2004年11月02日
○鈴木寛
民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
私ども民主党も、冒頭に、このたびの新潟中越地震、それから今年は十回以上も本土に台風が上陸をいたしまして、それぞれが大変に大規模な大型の台風によりまして全国各地で大きな災害が起こっております。そして、多くの方がお亡くなりになり、そして被災をされました。お亡くなりになられた方に心より御冥福を申し上げるとともに、被災をされた皆様方に心よりお見舞いを申し上げたいというふうに思います。
先ほどの質疑にもございましたけれども、先ほど地震によります文教施設等の被災状況については少しお触れになりましたが、台風も含め、この夏以降我が国を襲いました台風及び地震による文教施設の被災状況、そしてそれに対するこれまでの対応、さらには今後の対応についてお聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(萩原久和君)
一連の台風及び新潟県中越地震について御説明いたします。
まず、被害の状況でございますが、今年度の一連の台風及び新潟県中越地震による文部科学省関係の被害状況でございますが、現在のところ、新潟県、兵庫県など一都一道二府四十一県におきまして、国公私立の学校施設、合計で五千三十五校において被害があります。豪雨による床上浸水や地震による壁のひび割れ等の被害が報告されているところでございます。また、社会教育施設、文化施設におきましては千九件、それから文化財等では五百四十九件の被害が報告が寄せられているところでございます。
対応策でございますが、文部科学省といたしましては、関係教育委員会等に対しまして、今回の災害による被害を受けた学校施設の復旧事業の迅速な実施について通知するとともに、地方公共団体等の設置者から国庫補助申請に基づき順次所要の調査を実施しているところでございまして、災害復旧事業の円滑な実施に努めているところでございます。
今後とも、引き続き文教施設の被害状況の把握に努めまして、被災しました施設の早急復旧に向けまして、関係機関と連携して被災地への協力、支援に万全を期していきたいと考えております。
○鈴木寛
今、全国で五千三十五校、これ学校だけでですね、という御報告がございました。これ、大臣始め文部科学省に是非お願いをしたいんですが、是非こうした情報は文部科学省が積極的にもっともっと発表、公表していただきたいと思います。
報道を見ていますと、もちろんこれ、地震大変なことでございます。地震の報道もどんどんしていただきたいと思いますし、先ほども我々がなかなかテレビや新聞では知り得ない情報を文部省からこの委員会で初めて御報告をいただいております。
ただ、地震の地区、新潟県、だけで三百二十八校でありますが、全国でいうと、これ五千三十五校なんですね。五千三十五校と、これ大変な数ですよ、これ。これだけの被害が全国各地で起こっている。例えば、兵庫県の豊岡というのはまだ水につかっているわけですね。こうした情報というのがどうしても今のメディアの報道からでは我々うかがい知り得ません。
〔委員長退席、理事北岡秀二君着席〕
こうしたときこそ、文部科学省始め政府が、国民の皆様に是非知っていただかなければいけないこうした基本的な情報をもっともっと積極的に自発的に、今日の場で有村さんも含め我々がお伺いをして出てきたわけでありますが、今までニュース見ましたけれども、こうした数字については我々は十分に告知されているというふうには言えないと申し上げていいと思いますので、この辺は是非小まめに積極的に情報を出していただいて、この問題の深刻さというものを多くの皆様方に共有をし、そしてこの問題に対する対応を政府を挙げて、そして国会を挙げて、そして国民を挙げて実施をしていくということに是非率先をしていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。
それで、現にこの五千三十五の学校、更に社会施設、社会教育施設、あるいは文化財を含めますともっと多くの数になるわけでありますが、特に休校などの教育活動に相当な影響が出ているというふうに思います。これは、これまた災害から一定の時間が経過されてしまいますと、またこれもニュースの中で埋もれてしまう。しかし、なかなか十分な学習環境の下で十分な教育が受けられないという実態はこれ続くと。しかし、世の中の関心はまたほかのことに移ってしまうということになりがちでありますが。
しかし、この問題は絶対にそうさせてはいけない問題でありますので、子供の教育活動というものにどの程度の支障があって、それがどういうふうに正常な状態に復帰をしていくのか。それに、中にはかなり時間を要すものもあると思います。時間を要すものがあれば時間を要して、この問題は本当にこれから中長期的にきちっと取り組んでいかなければいけない問題でありますということを常に発し続けていただきたいということも込めて、この教育活動の被害といいますか、支障がどのように起こっているか、その回復がどのように行われているかという点についてお答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君)
まず、今回の中越地震の被災地域にございます学校での休校措置の状況でございますが、現在十一月の一日時点で公立学校百六十五校、私立学校二十五校が休校をいたしております。また、授業を再開をした学校におきましても、体育館やランチルームが避難所として使われているという状況もございます。
こういった中で、県の教育委員会や関係市町村教育委員会では、子供たちの状況、施設の安全度、通学路の確保等を勘案しながら、できるだけ早期に学校の教育活動を正常に戻せるよう今取り組んでいるところでございます。県の教育委員会からのお話では、ほとんどの市町村では来週の初めぐらいまでには学校を再開できるということを目指して今取り組んでいるというふうに報告を受けております。
文部科学省としても、できるだけ早期に学校の教育活動を正常に戻せるように、県や市町村の要望を踏まえながら、施設の安全点検、教科書の確保、こういったことにつきまして必要な協力、支援に万全を期してまいりたいと思っております。
