して来ているとは言え、依然と1万円割れで、失業率も5%以上に高止まり、明るい希望は一向に見出せません。りそな銀行に対する突如とした公的資金導入の決定も、金融システム安定の美名のもとに、十分な情報開示も、論理的な説明もないままに進められていきました。
 民主党も、日本経済の底力を引き出すために、中小企業や家計を預かる皆様の生の声をいただきながら真剣な議論を繰り広げ、本当の「改革」を成し遂げようと、一生懸命知恵を絞っています。今年の予算審議にあたっては、これまでの野党にはない試みを発表しました。それは、政府の予算案に対案を出したことです。100万人の雇用を創り、地方に創意と創意と活力を活かす財源を渡し、奨学金や年金の充実など将来への責任を果たす、民主党独自の予算案を提出しました。残念ながら、与党はこの予算案を審議せずに葬り去ってしまいましたが、財務省を持たない民主党が独自の予算案を出すという作業は、本当に大変でしたが、こうした私たちのひとつひとつの努力が、国会を本来の言論の府の姿に近づけていると確信しています。
 問題の根源は、時代の変化と国民の要請に応えない政官業癒着の旧態依然とした自民党の政治体質にあります。これを打破する以外に日本の展望を開く道はあり得ません。いよいよ、解散総選挙が近づきつつあります。一刻も早く総選挙を行い、政権交代を実現しないことには、この国が本当に取り返しのつかないことになると痛感しています。
 私は、8月2日に政策分析ネットワーク主催の「小泉政権の2年を振り返る」と題したシンポジウムに、伊藤元重東大教授コーディネートのもと、自民党の渡辺善美 衆議院議員、吉川 洋 経済財政諮問会議議員、吉田和男 京大教授、三木谷 楽天社長らと一緒にパネリストとして出席しましたが、私なりに振り返れば、自民党政治という日本政治のOS(オペレーション・システム)を変えない限り、その上で、多少元気のいい小泉内閣というアプリケーション・ソフトが乗っかったところで、OSとアプリケーションの不具合で、結局前よりフリーズ(コンピューターの作動停止のこと)が増えただけというのが、この二年だったと思います。そんなOSとソフトを使っている国民から見れば、大いに迷惑を蒙ったということだと思います。    
 1999年に、体制内改革の限界を思い知った私が、霞ヶ関を飛び出て慶應湘南キャンパスに移ったのも、そして、2001年に永田町の真っ只中に飛び込むことにしたのも、1955年から50年間続いた、自民党・官僚・業界による鉄のトライアングルが日本を動かすという「政治のOS」を丸ごと入れ替えたいとの思いからです。今国会でも、自民党OSの限界が、政策面でも、金権腐敗政治の面でも、再び露呈した国会でした。やはり、OSを入れ替えるための政権交代しかない、その一言につきます。

■党副幹事長として党務に奔走

 こんな国会にあって、私は、院内での仕事もさることながら、民主党の仕事に追われた国会でもありました。民主党副幹事長として岡田克也幹事長にお仕えをさせていただきましたほか、参議院民主党・新緑風会でも国会対策副委員長及び政審副会長を仰せつかり、また、民主党の広報宣伝副委員長、国民運動副委員長などの党務にも精励させていただきました。
 また、「教育のスズカン」としては、引き続き、民主党教育基本問題調査会事務局長及び文教科学部門会議の役員として、我が党の文教科学政策の責任者を務めさせていただくなかで、コミュニティ・スクール・ワーキンググループ(以下WG)座長、大学改革WG事務局長、奨学金WG副座長なども務めさせていただきました。
 民主党内の議員勉強会としても、「国民の生命・財産・尊厳を守る国づくりを実現する会」(鳩山由紀夫会長・前原誠司会長代理)、電波問題懇談会(羽田孜特別顧問・鳩山由紀夫会長)の発足に携わり、それぞれの事務局長に就任いたしました。また、超党派の仕事としては、引き続きサッカー外交推進議員連盟の副会長兼事務局長を仰せつかっております。

■統一地方選挙 各地で快進撃!

