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 文教科学委員会  著作権法改正について

2004年04月20日 


○鈴木 寛

 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。
 午前中の中島委員に引き続きまして、著作権法改正についての質疑をさせていただきたいと思います。
 まず、今回は正にレコード、商業用レコードの還流防止措置、これが極めて世の中で大変に議論が沸騰をしております。まず、その点から御質問させていただきたいわけでありますが、今回、還流防止措置、万やむを得ない措置として著作権法の中に、改正案の中に盛り込まれたわけでございます。この還流防止措置を盛り込まざるを得なかった立法事実について幾つか確認をさせていただきたいと思いますが、まず、特にアジア地域における日本のCDの海賊版がかなり出回っている。それに対して、対抗上そのアジア地域向けに特別のCDを出さなければいかぬ、そのことを制度的に担保ならしめるために今回の還流防止措置が必要だと、こういう御説明でございますが、この海賊版被害の実態について少し御紹介をいただければと思います。

○副大臣(稲葉大和君)
 お答え申し上げます。
 先生御指摘の海賊版の実態についてでありますが、正確な数字を把握するのは極めて困難なんでありますけれども、レコード、CDにつきましては、国際レコード産業連盟の調べによりますと、二〇〇二年、中国のレコード、CD等の音楽市場の約九一%、そして台湾におきましては市場の約四八%が海賊版であると報告をされております。
 具体的な事例としましては、中国においては日本人歌手のベストアルバムの海賊版のCDが二百円前後という非常に廉価な金額で販売されており、DVDは一枚が七十五円から三百七十五円、これも日本においては販売価格五千円前後なものでありますけれども、非常にこれまた金額に足りないような廉価で販売されているのが現状であります。
 我が国の著作物に係る海賊版対策にありましては、中国、台湾等の二国間の協議によって、相手国の政府に対しまして取締りの強化を強く求めていくことが重要であり、また現実に求めているところでありますが、平成十二年に第一回の官民合同訪中ミッションにおきまして、中国に対しましては海賊版の取締り強化を強く訴えてきたところであります。
 また、十五年三月には文化庁と中国の国家版権局との間で第一回著作権協議が行われまして、そこにおきましては、海賊版対策あるいは著作権の集中管理の交流、またインターネットへの対応等について意見交換を行ってまいりました。また、来月、五月には第二回目の官民の合同訪中ミッションを派遣し、その際、文化庁と中国の版権局との間での第二回の著作権協議を北京で行う予定にしております。
 このほか、韓国に対しましても、また台湾に対しましても、貿易経済会議やいろいろな会議の場を通じて著作権の問題について話合いを行うところであります。
 今後とも、様々な機会を利用しまして著作権制度の整備あるいは海賊版対策の強化、これを求めてまいるところでございます。

○鈴木 寛
君 この問題は、私も実は二年ほど前に朱鎔基首相に直接お会いをさせていただいた機会がございまして、中国における海賊版を何とかきちっと取り締まってほしいと、WTOの一員になるわけでもありますから、そういうことをお願いを申し上げましたが、是非、大臣、副大臣、中国側に精力的にこの問題は引き続き説得をしていただきたいというふうに思います。
 それで、こういう海賊版被害の実態で、我が国のいわゆる著作権者あるいは著作隣接権者がどういう被害を受けているかということについて、何か御紹介をしていただける実態がございましたら御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(素川富司君)
 海賊版による具体的な被害の実態という、金額的な特に統計というのは把握しておりません。
 今、副大臣から御説明申し上げましたように、九一%、これは全世界の著作物でございますけれども、やはり平均すれば日本の著作物も同じ、同程度で侵害されているのかなというような感じでございますので、金額的には統計はございませんけれども、非常に大きな侵害被害になっているということは想像に難くないところでございます。