それから、先ほど来お話のございました最近の台風による休校措置でございますが、これは十一月一日現在すべて解消されております。
以上でございます。
○鈴木寛
是非、最後の一校まできちっと十分な目配りをしていただきたいというふうに思います。
それで、このたびの地震あるいは災害におきましても、改めて学校を始めとする文教施設というものが地域住民の避難所として本当に重要な役割を果たす施設なんだということを我々は再認識をいたしたわけでございます。しかしながら、なかなか、学校には来たけれども、結局、校舎あるいは体育館には入れずに、校庭で車の中に泊まるとか、あるいはそこにテントを張って難をしのぐといった光景が毎日のように今報道をされております。その中で、エコノミー症候群によって、防げた、免れることができた命が失われている、亡くなられているということはもう本当に痛ましいことだというふうに思います。
そういう中で、以前から私ども民主党が主張をいたしておりましたが、文教施設の耐震基準、これを満たしてない文教施設がこのところ急速にその割合が増えていると。この問題については早急に手を打てということを我が党も再三にわたって指摘をしてまいりましたけれども、改めてこの災害の最重要な避難場所であります文教施設の耐震構造あるいは耐震対策というものについてきちっと取り組んでいただきたいというふうに思いますが、その現状とこの取組についてどうなっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(萩原久和君)
学校施設の耐震性についてお答えいたします。
先生御指摘のように、公立学校施設が非常災害時におきまして周囲の地域住民の方々の避難場所になる役割を持っておりまして、その安全性、特に耐震性については極めて大事なことだと認識しております。
それで、今年の四月に文部科学省が調査した結果でございますが、公立小中学校において耐震性が確認されていない校舎、屋内体育館でございますが、これは六万七千棟ございます。これは、全体棟数約十三万棟に対しまして五〇・九%ということで、半分強その安全性が確認されていない、耐震性が確認されていないという状況でございます。
このために、文部科学省といたしましては、平成十六年度予算におきましても、耐震化予算を最優先にいたしまして、一千百五十五億円を措置して耐震化に努めているところでございます。
○鈴木寛
今、五〇・九%の学校が、校舎が、施設が耐震基準をクリアしていることが確認できてないと、これは大変な数字だと思うんですね。これも、是非文部科学省、国民の皆さんにもっともっときちっと開示をして、そしてこの問題の重要さというものを本当に、今頑張りますというお答えはこういう席でありますからされるわけでありますが、いざこれ災害が起こって、そして頼りにしている学校に行ってみたら、その半分は避難所として使い物にならなかったと、こういうことであります。このことは本当に長年の文教施策のある意味での失政だと申し上げて過言でないというふうに思いますが、この点については本当に早急に抜本的な取組を御検討いただきたいというふうに思います。
そういう中で、今回の三位一体の御議論の中で、校舎の施設整備費については交付金化をしてもいいということを文部科学省はおっしゃっているようでございますが、こうした中で今の耐震対策大丈夫なのかどうなのか、お答えをいただきたいと思います。
○副大臣(塩谷立君)
耐震の現状についてはまだまだ推進をしなければならないと受け止めておるわけでございますが、今回、三位一体の改革の中で、文科省としては新たに公立文教施設整備交付金ということで今提案を検討しているところでございます。
これは、特に三位一体の改革という一つの地方財政の改革に当たって、文部科学省としてはなかなか難しい議論の中で一つの案として検討しているわけでございますが、耐震につきましては、地方の裁量によって、また地方の実情に応じて、より適切な、そして耐震化にふさわしい事業ができることを期待をしているところでございます。
いずれにしましても、全体的な今回の状況を踏まえて今後この問題も検討してまいりたいと思いますし、やはり何といっても安全で安心な学校づくりは私どもの責任だと考えておりますので、この耐震化の推進についても今後とも努力をしてまいりたいと思っているところであります。
以上です。
○鈴木寛
大臣、国にはいろんな重要な政策があります。もちろん限られた財源であります。その中でのやっぱり政策の優先順位というものをこれきちっと精査をし決めていくというのが、これは正に政治の仕事だというふうに思います。
歴代の文部科学大臣あるいは文部省の関係者の皆様方、教育が大事だとおっしゃる。我々もみんな同じ気持ちであります。しかし、問題は、きちっと政府部内でのプライオリティーというものをどのように位置付け、直していただくかと。過去の自民党長期政権の中での例えば文教施設の耐震基準、この極めて重要な問題が五〇%を超えるまで、その耐震基準を満たしていない校舎が、まで放置をしてきたというのはこれ厳然たる事実でございますし、それから、その中で私も、日々文部科学大臣及び文部科学省の方々が三位一体の議論の中で大変に御苦労をしていることは私も十分承知しておりますし、恐らく今の政府全体の動きに対しては、文教科学委員会すべての委員がこの動きに対してはおかしいと。その意味では、恐らく今日ここに集まっている方々の間で大きな議論の違いはないんだと思います。
しかし、是非ここでの意見を、あるいは気持ちを、これは皆様方、本当に全国の津々浦々の教育に携わる、あるいはお子さん、お孫さんを育てておられる御家庭の声がここに集まっているわけでありまして、その意見を体してきちっと政府内でその声を反映をし、そして実現をしていただくということが大臣のお仕事だと思いますので、是非この点は、大変な一週間だと思いますが、頑張っていただきたいというふうに思います。