 今国会の真っ最中の4月には、4年に一度の統一地方自治体選挙が行われました。東京都知事選挙の結果はご承知のとおりですが、市区町村の首長・議員選挙も行われました。私は、民主党東京都連の総合選挙対策事務局長を仰せつかっておりましたので、選挙期間中は東京中をまさに東奔西走いたしました。故石井紘基先生の議席を守る世田谷の衆議院補欠選挙で、小宮山洋子さんが快勝したのをはじめ、全体としての成績も概ね順調でありました。各地で応援いただいた皆さんに心より御礼申し上げます。ただ、依然として、市区町村議員の数ということでいうと、自民党・公明党に大きく水をあけられており、多数の候補者の擁立、地域基盤の整備といった課題は、今後真剣に取り組んでいかねばなりません。
 そんな課題を民主党東京として抱えるなかで、スズカン事務所の仲間からは、将来の明るい材料がいくつも生まれました。
 私、鈴木 寛の持論ですが、地域主権・現場尊重が、次なる時代のガバナンスのキーワードだと思っています。コミュニティ・スクール構想を掲げたのも、この構想を進めるなかで、各学校区単位くらいで地域コミュニティが出来て、教育問題からはじまり介護や育児や環境といった課題を、このコミュニティが日々、不断に解決していくという社会の姿をイメージしているからです。私が、東京の参議院議員になった理由もここにあります。東京都全都から選出をしていただいている参議院議員は、すべての首長、都議会議員、市区町村議員とネットワークし、コラボレーションできますから、コミュニティ同士の横の連携や、市区、都、国などの縦の連携を図るコーディネーター役を果たせます。そして、皆さんと一緒に、東京中の各地域・各テーマで自律的な市民コミュニティが発生・成長し、まずはそれぞれのコミュニティががんばり、そして、個別では対応できない問題には関連するコミュニティが縦横無尽に連携・協力し合いながら、都民・市区民が抱える諸問題が解決されていく、そんな東京を作ってみたいと思ったからです。
 そうした社会構築を推進していくにあたって、コミュニティ・リーダー、コミュニティのプロデューサーやコーディネーターとして活躍していただくのが、市区町村議員だと思っています。
 こうした私の考え方を共有してくれる若者が、スズカン事務所で苦楽を共にした2001年の秋に葛飾区議トップ当選の鈴木 烈 君であり、2002年春の町田市議トップ当選の新井よしなお君であったわけですが、こうした2人の快挙に続けとばかりに、この2003年4月の統一地方自治体選挙に、東京だけで10名近く立候補してくれました。結果は、ほぼ全員当選で、しかも、渋谷区での一位・二位独占をはじめトップ・上位当選が続出しました。早速、東京で当選した有志の仲間が集まって、New Public Management(NPM)や、コミュニティ・ソリューション、さらには、Activity Based Costing(ABC=活動基準会計)などについての政策勉強会を開始しました。私も久しぶりに学者に戻ってセミナーをさせていただきました。今後は、若手だけでなく、中堅議員の皆様にも声をかけさせていただきたいと思っています。ちなみに、関西でも、芦屋市、西宮市などでも、私の親しい仲間がトップや上位で当選を果たしましたし、さらに、私が慶應義塾大学 助教授時代に佐藤大吾 君たちと、本格化させた議員インターンシップのNPOであるドット・ジェイピーのインターン卒業生たちも、全国各地で挑戦をし、約50名程度が新たに議員になりました。このように若い層から、着実に新しい芽が生まれていることを本当に嬉しく思います。若き仲間の奮闘と、そうした彼らを各地で応援をしていただいたすべての皆様に改めて御礼申し上げたいと思います。

■政権交代に向けて、マニフェスト準備中!
 
 いよいよ次期総選挙が近づいてきています。民主党では、マニフェストと呼ばれる政策綱領を発表する準備を進めています。そもそもマニフェストの特徴は、各政党が主張する政策を掲げるだけでなく、具体的な事業推進の数値目標、そのための財源措置、達成期限など、政策実現への明確な根拠を必ず付記し、国民に示すところにあります。政策を掲げる点では公約と何ら変わりはありませんが、何をいつまでに、どうやって実現するかを示すことによって、自らに責任を課し、同時に「自分たちの政党が政権を担当した際には、掲げた政策を必ず実行する」と、根拠を示して政策実現力をアピールし、国民に対して約束するものです。
 英国でも、ブレア首相が、このマニフェストで国民の支持を受け旋風を巻き起こしたことは有名ですが、日本でも、前三重県知事の北川早稲田大学教授や飯尾政策科学大学院教授らが中心となって、日本の民主主義インフラ整備のためのマニフェストづくり運動を推進しておられ、民主党もこれに呼応しているものです。北川教授も飯尾教授も、以前から、日本を何とか建てなおすために、一緒にがんばってきた方々ですから、私も、この運動に励んでいきたいと思っています。
 小選挙区中心の選挙制度となって今度が三回目となります。民主党を中心とする野党勢力は、政治改革が目指した政策本位の選挙の実現に向かっています。今後、民主党が発表するマニフェストの内容に是非ご期待ください。