○鈴木 寛
 そこで、九一%という大変な海賊版被害の実態があって、それに対して何とか日本の著作権者あるいは著作隣接権者を守るために今回の還流防止措置が必要であると。この理屈は恐らく多くの日本国民の皆様方、御理解をいただけると思います。
 そうした方々の著作活動、創作活動が立ち行かなくなれば、結果としてそうした方々によって作られるいい作品というものが世の中になくなるわけでありますから、結果として、そのリスナーといいますかユーザー、消費者もそうした音楽、文化を楽しむことができなくなると。正に著作権者と隣接権者、そして聴く側と、これ共存共栄の関係である、ここについては恐らく国民的な合意というのはあるんだと思いますが、今回、今回の還流防止措置を導入するに当たっての著作権法改正がここまで社会問題になっている理由というのは、正に今回の百十三条の条文の作り方あるいは書き方、そこに起因しているんだろうというふうに思います。
 すなわち、日本の著作権者を助けるために、ある程度いわゆる消費者と著作権者の利益のバランスといいますか、権利のバランスを図らなきゃいけないというロジックは分かるけれども、この条文ができたことによって、海外、特に欧米の著作権者あるいは著作隣接権者を利することになる可能性が否定し得ない、条文上からは、否定し得ない条文を日本のいわゆるユーザーが、まあもちろんいろんな法制定過程の誤解もあろうかと思いますけれども、そこに懸念を示す意見が沸騰していると、こういうことではないかというふうに思います。
 そこで、先ほども中島委員のお話にございましたが、今回、正に内国民待遇という国際社会の一員として日本が守らなければいけない国際取引ルールに従って、今回のような百十三条のような、日本の著作権者のみならず、欧米の著作権者の利益を利する、あるいは権利を付与するという形の条文にせざるを得なかったと、その理由について再度御説明をいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(素川富司君)
 お答え申し上げます。
 著作権に係る国際条約、典型的なものといたしましてはベルヌ条約とWTO協定の知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、通称TRIPs協定と呼んでおりますけれども、例えばベルヌ条約におきましても、第五条で、保護の原則ということで内国民待遇を与えなければいけないという、外国の条約の、保護される著作物に関する本国以外の同盟国において、その国の法令が自国民に現在与えており将来与えることがある権利及びこの条約が特に与える権利を享有するということで、内国民待遇を与えなければいけないと。同様の規定が先ほど申しましたTRIPs協定にも書かれているところでございます。
 そのようなことから、日本の権利者の音楽レコードについてのみ今回の還流防止措置の対象とするということはできないということで、制度上はいわゆる洋盤レコードというものも、対象からは、制度上は、法制度上はできないというような整理になっているところでございます。

○鈴木 寛
 今の御説明でやむを得ない措置であるということは理解はできるわけでありますが、それではこの法律を作るその前提となる立法事実として、いわゆるファイブメジャーがこの法律の改正を奇貨として、いわゆるこの百十三条を適用して輸入盤CDの輸入を止める、差止めを求めるということはしないということを天下にあるいはこの国会においても表明をしているわけでありまして、我々の懸念はかなり払拭されつつあるわけでありますが、今日はいわゆるこの法律の実務手続に従いまして、この百十三条の改正によってもいわゆる欧米からの輸入CDが止まらないんだと、消費者の方々が心配している事態が起こらないんだということを法律の実務の観点から少しずつ確認をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、いわゆる日本販売禁止と表示をされたレコードが、いわゆる還流防止ですから、一番最初は水際、要するに税関のところでまずこの法律の施行手続ということが出てくるんだろうというふうに思います。すなわち、税関において、このいわゆる著作権法を始めとして知的財産法に侵害をしている可能性があるものというのは、これ税関で、税関が止めることができるわけであります。
 その税関がきちっと、中国、アジアからの日本販売禁止と書かれたCDだけを止めて、欧米から入ってくるいわゆる輸入盤のCD、そこには日本販売禁止とは明示されていないもの、これが何ら税関でチェックされることなくスムーズに日本に入ってくるという実務がきちっと担保されるということがまず極めて重要なんだというふうに思いますが、この点についてはそういうことでいいんだろうと思うんですけれども、今のことがきちっと担保されるための工夫、どういう工夫をされるおつもりでしょうか、文化庁にお伺いしたいと思います。

○政府参考人(素川富司君)
 先ほどお答えいたしましたように、法制度上の一種の与えられた条件の中で消費者の利益を確保する観点、特に今、欧米からの輸入レコード、これへの対応につきまして十分配慮するということを踏まえた制度設計をしているわけでございますが、大きくは二つその要件を付しているわけでございますが、一つは、権利者の得ることが見込まれる利益が外国のレコードが国内に入ってくることによって不当に害されることとなる場合に限定するということ、それから、国内での販売を禁止されている音楽レコードであることを輸入の段階で知っていたことを、これは条文上は「情を知つて、」というふうに書いたわけでございますけれども、そのような表示がある音楽レコードに事実上限定しているということでございます。
 今、先生の御指摘のように、アジア等に対して日本のレコード会社がライセンス生産をさせているものにつきましては、これまでも日本国内での販売を禁止ということを表示を契約上義務付けていたわけでございますけれども、これからもそのようなことは日本のレコード会社は続けるということを表明しておりますので、まずそのアジア等からのいわゆる還流レコードにはその表示があると。といいますと、その一つの基準が、要件が満たされるということでございまして、これに加えまして、不当に侵害される、権利者の利益が不当に侵害されるということは、具体的に申しますと、ライセンス料、得るライセンス料を勘案するということでございますけれども、現在のアジアとの価格差、それから、得られるそのライセンス料というものを勘案しますと、このような要件に該当するというようなことにもなろうかと思いますが。
 他方、アメリカにつきましては、基本的にはアメリカで生産されているレコード、そして販売されているレコードというものは、ある意味ではアメリカの権利者が予定していた、国内で得られるということを予定していた利益を輸入盤によってもう実は確保されているというところもあるわけでございまして、そういうようなこともありまして、五大メジャーの方では、あえてこの措置ができましても日本発売禁止という表示はするつもりはないということを言われているわけでございますけれども、そういうことになれば、基本的には水際といいますか、税関の方で止まるということはまずはあり得ないというふうに考えているところでございます。