この三位一体の議論については私ども同僚の那谷屋議員が後でじっくりとやらしていただきますので、私は今その点のところを申し上げるにとどめておきたいと思いますが、もう一つ、ちょっとこの文教施設の耐震の問題でありますが、まず今回、震災あるいは台風で被災をされた地域における文教施設、これはどの公共事業よりも、どの公共施設よりも高い優先順位で私は整備あるいは修繕、復旧というものをこれしていただきたいと。正にここ、小泉内閣が何に重点を置いているのかという順番が問われるという議論でありますから、この点は是非やっていただきたい。
〔理事北岡秀二君退席、委員長着席〕
しかも、民主党は、この国会で補正予算案というものを文部科学省からきちっと財務省にお出しになって、少なくとも文教施設についてはこれだけの額を確保し、そしてこの点、この点、この点については被災地の文教施設について速やかな復旧が必要であるという要求を今国会中に財務省にしていただきたいということを強く民主党としてはお願いを申し上げますが、この補正予算に伴う文教施設の復旧、改修について御意見を、というよりも御決意をお伺いをしたいと思います。
○副大臣(塩谷立君)
委員おっしゃるとおり、大変な甚大な被災を受けているわけでございまして、いち早くこの文教施設の回復を私どもも願っているところでございます。
公立学校の施設については、災害復旧事業等について地方の公共団体から、あるいは設置者から申請に基づいて、法律の規定による国庫補助を行うわけでございます。公立学校施設は特に地震や被災時には応急避難所として活躍をしているところでありますし、また耐震性確保については、先ほどもお話ありましたように、耐震化関連予算として一千百五十五億を措置しているところであります。
特に、今回の自然災害等によるこの復旧事業に対してはできるだけ速やかに必要な予算を確保すべく努力をしてまいりたいと思っておりますので、補正予算、必要が明らかになったときには、私どもの方としても努力をしてまいりたいと思っているところであります。
○鈴木寛
今国会中におやりになるのかどうか明確な答えいただけなかったんで残念なんですが、文部科学省にお願いしたいのは、是非、受け身ではなくて、情報の提供も率先してやる、それから必要な予算の要求も率先してやる。今回の三位一体も、どうも攻め込まれているという感じなんですね。必死に防戦していると。これはなかなかいい突破口につながらないと思いますね。先手必勝でございますから、正に災害に伴う文教施設の復旧、そして子供たちの教育環境の速やかな正常化ということについては、是非、新大臣のリーダーシップを心より期待を申し上げる次第でございます。是非お願いいたします。
それでは、教育の基本的な問題について少しお話をさせていただきたいと思います。
今、義務教育国庫負担制度をめぐって大議論がなされております。文部省がいろいろなところで反論をされています。国庫負担制度があったから今では大都市といわゆる地方の市町村の間で学力の格差はなくなったとおっしゃっていますが、果たしてなくなったんでしょうか。私の実感では、引き続き地域格差はあるのではないかと。もちろん、国庫負担制度なかりせば、これはもっと大きかったかもしれませんけれども、現状において都市といわゆる地方の格差がないという判断自体、私は疑問を呈さざるを得ないわけでありますが、具体的な全自治体のデータに基づいて御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君)
平成十三年度に全国の小中学校の教育課程実施状況調査というものを実施をしたわけでございます。
このうち、公立学校につきましては全国を三つの層に分けまして、一つが政令市及び東京二十三区の大都市、二つ目が政令市以外の都市、三つ目が町村部というこの三つの層に分けまして、それぞれの地域における児童生徒の平均正答率を比較をするということをいたしました。その結果、ほとんど差がないという結果が出ております。
三つの層の平均正答率の差は、まあ教科によっても若干異なりますけれども、〇%台から最大四%以内の幅に収まっております。これに対しまして、昭和三十年代の学力調査を見ますと、比較をする層がちょっと違うわけでございますけれども、例えば昭和三十七年度調査の中学校二年生の数学、これについて見ますと、住宅市街地の子供の平均と農村、山村の子供の平均で一〇%以上の差があるという結果が出ておりました。これらとの対照におきまして、現在は学力の地域間格差はないということを申し上げているわけでございます。
なお、平成十三年度調査におきましては、児童生徒の学力の全国的な状況を把握をするということが主目的でございましたので、先ほど申し上げましたように、子供たちを政令市及び東京二十三区の大都市、政令市以外の都市、町村の各層に分け標本を取ったわけでございますが、その結果、各自治体別の標本数には大きなばらつきがございまして、例えば都道府県ごとの学力状況の比較をするということは、これは統計的に余り意味がないということで、現在のところ、文部科学省の調査では各都道府県別の、自治体別の学力の比較という点に関しては最近のデータはないという状況にございます。
○鈴木寛
是非、いろんな角度から、それからいろんな段階の児童生徒の学力についてもう少し詳細なやっぱり現状把握必要だと思います。
学力の格差はないとおっしゃられますけれども、やはり我々一般の感覚からしますと、例えば高等教育機会にどれだけの子供たちがそのチャンスを物にしているかということを見れば、これはやはり今局長おっしゃったように、いや格差はないと、ないんだとこれ断言するだけの根拠があるのかどうかなと。そこは相当やっぱり我々一般の皆様方が感じておられる認識とギャップがあると思います。
この点は、後段、局長おっしゃったように、是非、更により綿密な調査というものをこれは行っていただきたいと。そして、そうした事実に、もっと多くの多角的な事実に基づいて更に議論を深めていただきたいと。本来は、こういうことになる前に、そうした政策の基礎的な材料については、もっと広範にこれは集める体制、しかもそれを定点観測的にやっておく体制というものは私は必要だというふうに思いますが、是非改善をしていただきたいというふうに思います。