■民主党・自由党との合併
 
 会期末に、民主党・自由党との合併が、菅代表・小沢党首とのトップ折衝で電撃的に決定しました。昨年12月に、鳩山由紀夫前代表がイニシアティブをとられてから、紆余曲折を経て、今回の決着となりました。鳩山執行部時代は、私も自由党との水面下の交渉に立ち会っておりましたし、この春にも、自由党幹部・若手と接触は常にとっておりました。しかし、本件の経緯・経過については、合併準備が途中でありますので、もう少し時がたってから、後日談は申し上げますが、政治家として、非常に勉強になったということだけは、まず強調させていただきます。
 この合併に野合という批判が一部にありますが、全く、それはあたらないと思っています。我々は、日本政治のOSを変えなければ何も進まないと思っています。族議員やセクショナリズムどっぷりの有力官庁、一部の既得権集団が政官業の癒着のトライアングルを組んで、国民が汗水たらして納めた貴重な税金を食い物にしている。この税金を食べる「オバケ」退治をしようというのが、両党の完全に一致した政策です。この「オバケ」は、権力という場所にしか生息できませんから、権力の座から追い出され、税金の使い方に関与できなくなり、税金を食べられなくなれば、すぐに死んでしまう、そのことを我々がやろうといっているのです。 
 オバケ退治をして、本当に、すべての有権者の皆さんが思っておられること、感じておられることを吸い上げて、そして、それに基づいて税金の集め方・使い方を決めていく、外交や立法を決めていくという政治体制に作りなおそうと思います。今の日本政治の最も緊急に直すべき故障箇所は、民意と政策との連動が切断されていることです。いくら国民の皆さんが、今の政治のハンドルを切ってみようと思ってみても、ハンドルは固いし、ハンドルが動いても、車輪の向きは全く変わらないという故障車です。有権者の皆さんが、ハンドルを切れば、ダイナミックに反応して、自由自在に車輪やエンジンを動かすことができる新車を用意しようということで、両党はがっちりスクラムを組みたいと考えています。

■正義のために勇気をもって

 人間なら誰しも、性悪な部分と性善なる部分とを持ち合わせていると思います。しかし、永年の積重ねによって、その善い部分を膨らませてきた人と、悪い部分を膨らませてきた人とで、雲泥の差になってしまいます。善い社会というのは、誰しもが持っている善い部分を膨らまし、善行につなげていくことができる社会かどうかということだと思います。私のライフワークである教育とは、それぞれの人間の内に必ずある「善なるもの」が成長し、「邪悪」に打ち勝ち、そうして培われた人格がおのずから善行として発露していくことを目指して、人間の内面の進化・深化を、お手伝いすることだと思っています。そして、今の私の任務・本務であります立法とは、人間の内から生まれる善行を外側から奨励し、同じく、人間の内から生まれる悪行を外側から抑制する制度を創り、発展させていくことだと思っています。
 今の日本、いたるところで、人間の我欲・醜さが放置されています。放置しているのは、誰でしょうか? まずは、その当人自身です。その隣人も、放置しています。そして、そのまた隣人も…。当人も、隣人も、内心では、正義にはほど遠いことを一番よくわかっています。しかし、そのよくわかっている人が、何故、ウソをついたり、見て見ぬふりして沈黙するのでしょうか? それは「保身」のためです。今の立場を失うのが怖いからです。
 今、この国にとって、もっとも大事なことは何か? それは「勇気」だと思います。今まで築き上げてきた自分を失うかもしれない恐怖と立ち向かっていく「勇気」だと思います。最近、私が称えたいのは、道路公団の副支社長さんの勇気です。彼は、現に調査役に降格されてしまいましたが、大変な勇気を持って、正義の発言をし、正義の行動をしました。日本社会は、こうした「勇気」をもっと称賛しなければなりません。そして、一過性ではなく応援し続けなければなりません。
 政治に携わるものが一番、この「勇気」を持たなければならないのは言うまでもありません。そうした意味でも、故石井紘基先生は本当に勇気の人でした。日本政治の問題点を一番よく知っている「官僚」や「マスコミ」や「学者」など、日本政治の隣人の皆さんにも、今一歩の勇気を持って行動していただきたいと思います。知ってしまった人間、知りうる立場にある人間が、勇気を持って真実を伝えれば、有権者の皆さんの勇気に火がついて、日本が劇的に変わります。 
 私、鈴木 寛も、学校現場で、仕事現場で、家庭で、銀行で、街角で、電車の中で、もっともっと、多くの人が勇気を振り絞れるような環境をつくるために、がんばっていきます。是非、鈴木 寛、そして、正念場の民主党に、「勇気」をお与えください。


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