○鈴木 寛
 確認させていただきたいんですが、百十三条で言う「情を知つて、」というのは、今の御答弁は、要するに日本販売禁止という表示があるにもかかわらず、そのCDそのものにですね、にもかかわらず入れてきた場合、輸入をしてきた場合は、これは情を知ってだと。日本販売禁止という表示がない場合には情を知ってに当たらないということを今、立法過程で、この法律の解釈、運用について、裁判所ないし刑事当局がいろいろな判断をしていく上での法律上のメルクマールを判断する前提の議論をしているわけでありますが、そういう理解でよろしゅうございますか。

○政府参考人(素川富司君)
 少し「情を知つて、」という表現につきまして御説明させていただきたいと思います。
 先生御指摘のように、新しく改正しようと、させていただこうと思っております百十三条の五項には、日本における販売を禁止するという旨の表示があるということを明文の要件としては書いていないところでございます。
 しかしながら、この第五項には、専ら国外において頒布する目的で発行されている商業レコード、これは逆の言い方をすれば、国内における頒布を禁止して発行されている音楽レコードということになるわけでございますけれども、これが適用される、この条項が適用される、そして侵害とみなされるためには、このことを情を知って輸入する行為というふうに条文上は整理しているところでございます。
 輸入者が情を知って輸入を行ったということについて、立証責任はだれが負うかというと、一般的にはその権利者が負うことになるわけでございます。その場合、その輸入者が、輸入する者が情を知っていたという、ある意味では主観的な要件を立証するというためには、やはりレコードに輸入する者がすぐ分かるような形での販売禁止という旨の表示をしておく必要があるわけでございます。
 したがいまして、日本における販売を禁止している旨の表示というのは条文中には明示、明文化されておりませんけれども、実質的にはこれが要件となっているというふうに解しているところでございます。

○鈴木 寛
 実質的には日本販売禁止と書いてあることがその構成要件の重要な部分であるという御答弁をいただきました。
 是非そのことは税関当局にもきちっとお伝えをいただき、御説明をいただいて、いわゆる水際における混乱というものがないようにお努めをいただきたいと思います。
 それから加えまして、私からの御提案でもあるんですが、いわゆる税関の通関手続上、いわゆる輸入禁制品が入ってこないようにするために輸入差止め申立て制度というのがありますですね。これを活用することによって、もういわゆる、この提出したリストだけを止めてくれと、逆に言うと、そのリストに載っていないものは原則自由だよと、こういうふうにこの輸入差止め申立て制度というのは使えるんではないかなというふうに考えております。
 もちろん、これは基本的には申立てする者がやるかやらないかと、こういうことでございますので、国会であるいは文化庁がこれをやれということを言うわけにはまいりませんが、仮に、CD、日本での著作権者あるいは日本の著作隣接権者がこの輸入差止め申立て制度を利用していて、要するにこのリストにあるものだけちゃんと止めてくださいと、このリストにない輸入CDはもうどんどん結構ですよという運用をした場合には、恐らく税関における混乱はほとんどないようになるんではないかなというふうに思うんですが、私の理解、あるいはこうしたことについてレコメンデーションをし、かついろんな、レコメンデーションをする相手はいろいろなところだと思いますが、ここでこの議論をすることがいろんな関係者に対する発信にもなろうかと思いますので、私の今の説明といいますか、理解にそごが、間違いがないかどうかについてお答えをいただきたいと思います。