それから、河村前大臣が任期の終わりのころに義務教育の改革案がまとめられました。大臣がお辞めになることを御存じだったのかどうか分かりませんが、やや唐突にといいますか、急いで取りまとめがなされたなという感じが否めないわけでありますけれども。
ただ、文部科学省さんも、義務教育というものが重要な課題であると、それに対して文部省の方からいろいろな、世の中に対して問題提起をしていかなければいけないという、そういう姿勢が少し変わりつつあるなということは、先ほど、褒めてというのが重要な教育だということを大臣おっしゃいましたので、まずその点は褒めさせていただきたいと思いますが。
しかし、今まではとにかく文部省というのは慎重、慎重でやってきたんですけれども、しかしそこへ出てきた中身が、教員養成の改革だと、あるいは免許制だと、こういうことなんでありますけれども、それももちろん重要な検討課題であることは私は否定いたしません。しかし、それをやればあしたから、あるいは正に教育現場が直面している問題点が解決されるかというと、ややそこには、ちょっと、急がば回れという言葉もあるかもしれませんけれども。もちろん同時にそういうことは必要でありますけれども、これが義務教育改革の、何といいますか、本丸でございますと言われると、果たしてそうかなということを首をかしげざるを得ない。あるいは、あの改革案を手に取ったお父さん、お母さんたちは、ああこれで安心したと言えるかというと、これもかなりのギャップがあるということは──言えない、言えないと思います。
そういう中で、例えば前国会で、地域に開かれた学校づくりということで、地域運営学校の制度を盛り込んだ地方教育行政法の改正が行われました。私が慶応大学時代から提唱をいたしてまいりましたいわゆるコミュニティースクールとは、まだ私から申し上げると六十点台かなということであります。恐らく、下村政務官も恐らくそういう御認識では共有をされております。下村政務官がそちら側にお入りになったということで、大変に私期待をいたしておるわけでございますけれども。
やはり、この地域に開かれた学校、結局、保護者が自分の子供が通っている学校の運営について直接にもうきちっと物を言える。あるいはその前提として、その現場にもう毎日でも見に行って、何が起こっているかというのをこの目で見る。やっぱりすべてのヒントあるいは改革の萌芽というのは現場にあるんです。その現場で起こっていることを直視し、そしてそこに潜む知恵、あるいはそこに潜んでいる問題点を、机上の空論ではなくて本当にみんなが実感をする。そして、関係者すべてが正に議論を尽くし、そしてやれることからやっていくと。このことを不断に積み重ねるということが、私は今日の教育現場を改善をしていく王道だというふうに思っております。
そのことに対して、そうした努力に対して、ここが良くなった、ここはまだだといったように、きちっと、的確な努力に対してその成果がどうなっているのかということを確認をしていく、評価をしていく。くさすための評価ではなくて、頑張ったことが実っていることを評価する、あるいはまだ反省すべきを評価する、そういうふうな建設的な評価というもの、これは私大変重要だというふうに思っておりますが、こうした点について、義務教育の正に改革、どのような方針で臨まれていかれるのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君)
若干お褒めをいただいたわけでございますが、義務教育の改革案は四本の柱から成っております。それぞれの内容につきましては、既に中央教育審議会などで審議を進めているもの、それから、これから諮問をして審議をするもの、先般、基本要請については諮問したところでございますが、そういうものと、三つ目には既に制度化をされて実施に移すべきものと、こういったものが混在をしているわけでございます。
私ども、この義務教育の改革案について、スケジュールをきちんと考えて、スピーディーに、スピード感を持ってその実現あるいは具体化に努力をしていきたいと、まずこう思っているわけでございます。
そこで、お尋ねの地域運営学校、いわゆるコミュニティースクールでございますけれども、これも平成十二年の教育改革国民会議の提言以降いろいろ検討が進められて、さきの通常国会におきまして所要の法改正が行われ、今年の九月から施行されたわけでございます。
私どもといたしましては、まずこの制度の活用促進に向けて、教育委員会等を対象とした各種会議の場における説明、あるいはもう既にパンフレットを作ってございますが、そのパンフレットの作成配布、それの説明と、さらには積極的な広報活動、そして実践研究校における研究成果の普及などを通じましてコミュニティースクールの実現を促していきたいと、まずこう思っております。
加えて、来年度概算要求におきまして、四十七都道府県にコミュニティースクールの活用についてのモデル事業を委嘱をすることといたしております。その事業の中でコミュニティースクールの成果について評価も行っていただきますし、その成果も広く全国に発信していくような事業を計画をいたしております。フォーラム等の開催も考えております。
いずれにいたしましても、この制度が全国的な展開が図られて、保護者や地域住民の参画による開かれた学校づくりが進められるように、私ども一生懸命努力をしてまいりたいと思っております。
○鈴木寛
是非、この地域運営学校、正に教育現場に根差した普及、展開、そして更なる制度の見直しということについて取り組んでいただきたいというふうに思います。
私、医学の中にエビデンス・ベースド・メディシンという言葉がございます、EBM。教育でも私はこの正にエビデンス・ベースドということは非常に重要だと思っているんですね。ともすると教育というのは哲学論争にすぐ陥るようになります。それぞれの議論をされている方は、それぞれの御自分の教育体験に基づいていろいろなことを語り合う。そうすると、当然それぞれの方々の教育体験というのは違いますから、話がかみ合っているんだかかみ合わないんだかよく分からない。どんどんどんどん哲学論争に陥ってしまうという傾向を返すためにも、正に今のエビデンスに基づいて皆さんが議論をするということはとっても重要なことだと思います。