○政府参考人(素川富司君)
 お答え申し上げます。
 税関における対応、いわゆる輸入禁制品の認定手続についてのお話でございますが、やはりこの著作権法上の還流防止措置を運用してまいるためには、文化庁ほか税関当局等との連携とか協力というものが非常に重要になってくるわけでございますし、また著作権者が、これは私の権利、私権としてあるわけでございますので、どのように自分たちの権利を守るかということについてその考え方というのを整理しておくという必要があろうかと思います。
 そのようなことを前提にいたしまして、先生今お話しのような税関における権利者による輸入差止め申立て制度の活用ということは、今お伺いいたしまして、これを活用するということは確かに非常に有効な方法ではないかというふうなことを思ったわけでございます。私の、文化庁、文部科学省の方で方針を定めるというよりも、このようなことが権利者の中で情報として共有され活用されていくということになれば、スムーズな運用が図れるものではないかというふうに思った次第でございます。

○鈴木 寛
 あわせて、今、輸入差止め申立て制度のことを著作権者ないしそのグループがその制度を確立し、そして前の御答弁であったように、文化庁からこの百十三条についての、改正案についてのきちっとした解釈を税関にお伝えをいただき、御説明いただくと。この二つをもって輸入CDが水際で止まるという蓋然性は極めて低いなということが今の答弁で明らかになったわけですが。
 一方、百十三条は「情を知つて、」ということとともに、利益が不当に害されるという二つのメルクマールがあるわけでありますから、例えば観光客が中国に行って、そして確かに日本販売禁止ということが書いてあっても、例えば特定少数にお土産としてあるいは中国に行った記念として買ってくる場合、これは特定少数であります。
 したがって、何が申し上げたいかというと、利益が不当に害されない場合には百十三条違反ではないわけでありまして、そのことも併せて、あくまで百十三条は二つの要件を満たす必要があって、そしてその挙証責任は、いわゆるこの権利を行使する側の人が持つんだという、その点について確認を願いたいと思います。

○政府参考人(素川富司君)
 先ほど申し上げましたように、この還流防止措置に係る挙証責任は権利者が持つということでございます。
 それから、今先生お話になられました言わば個人輸入の扱いでございますけれども、これは国内において頒布する目的をもって行われるということがこの還流防止措置の一つの要件になっているわけでございまして、頒布するといいますのは、有償、無償問わず、公衆に譲渡又は貸与するということでございまして、この公衆ということは、今先生お話しになりましたような不特定若しくは特定多数と、こうされておりますので、逆に言いますと、頒布目的でないというためには、特定少数、すなわち自分が楽しむとか極めて身近な友人に上げるというような極めて限られた範囲内での輸入といいますか、そういうことになるわけでございますけれども、この場合には国内において頒布する目的をもって行われるということには該当しないということで、従来どおり自由に行うことができるというものでございます。

○鈴木 寛
 それでは、水際のところは無事輸入CDが持ち込まれましたと。次に、店頭において、まあ今でもそうでありますけれども、輸入盤CDと国内プレス盤CDが、値段が違って今二つ売られているわけでございます。消費者の懸念は、店頭から、まあ水際は越えたと、税関は無事入ってきたけれども、店頭から排除されてしまうんではないかと。
 正に、この百十三条の改正条項を根拠に、いわゆる海外の著作権者あるいはその隣接権者が、あるいはその日本における代理人がこの権利を行使して店頭における正に販売を差し止めるといいますか、ということについての懸念があるわけでありますけれども、その解釈はいろいろあり得まして、もう既に一回水際を通った瞬間にそれは、といいますか、輸入盤CDというのは、日本を含む世界じゅうに頒布することを目的とした商業用レコードでありますから、そもそも国内において頒布することを目的とする商業用レコードではないので、そもそも百十三条が対象としているCDではないという理解が成り立つような気がいたすわけでありますが、その私の解釈でよろしいでしょうか。

○政府参考人(素川富司君)
 この還流、レコードの還流の防止措置につきましては、まず輸入する時点におきまして、百十三条の五項に書いております各要件というものを具備した場合に侵害とみなされるということになるわけでございます。
 そのようなことで、輸入する時点においてその一定要件をもう具備していなかった、すなわち、還流行為を侵害とみなす行為というふうにならなかったというものが、国内に入って頒布する段階になってそれを具備するようになるというようなことは、要件としては考えていないということではございます。ただし、本来ならば、侵害とみなされる要件を具備しているにもかかわらず、水際の段階で見過ごされてといいますか見過ごして入ってしまったというような場合には、これはむしろこの還流防止措置を実効あらしめる観点から、輸入だけでなく、頒布又は頒布目的の所持というものも併せて侵害とみなされる行為に入っているというようなことでございますので、そこは輸入段階において一定要件を具備していたか、いなかったかということが基本的なメルクマールになろうかと存じております。

○鈴木 寛
 そうすると、堂々と、すり抜けずに堂々と水際を越えてきたものについては、それ以降はもう安心だということの御答弁をいただきました。ありがとうございました。
 そうしますと、先ほど申し上げました輸入差止め申立て制度と、それから今、文化庁がかなり細かく解釈について御答弁をいただきました。そのことを税関あるいは法務省の刑事局あるいは警察のそれぞれの現場にまず是非徹底をしていただく、このことによって、日本の多くの消費者の皆様方が大変御心配をされている輸入盤のCDが水際で止まるということもないし、そして水際で入ってきた後に店頭から排除されるということもないということが相当程度の可能性で確保されるということが確認をできたかなというふうに思いますが、是非、今日のこうした議論、これ大変に日本の消費者は注目をしている問題でもございますので、関係省庁、関係各機関に十二分に御通知と御説明をお願いをして、混乱のないようにお願いを申し上げたいと思いますが、その点いかがでございましょうか。

○政府参考人(素川富司君)
 御指摘のように、この還流防止措置に関しましては、税関、法務、警察当局が関係してまいります。十分な連携を取ることが大事、大切であると考えております。
 この還流防止措置の内容というものにつきましては、関係機関には十分説明する、趣旨、内容を説明するということが重要であると考えておりますし、またそれぞれの行政分野についての実務上の取扱いに関しては協議を十分に行ってまいるということが必要かと考えているところでございます。

○鈴木 寛
 それでは次に、公正取引委員会来ていただいているかと思いますが、お尋ねをしたいと思います。
 輸入のCDは店頭から排除される危険性はかなりないんだということが分かりました。
 次に、輸入CDを置いているお店に対して、輸入CDを置くんだったら国内盤プレスを回しませんよと、卸しませんよというようなことで、間接的に輸入CDを止めるという行為が仮に行われた場合に、これは著作権法の話ではなくて独禁法の話になろうかと思いますが、独禁法上、そうした行為は独禁法に抵触の可能性が私はあると思いますが、その可能性、一般論で、もちろんすべての場合はケース・バイ・ケースでありましょうが、一般的な法律の解釈として、どういうことが独禁法上抵触するおそれがあるか、御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(山木康孝君)
 御質問の件でございますけれども、一般的に申し上げまして、レコード会社などがレコード販売店に対しまして正規の輸入品を扱っていることをもって不利益を与えるというような行為をいたしますと、独占禁止法上の問題が生ずるおそれがあるというのが一般的な考えでございます。
 具体的には、間接の取引拒絶でありますとか拘束条件付取引とか、場合によっては取引妨害といった、独占禁止法の第十九条に不公正な取引方法というものが禁止されておりますけれども、そういう観点から問題になる余地があるのではないかというのが一般的な考えでございます。

○鈴木 寛
 今のような独禁法違反の懸念をも冒して輸入盤CDを店頭から排除するという行為が常識的にはなされるとは思えないわけでありますが、引き続き独禁当局に、公正取引委員会におかれましては、そうしたCDの適正な流通、販売というものが行われるということについて是非監視、監督をお願いをしたい。そして、日本の消費者の利益のために頑張っていただきたいというふうに思います。
 それでは次に、午前中の質疑にもございましたけれども、再販制度というのがあって、いわゆる還流防止措置というのがある、それはなかなか過剰じゃないかと。ここは午前中の審議でありましたので御答弁は結構でありますが、そもそもこの前提となります再販制度、これについて、公正取引委員会そして文部科学省、双方から、この問題どうするんだということについて、再販制度というのが、もちろん一定の意義があってこうした制度が行われておることは私も承知をいたしております。しかし、これはあくまで、いろいろなその時々の利益のあるいは権利の比較考量を毎年、毎日のようにチェックしながら、きちっとしたバランスになっているのか、あるいは世の中全体の利益にプラスになっているのか、これを不断に検証し、確認をしていくという作業が私は必要なんだと。今までそうだったから今後もそうするという粗っぽい議論ではいかないんだと思います。
 そういう観点から、この著作権絡みの、本日のレコード、CD絡みの再販制度についての公正取引委員会、文部科学省、それぞれの御認識、御見解を承りたいと思います。