その観点で、二〇〇二年から完全週休二日制になりました。その導入をめぐって、正に週休二日、これをもう一回六日に戻せとか、あるいはさらに学力低下論争というものがこの文教科学委員会でも大いに、盛んに議論されたわけでありますが、むしろ私たちは、完全週休二日制、要するに学校五日制になったことによって空いてきた土曜日というものを、本当に子供の学ぶ意欲とか、あるいは体験型の学習機会とか、そういう生きた土曜日にするということがより建設的な議論なんだろうということで、私自身も、土曜学校運動と称しまして、従来のいわゆる月曜日から金曜日までの学校でもない、あるいは塾でもない、正に第三の類型の教育のチャンス、これを土曜日に積極的に、地域あるいはNPO、あるいは若者、そうした人たちを巻き込んで新しい学びの共同体というものを各地域に子供を中心として作るべきだということで提唱いたしておりまして、私も、主宰しておりますNPOでそうした大学生の皆さんと、そして保護者の皆さんと土曜学校、学び場というものも私もやってきております。
昨日、土曜学校ということでインターネットを検索しますと、もう七万件に当たりました。これは、例えば武蔵野市なんかでも土曜学校ということで始めておりますし、いろんなところで、それから私立の中学校、高等学校でも率先して自発的にこういう土曜学校というものを開設をし、そして現場で働く皆様方の生の声を聞くというような活用の仕方など、非常にいいことだと思います。
文部省も是非、土曜日を地域の力あるいはNPOの力、あるいは若者の力で、充実した、今までの従来にない、正に第三の学びの機会というものを子供に提供するということで今までも御提案をし、それについては十分に御検討いただきながらいろんな施策の展開をしていただいているというふうに思いますが、次期予算編成に向けて、具体的にどのような事業を今お考えになって、そして財政当局と御折衝されているのか。さらに、それを是非とも私は実現をしていただきたいと思いますが、これについての文部省のお取組、御決意についてお伺いをしたいと思います。
○副大臣(塩谷立君)
学校五日制に伴って、週末の子供たちのいわゆる活動については非常に関心があるところであり、文部科学省としても、特に地域や家庭の教育力、この問題を重視して、子供たちに様々な体験活動や交流活動を行うことによって子供の居場所づくりを支援しようということで、地域子ども教室推進事業に取り組んでいるところであります。
具体的には、学校の校庭やあるいは余裕教室、あるいは地域のいろんな場を使って、特に地域社会の中で大人の皆さんの協力を得て、指導を得て子供たちに多様な活動をしていただくということで、今年度につきましては四十七都道府県で五千百五十二か所、今実施をしているところでございます。
そして、来年度、十七年度においては、特に週末においてより高度なといいますか、専門的知識や技能を有する方々を指導者として招いて魅力的な学習活動や体験活動を行おうということで、特に週末チャレンジ教室というような名前を付けて、必要な予算として約十八億円を要求しているところでございます。これについても努力して、しっかりと獲得に向けて頑張ってまいりたいと思いますので、またよろしく御支援お願い申し上げます。
○鈴木寛
次に、教育基本法の問題についてお伺いをしたいと思います。
私は、民主党の教育基本問題調査会の事務局長をいたしております。漏れ聞くところによりますと、次期の通常国会に向けて、与党内部ではこの法案をどうするのか、扱いについて連日議論が行われているというふうに伺っております。大臣も先日のごあいさつの中で、「国民的な議論を深めつつ」というごあいさつがございました。
私、是非、基本法、その法に基づいて具体的な施策が行われたのかどうかも含めて、この法をめぐって議論を深めること、民主党も賛成でございます。
もちろん、その国民的な議論の深め方の中身なんでございますが、私も、公聴会などを中央教育審議会がおやりになっているということは承知をいたしておりますが、国民的な議論を深める最も最大のものは、国会で、国民から代表をしろと議席をお預かりをしている我々国会議員が正に国会の場で国民の皆様の代弁者、有権者の代弁者として議論を深めることこそが国民的な議論を深めるということに一番資するのではないかというふうに思っております。
加えまして、教育基本法は憲法附属法であります。幾つもある法律の中で、憲法との関連性を明確に法律の中でうたい込んだ法律は、これほど明確にうたい込んだ法律はほかにございません。そういう意味でも、憲法を議論するのは我々国会議員の仕事でありまして、残念ながら行政府の方々のお仕事ではございません。そういう意味で、是非、憲法附属法であります教育基本法については、その在り方、あるいは今までの教育基本法に基づく教育政策が行われたかどうかの検証も含めて、国会内に教育基本問題調査会、仮称でございますが、のようなものを設置をし、正に与野党の議員がきちっと国会で議論をすべきだということを御提案を申し上げます。
是非、大臣、前向きに与党の方とも御相談をしていただいて御対応をお願いを申し上げたいと思いますので、この点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(中山成彬君)
教育基本法につきましては、昨年、中央教育審議会の方から答申もいただきまして、また今、与党の方でも本当に連日のように熱心な議論が戦わされているところでございまして、それと並行いたしまして、私どもといたしましても各地で教育問題に関するタウンミーティング等を開きまして、広く国民の皆様方も巻き込んで、今度どういう基本法がいいのかということについて今議論を深めておるところでございます。
今、鈴木委員からお話がありましたように、正に大事な法律だという御認識いただいているというのは非常に有り難いことでございまして、そういう意味では、これ与野党を通じて、本当に基本的な法律でございますから議論していただきたい、いくことになると、こう思うわけでございますけれども、国会にどのような調査会を設置するかということにつきましては、これは国会法等の規定に基づきまして、各議院の判断といいますか、判断によって決められることでございますから、私としては国会の方でお決めいただきたいということしか言えませんが、先ほど申し上げましたように、是非これは与野党を通じた議論の場、深める議論の場というものを設置するということは大事なことじゃないかなと、こう考えております。
○鈴木寛
是非、これは今日お集まりのすべての委員の皆様方に私どもから御提案を申し上げたいと思いますので、是非委員長もよろしくお取り計らいのほどお願いを申し上げたいと思います。
それで、与党の皆様方も教育基本法改正に関する協議会というものをお作りになって「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について」という中間報告を六月にお出しになっているようでございます。中教審の御報告も私ども精査をさせていただきました。
で、その基本法の議論の前提として、今日の我が国の教育現場が抱える基本的な問題点というものについてどうもやっぱり検証、検討が甘いのではないかというか、もう少し重要なポイントが、率直に申し上げて重要なポイントが抜け落ちている部分が幾つかあるんではないかということを私は指摘させていただきたいと思います。
今日、それぞれについて御議論させていただこうと思いましたが、ざっと我々民主党教育基本問題調査会の方で認識をしていることだけ申し上げますが、例えば教育の基本問題に関しまして、私は教育財政の問題というのは極めて重要な問題だというふうに思っております。
ちなみに、一九九七年にお隣の韓国で教育基本法というものが制定をされました。韓国の教育基本法では第七条で教育財政という問題がきちっと明記をされておりますし、それから、中国の教育基本法では公財政支出教育費が国民総生産に占める比率をきちっとその教育基本法の中で明記しているんですね。そして、その教育財政の要するに教育支出の伸びが財政の経常収入の伸びを上回るようにしなきゃいけないというところまで中国の教育基本法は書いてあるんです。ですから、教育財政の議論というのは教育の基本問題の基本中の基本だということを私たちは重大な課題として認識をしております。
それで、これはもう文部省が発表になっておられる数字ですが、日本は、例えば初中等教育を見ても高等教育を見ても、公教育支出の公財政支出、対GDP比、先進国中最低ですね。この事態はずっと変わっていない。この点について教育の基本問題として議論がなされてないというのは、私は不十分な議論だというふうに思っております。
それから、例えば、先ほど大臣から、大臣の考える教育論、非常に御卓見を伺ったというふうに思いました。しかし、正にいわゆる期待される人間像問題でありますが、今、西岡先生もいらっしゃいますが、これ、昭和三十八年のころからもう十年に一回起こっている。六十二年の臨教審答申でもそうでありますし、それから教育改革国民会議でも正にこの人間像の議論というのは行われたと。
そして一方で、大臣、先ほどのお話はそれはそれで非常に結構なんですが、一方、国際的な動き、特に国連、特にユネスコでは世界全体の教育の在り方というものについていろいろな提言がなされております。例えば、一九八五年のユネスコの第四回の国際成人教育会議宣言では学習権宣言というのがなされまして、子供の学習権というものを、市民の学習権というものをきちっと明記すべきだということがこのユネスコの宣言でなされております。学習権は人が生き延びるために不可欠なものであるという位置付けがなされていまして、これが経済的な生活、そして平和創造のすべての基本だということを宣言をいたしております。
さらに、一九九六年には、ユネスコ二十一世紀教育国際委員会が学習の四つの柱、先ほど中山三原則が示されましたけれども、ユネスコは、知ることを学ぶ、なすことを学ぶ、ともに生きることを学ぶ、人間として生きることを学ぶというようなことも議論が行われています。
それから、これは九六年でありますが、二〇〇五年、来年からは、ユネスコは持続可能な開発のための教育の十年、ディケードがスタートをするということになっていますし、二〇〇五年はスポーツと体育の国際年でありますし、国際物理年でもあります、ちなみに。こうした国際的な議論の積み上げがあるわけであります。そうしたことにやはりきちっと日本のこの基本問題を議論する我々は十分認識をしなきゃいけない、あるいは勉強しなきゃいけないというふうに思います。
例えば、日本国内でも、来年、愛・地球博、愛知県で万博が行われます。そこで、例えばこのユネスコの持続可能な開発のための教育の十年と連動いたしまして、グローバル・スポーツ・アライアンスというNPOが、日本国際博覧会協会とかUNEPとかと一緒にそうしたフォーラムを持たれる、サミットを、スポーツサミットを行われるといったように、いろいろ国内でも様々なNPO団体、教育関係者が議論しています。それから、子どもの権利条約についてもそうしたNPOが大変な活動と実績を上げておられます。
やはりこうしたことをきちっと教育の基本問題をする前提として我々は勉強をし、そしてその中で取り入れるもの、あるいは日本の基本的、例えば学習権の問題などは私は教育の基本的な法律の中でやっぱり明記すべきだと思う。さらには、憲法の中で、憲法改正の中で学習権というのを明記すべきだというふうに思います。そういった問題。
それから、例えば先ほども有村委員から出ておりましたけれども、私たちはもちろん、自然な形で子供たちが健全に、自分たちが育った、あるいは自分たちを育ててくれた、はぐくんでくれた郷土やふるさと、場合によれば母校なんというのもその中に入ると思いますが、そういうものを愛して、その延長線で日本社会という共同体を愛するようになってほしいと私は思っています。