○副大臣(稲葉大和君)
 先生御指摘の再販制度につきましては、音楽テープやCD並びにレコードについて、独占禁止法上禁止されている再販売価格維持行為の適用除外となる著作物として位置付けられております。
 これらは、商品としての経済的な価値のみならず、我が国の文化を結集した、凝縮した文化的価値を持っているものでありますので、文化の振興、さらに普及に対しまして大きな役割を果たしてきているところであります。
 したがって、全国どこにおりましても同一の価格でこれらの著作物を入手することができるとした、これを目的としております再販売価格維持制度につきましては、文化政策上、極めて大きな意義を持っているものと思っております。この制度を撤廃した場合には、レコード店の品ぞろえにつきましてはよく売れるものに集中してしまう、こういう傾向になります。そして、その結果、メーカーは売れ筋のもののみをプリントする、発行する、こういうことになるわけでありまして、行き着くところ、地方のレコード店の廃業にもつながってくることになりますし、都市部と地方とでの入手可能な商品について大きな格差を生じるおそれが大変大なるものがあります。
 したがって、音楽テープやCD並びにレコードを含む著作物に係る再販価格維持制度を、これを堅持していくことは我が国の文化にとっても極めて重大な事柄だと、こう思っております。

○政府参考人(山木康孝君)
 再販売価格維持制度につきましては、御案内のように、独占禁止法の適用を除外するという形で昭和二十八年に入った制度でございます。この制度の在り方については、著作物、特に著作物につきましては平成の七年ごろから様々な角度から検討をさしていただいたわけでございますけれども、今、副大臣のおっしゃったような面もございますので、廃止につきましては国民的な合意がまだ形成されてないというような状況でございましたので、競争政策の立場からは廃止することが適当ということではございますけれども、他の要素もございますので、現段階では制度を存置するというのが平成十三年の結論であったわけでございます。
 ただ、午前の質疑でも問題になりましたけれども、今の制度におきましても弾力的な運用ということは十分可能でございますので、業界の関係の方にその弾力的な運用につきまして是非実践をしていただきたいということで、例えば非再販商品でありますとか、再販期間の限定とか、価格設定の多様化とか、そういったことを推進していただいているわけでございます。
 また、その取組につきましても、公正取引委員会で定期的にフォローをするという形で、不断に制度の運用が消費者利益を不当に害することとなっていないかということで監視をしているといったところでございまして、著作物再販協議会と申します私どもと関係事業者、それから学識経験者等を構成員といたしますそういった場もございまして、そういう場もおかりしながら制度の運用についてフォローをさしていただいているというのが現状でございます。