もちろんそのこと、とっても重要でありますし、そのことの議論の深めも大事だというふうに思っておりますが、今、私も東京を中心とする多くのお母さん方とお話をしていて一番心配しているのは、学校をとにかく安全な場所にしてくださいですよ、一番最初にお母さん、お父さんから出てくる第一声は。正に外部の侵入者からの安全、それから、先ほどもお話がありましたけれども、児童同士が正に友達をあやめてしまうという悲惨な、こうした学校をとにかく一刻も早く安全な場所にしてほしいと。子供の身体と生命の安全の問題というのは喫緊の課題です。このことについて教育の基本問題の中で扱わずしてどこで扱うんでしょうか。
それから、せっかく今、特別支援教育、これは大臣のあいさつでも触れられました。このことは、これも評価したいと思います。しかし、いろいろな議論の積み重ねがあって、今までの特殊教育から特別支援教育だと。これ、概念もきちっと整理し直して、特にLDとかADHDとか高機能自閉症と、これが現状として全児童の六%いると。そのことが、いるという前提で学級運営とか、そうしたそれぞれの子供に対して、そのLDとかADHDというのは別にカテゴライズできませんから、その子供子供のそれぞれの状態に応じて個別の学習支援計画を作らなきゃいけないという事態が分かってきた。それに対して取り組まなきゃいけない。これも私は教育基本問題上極めて重要な課題だというふうに思いますし、お隣の韓国ではきちっと教育基本法の中でこの特殊教育という条項を設けて認識をしています。
ほかにもいろいろ申し上げたい話がありますが、例えば就学前教育の問題、これは幼保一元化で厚生省と文部科学省の間に始まった、もう二十年来の課題であります。これを解決するのは、正に政治主導で、そして教育基本法という極めて教育の根本、あるいは人づくりの根本を議論する際に、政治主導で、国会主導でやらなかったら、この長年の文部省、厚生労働省の、もう大臣よく御存じだと思いますが、問題は解決されません。中教審でやっている限り、この幼保一元化を、さらに就学前児童の、私たちは無償化ということまで踏まえて検討すべきだと思いますが、これも解決できない。
それから、例えば建学の自由の問題。憲法八十九条が非常に訳の分からない形で、分かりにくい形で存在している。韓国は、きちっと私学の育成ということを教育基本法二十五条に設けて、そして私学の学校設立についても、法人と私人はきちっと学校を設立、経営できると建学の自由を明記しているんです。もちろん財源の限界というのはありますが、私学助成法の話と私立学校法の話とは、これはきちっと分けて議論をしなければいけないという長年の課題に決着を付けるのも、この際、政治主導で、国会主導で教育の基本問題について議論をするというチャンスなんです。このことも行われていない。
それから、私がもう何度も申し上げておりますが、この国会で、大学教育について、大学という、あるいは高等教育という文言は今回の与党の御議論の中では出てきません。しかし、今日の教育基本問題の中で大学教育、高等教育を抜きに議論することはできない。この点も欠けている論点だということを我々は指摘させていただきます。
それで、これは参議院の附帯決議も過去にございましたが、日本は、国際人権規約十三条の二の(c)、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」と、この条項、批准していません。留保しています。留保している国は、百四十六か国中、日本、ルワンダ、マダガスカルです。この問題についてどうするのかと。もう何十年も前に国会で附帯決議がありながら、この問題を放置しています。これも決着するのは今しかありません。
というように、極めて教育の問題、大変な課題、しかもここで解決しなければ解決できない長年の懸案があるにもかかわらず、与党案、中教審案は不十分だということを民主党としては申し上げておきたいというふうに思います。その意味でも、先ほど申し上げました、是非この国会に、教育の基本問題について、今のような議論を参考人も来ていただいて、そして委員間の自由討議も含めてできる場を作っていただきたいというのが我々のお願いだということを大臣に申し上げておきたいと思います。
それで、時間がありませんので、次の質問に移りたいと思いますが、国立大学法人化の問題です。
これは、参議院の附帯決議を受けまして、先週、文部科学省から参議院に対して報告がございました。正直申し上げまして、極めて不十分な御報告だということを申し上げざるを得ないと思います。
それで、二点についてまとめてお伺いをいたしたいと思いますが、昨日、そして本日も、この国会内で国立大学の教員の方々がポスターセッションをやっておられて、大学の現場が大変な財政的な危機にあるという惨状を訴えられていらっしゃいます。
それぞれについて時間がありませんから御紹介申し上げませんが、附帯決議では、国立大学の法人化と独法化は違うんだと。すなわち、独法化はスリム化ということが目的に入っていましたが、国立大学法人はスリム化ということは入っていません。いわゆる大学の自主的な経営というものを、自律性、自主性を確保するためのガバナンスの変更だと。このためだけに国立大学をやるということで、当然予算もカットしないと。十分な予算、これから教育・文化立国で、科学技術創造立国で極めて重要な拠点が大学であるということを我々ここで確認をしたはずであります。しかしながら、現場から聞こえてくる声はそれと違う声がある。これに対してきちっと報告で答えていただくべきだというふうに思います。
それから二つ目。我々が懸念したことでありますが、大学のガバナンス、アドミニストレーションの中核を担う人事の問題。
我々が心配したことがやはり的中をしていると思わざるを得ない報告が現場からいろいろ聞こえてきます。この件についてはこれからも、特に一年間終わったところできちっと精査をするということを申し上げておきますが、一言だけ申し上げますと、例えば四月一日に五百十四人、それからこの十月一日に三十七人の国立大学法人の課長級以上の人事異動が事実上文部省の人事で行われているんです。
これは、大変に立ち上がりの極めて重要な時期に課長さんとか部長さんとか事務局長さんとかが突然いなくなっちゃうわけですね。中には、中にはというか、多くは非常に頼りにされていて、正に新しい大学を作るその中心的な役割を担っている課長さんであり部長さんであり、そして例えば産学連携の話なんかでも、企業に行って何度も何度も、その御本人は本当に努力をされて、企業との関係も十分にできて信頼関係も出して、そしてこれから産学連携で頑張るぞと。それが突然一週間前になって、いや私このたび人事異動でいなくなることになりましたと。一緒にやっていた大学の教員もびっくり、それから産学連携の相手先である企業もびっくりと。
正に国立大学法人化の意味は何かというと、これは大臣も役所にいらっしゃったからお分かりだと思いますが、役所の人事異動のルールはそうなんですね、これは特別権力関係ですから。しかし、もう国立大学法人はそういう意味では役所じゃないんです。正に地域の方、正に現場の教員、正に現場の学生、そして正にその連携先の企業あるいは団体、組織、そうした市民社会の一員としてより良い知の学府を作っていくと、こういうことでありますから、是非この点は、この人事制度、予算制度、大いにまだまだ直す点があります。
それから、法人化に伴って一番聞こえてくる声は、ペーパーワークが物すごく多くなったということですよ。大学の教員には本来業務である研究と教育に専念をさせてあげるというのがこの国立大学法人化の意味だったんですよ。それに全く逆行している。これもさっきのアドミニストレーションスタッフの問題とかかわります。アドミニストレーションスタッフが突然いなくなる、そんな人にはペーパーワーク任せられません。しかし、この人がきちっとそうしたアドミニストレーションのペーパーワークを始めとするそういうふうな事務的なマネジメント的な仕事を担えるということになれば、教員も専念できるというふうな、いろんな課題に対して大いなる疑念ございますので、この国立大学法人の問題、我々引き続き見ていきますが、国立大学法人について、予算、人事、事務体制の問題について一言、更に改善の余地があると思いますが、お答えをいただきたいと思います。
○大臣政務官(下村博文君)
私の方から予算についてお答えを申し上げたいと思います。
委員御指摘のように、国会の附帯決議がございまして、これに十分に留意して、平成十六年度の運営費交付金予算全体では実際のところ前年度、平成十五年度と実質的に同程度の額を措置したところでございます。また、平成十七年度以降についても、六年間の中期目標、中期計画期間を通じて着実な研究開発が行われるように運営費交付金を措置することが必要であるというふうに文部科学省においても考えておりまして、十七年度予算については、国立大学法人全体として対前年度比二百五十億円増の一兆二千六百六十六億円の概算要求をしているところでございます。
ただ、御指摘のように、この国立大学の法人化に伴いまして、各大学の自主性また自律性、これを尊重し、拡大し、その中で予算についての各大学の効率化を図って、大学の活性化、更なる活性化、そして教育研究の高度化を図るということから御指摘があったのではないかというふうに思いますけれども、文部科学省としては、今後とも総額の予算を増額をさせて、この運営費交付金など必要なことについては更なる所要額の確保に努めてまいりたいと思います。
○政府参考人(玉井日出夫君)
国立大学法人の人事についてでございますが、これはもう御案内のとおり、国立大学法人の職員の任命権は幹部職員も含めましてすべて当大大学の学長にあるわけでございます。したがって、職員の人事につきましては、任命権者である学長が各大学の人事戦略に基づいて適材適所の観点から行うと、これが基本でございまして、文部科学省といたしましても、国立大学法人からの人事交流について要請があった場合に、適材適所の観点から各国立大学法人の意向を基本に必要な対応を図っていく、こういう姿勢で臨んでいるわけでございまして、今年の四月の人事でございますけれども、これはまだ法人化前ではございましたけれども、やはり法人化になるということを前提に各大学において法人化に伴う組織の見直し等も行われているわけでございますので、したがって、法人化前ではございましたけれども、例年より早く昨年の十月ごろからいろんな協議に着手をいたしました。
また、今年の十月、既に今、国立大学法人とされているわけでございますが、そのときに、適材適所の観点からの人事交流の必要性があった場合、そのときには、大学運営に支障が出ないように早めに協議を進めるということで基本的には考えてまいりました。
個々具体のいろんな御指摘あろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、国立大学法人等の人事交流につきましては、これは各国立大学法人の意向を基本として、時間的に余裕を持った上できちんとした協議を進めるよう、そういうふうに努力をしてまいりたいと、かように考えております。
○政府参考人(石川明君)
ただいま先生の方からペーパーワークが多くなっているのではないかというお話ございました。
国立大学の法人化に伴いまして、例えば労基法が適用になるなど労務関係で新しい手続が必要になる、あるいは評価に関する事務が増える、こういったような面もございます。
しかし、その一方で、国の財務会計制度や公務員制度の制約から外れるということに伴いまして事務負担が大幅に軽減されているというような側面もあるわけでございます。例えば、文部科学省への人事等の諸手続が廃止される、あるいは国の会計規程に基づく諸手続等の廃止、あるいはその関連する提出書類の負担が大幅に減ると、こういった面もあります。そしてまた、大学によりましては、旅費業務を旅行代理店にアウトソーシングをするといったようなことを考え、また実施しているところもあるということでございます。
文部科学省といたしましては、引き続き各大学等から教育研究等の実情等もお伺いしながら、できるだけ各大学の事務負担が重くならないよう、これの軽減に向けまして御相談、協議をしていきたいと思いますし、教員の方々が魅力ある研究活動に思い切って取り組めるような、そういった体制の確立に向けて努力をしてまいりたいと、このように考えております。
○鈴木寛
終わります。
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