○鈴木 寛
 今の御議論でもお分かりいただきましたように、これ知財法と競争法というのは極めて微妙な緊張関係といいますか、バランス感覚の下に制度設計をし、そしてまた運用をしていかなきゃいけないということだということが改めて認識をできました。
 私、最近の小泉内閣の、いわゆる何でもかんでもプロパテントだと、騒ぎまくればいいということについては、ややそのことについて少し勉強を、研究をしてきた者からは違和感がございます。私は、もとより文化活動あるいは知的創造活動というのは極めて重要な活動だと思っておりますし、ちょっと余談になりますが、私は今、憲法調査会の幹事もしておりまして、次なる日本国の憲法は正に文化活動、コミュニケーション活動というものが前文にあってもいいぐらいな時代、憲法を作らなければいかぬということは思っております。
 しかし、そのことと、言い方を変えますと、いわゆる従来のプロパテント政策のフレームワークといいますか、もうちょっと言いますと、知的財産法制、あるいはもっと言うと知的創作活動に対するインセンティブ付与の権利設定、権利設計の在り方というのは、まだ学問上も発展途上でございます。
 先ほど、津々浦々に、副大臣からいわゆるレコード屋さんがつぶれてしまうというお話がありましたが、しかし、そこも学問的にはいろいろ疑義がありまして、今ここまでネット販売ができた今や、どういう流通形態でその文化著作物を流通させていくかというのはまたその十年前と五年前と今とでは全く違う流通実態があります。こういうことも考えていかなければいけない。
 あるいは、国際社会の中でも、今まで物の取引についてはガット、そしてサービス貿易についてはGATSというフレームワークがありましたが、デジタライズドコンテンツ、いわゆるデジタルコンテンツについては、また違ったフレームワークを国際貿易、国際取引の中でも作っていかなければいけないという動きがあることも、もちろん大臣、副大臣よく御承知だろうというふうに思います。
 したがいまして、もちろん、文化活動、著作活動、知的創作活動、研究活動、こうしたものに対するインセンティブ、あるいは著作権者、著作隣接権者が思う存分いいものを作れる環境を作り出すということは、私も大変に、これからも頑張っていきたいし、今までも頑張ってきたつもりでありますが、それを単に財産権あるいは所有権のフレームワークに押し込めて、所有権というのは排他的処分性を有するというのが所有権の基本的な考え方でありますから、排他的な処分性を、もちろん期間の定めは、制限はあったにしても、一時的にそれを付与するということ自体がこれ、独占的な権利を人工的に作るということなわけですね。
 そうすると、早晩そこには、当然その反射的効果として正にその権利の独占的利用、それによる、先ほど公取からもお話がありましたが、競争政策上のいわゆる消費者の利益が害されるという常に危険性をはらんでいるのが知的財産権制度であるということは、やはり立法者は踏まえながら知的財産政策を進めていかなければならないというふうに思っております。でありますので、余り無邪気にプロパテント、プロパテントと騒いでいただきたくないなと。
 もちろん、知的財産基本法を小まめに見ていきますと、きちっと十条で「競争促進への配慮」という規定はございますが、しかしなかなか、条文まで見てそうした議論というのはなかなかされないわけでありまして、正に文部科学大臣を始め任に当たる方が、あるいはその担当の部局の方々が著作権万能なんだ、知的財産権万能なんだと言うのはちょっとという、何かことが最近少し気になっているということであります。
 その流れの中で、私が、いろんな利益との比較考量の中で精緻な制度設計をしなきゃいかぬという話で、今日は正に文化政策と競争政策のバランスをどうしますかということを言ってまいりましたが、実は著作権法に関しては、もう私、毎年この著作権法の質疑に立たせていただいておりますけれども、やはり御検討いただきたいものは、文化政策も極めて重要であります。しかし、私は、それと並んで教育政策というのも極めて重要なんだ、これは中島委員、午前中問題提起されたお話でもありますけれども、大事なんだということを改めて強調させていただきたいと思います。
 私は、中学校、高等学校の現場で情報という教科を三年間教えてまいりました。子供たちに、正にインターネットを使って世界じゅうにある様々な著作物を集めてきて、そして自分なりに編集をして、そして自分なりに新しいホームページを作るとか、いわゆるデジタルコンテンツを作るとか、ソフトウエアを作るとかということを情報という教科ではやっているわけであります。情報編集力というふうに題しまして、二十一世紀情報文化社会を担う子供たちには是非情報編集力を身に付けてほしい、そのことが日本から本当に優れた文化制作物を作る、そういう文化人を生む私は土壌にもなると思って、一生懸命この情報編集力教育というものをやってきているわけでありますが、その教育現場で、中島委員からもお話がございましたように、確かに先生が使う、教員が使う著作物の教育的利用については若干の改善が見られましたけれども、いわゆる生徒児童自身が、そうしたいわゆる将来すばらしい文化著作物制作の担い手となる人たちに、その前段階、教育段階としてそういうことを体験していただく。
 それには、事前の承諾なく自由に、ある程度守られた範囲の中で自由にいろんな子供たちの創意工夫でもって著作物を利用して、そして自分なりに新しいものを作ってみようという教育体験というのは極めて有効ではありますが、現行の著作権法というのは、そうした教育活動に大変に制限的な法律の作り方になっております。
 アメリカの場合は、フェアユース規定というのがありますから、そうした現場での不都合、不具合というのはかなりの程度改善をされるわけでありますが、日本の場合は、いわゆる著作権法の制限規定というものが限定列挙型になっておりまして、そしてその都度関係者の大変な調整があって、そしてその調整がまとまったところからいわゆる著作権制限条項が追加をされると、こういうことになっているものですから、交渉がまとまるまでは著作権法の改正はできないわけですね。しかし、その間に子供たちはどんどんどんどん大きくなっていくわけであります。
 こういう日本の著作権法の仕組みといいますか、法律全体の設計図といいますか、アーキテクチャーといいますか骨格というものが、情報文化社会というものを前提にしたときにやはりかなり限界に来ていると言わざるを得ない。これは要するに、十九世紀、二十世紀の著作権法制のままずっと、しかし例えばインターネットの送信権とか、そういうことに対して、毎年対応しなきゃいけないんで本当に現場の方は大変だと思いますけれども、そろそろきちっとそうした新しい情報文化社会あるいはインターネット、デジタルの社会ということを前提にして、今申し上げたようなきちっとした制度設計、権利設定、権利設計というものができる著作権法の構えにしてもいい時期ではないかなというふうに私は思うわけでありますが、そうした、むしろ日本が世界に先駆けてデジタル社会型の著作権法制を作ったらいいと思うんです。そうして、それを世界じゅうに発信して、日本型のデジタル著作権を見習えというぐらいの気概を持って私はこの問題に取り組んでいただきたいと思いますが、この点についての大臣の御見解をいただきたいと思います。

○国務大臣(河村建夫君)
 鈴木先生から正にこれからの著作権の在り方、それから学校教育との関係、これは先生自ら教育現場におられて痛感されたことを御披瀝をいただいたわけで、私も今、正にその時代に来ているというふうな認識を持っておりますし、日本は比較的著作権については先進国だと、こう言ってきたのでありますが、現実にはそういう問題が出ておることを私も承知をいたしておりまして、著作権法の不断の見直しというのが非常に必要になってきていると思います。
 保護を図りながらより円滑に著作物が利用できる、この両者のバランスをいかに取るかということが非常に大事になってきているわけでございまして、これまでの審議会、分科会等で教育関係の権利制限の見直しをずっとやってきておるわけでございますが、この中で、昨年の通常国会で改正されたもの、拡大教科書の著作物の掲載もありましたし、試験問題の公衆送信とか教材の公衆送信とか、こういう教育の例外的なもの、これは学校における教育活動と著作権ということで例示もされておるわけでございますが、さらに法改正以外では、授業で使った教材の教科研究会での活用ができるようにとか、あるいは学校ホームページの著作物の掲載ができるようにとか、こういうことは事例集も作成をしました。さらに、教材のライブラリー化とか学校間の教材複製に補償金を課すというような問題、これはまだ今から協議しなきゃいけない課題も現実問題としてあるわけでございます。
 そういうこと、正に権利者の権利の保護と学校教育における必要性とのバランスに留意しながら一定の権利制限規定を作ろうとしているわけでございますが、これによって、しかし、この現行制限規定、これを活用することによって学習成果の情報発信ができるように、そういうようなことも考えなきゃなりません。包括的な観点からこの議論を更に進めていかなきゃなりませんし、鈴木先生御指摘のように、正にデジタル時代を迎えておりますから、今この時代、もう現実は先に行っている面もありまして、後から追い掛けていくような嫌いもありますが、おっしゃるように、デジタル著作権的なものをもっと真剣に考えて日本からそれを発信していく、こういう気構えでこの問題に取り組んでいく必要があろうと、このように思っております。
 ありがとうございました。

○鈴木 寛
 終わります。

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 ■ 附帯決議

○鈴木 寛
 私は、ただいま可決されました著作権法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。


  著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

 政府及び関係者は、著作権制度に係る国際的動向等に対応し、著作権等の保護と著作物の利用の円滑化を図るため、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一、商業用レコードの還流防止措置の運用に当たっては、権利の侵害とみなす要件の明確化とその周知に努めるとともに、私的使用のための個人輸入や並行輸入等により多様な輸入レコードが国民の間に浸透し、音楽に関する文化・産業の発展に寄与してきた経緯等を踏まえ、制度の趣旨に則し、かつ消費者保護及び適正な流通市場の維持の観点を重視した運用がなされるよう、十分留意すること。
 なお、洋楽の商業用レコードについては、還流防止措置が行使されることなどにより、著しく消費者の利益が侵害される事態が発生した場合には、本法の見直しを含め、再検討すること。
 二、還流防止措置の対象となる商業用レコードを一定期間に限定する政令を定めるに当たっては、権利者、消費者等関係者の意見を十分に聴取し、適正な期間とするとともに、今後の動向も見ながら適宜検討・見直しを図ること。
 三、還流防止措置の対象となる著作物の拡大については、消費者保護や公正取引の観点から慎重に対応すること。
 四、本法施行後、還流防止措置導入後の消費者への利益還元、内外価格差及び商業用レコードの輸入状況等諸情勢を勘案し、還流防止制度全般について、必要に応じ適切な措置を講ずること。
 五、還流防止措置の導入により、再販制度とあいまって、商業用レコードの価格が二重に保護されることになるとの指摘等も踏まえ、販売価格の引下げ等消費者への利益の還元に更に努めるとともに、再販制度については、消費者保護の観点から、一層の弾力的運用に努めること。
 六、海賊版による権利侵害に対しては、侵害状況調査の拡充や侵害発生国政府への対策強化の積極的な要請等実効性のある対策に努めること。
 七、書籍・雑誌に貸与権を付与するに当たっては、その趣旨にかんがみ、公正な使用料と適正な貸与禁止期間の設定によって許諾し円滑な利用秩序の形成を図るとともに、貸与権を管理する新たな機関が、権利者の保護と書籍等の円滑な利用の促進という要請にこたえることができるよう体制を整備すること。
 右決議する。

 以上でございます。



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